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第6章 シルビアーナの父親レギオン・カイドール視点
060★パーティー会場にて・そして新たなる断罪が始まる3
しおりを挟む私は、その言葉を聞いて、これで、やっと意識のはっきりしているシルビアーナと話せると思った。
そう、この思いをシルビアーナに伝えられると………。
その時………ブランデルが、私に叫ぶ。
「レギオン、これは、母上の……偽物…だな」
その憤りはあれど、どこか力の無いブランデルの言葉に、私は冷然とした視線を投げる。
錯乱しおって、伯母上以外の誰が、皇太后専用の魔法紙を使うのだ。
それに、伯母上のサインが、その魔力によって輝いているだろうが。
この馬鹿者がっと叫びたかったが、私は我慢して静かにブランデルに話しかける。
「お前だって、伯母上のサインが本物だとわかるだろう? 信じたくないだけだよな。伯母上に見捨てられたコトを………だから、叫ぶんだ」
「違う、母上が、私を………」
淡々とした口調が、よりブランデルを追い詰めているのを感じて、私は無意識に嗤いながら、更に言葉を続ける。
「否定したくても、もう、無理だとわかっているだろう? お前は、やり過ぎたんだ。伯母上だとて、シルビアーナは可愛い孫だったんだ。それを、魔力をほとんど持たずに生まれた馬鹿息子の為に、お前は生贄にした。あげくに、不憫を強いたとシルビアーナを愛でるならまだしも、その感情を呪具で制御し、行動を制限したのだから。それを、哀しんだり怒ったりしないはずが無いだろう? あの優しい慈愛の伯母上が………」
私の言葉に、ブランデルは頭を両手で押さえるようにして首を振りながら力無く言う。
「ルドルフは、私の息子で、母上の実の孫なのに………」
「確かに、孫かもしれないが、気に入らない嫁の産んだ孫息子だぞ。情が薄くなっても当たり前だ。まして、お前が、強引に自分の息子の婚約者としたシルビアーナを、無碍に扱う姿を見ていたのだ。情が消えるのは当たり前だ」
私の言葉に、それを信じたくないブランデルは食い下がる。
「しかし、シルビアーナは、血が繋がっていないのに………」
更に、そんなはずは無いとブツブツと口中で呟くブランデルに、私は嘲笑(ちょうしょう)を持って言う。
「確かに、シルビアーナは伯母上とは血が繋がっていない。だが、伯母上の最愛の人、先代皇帝アレクサンデル陛下の血族なんだぞ。同腹の妹の血統だけあって、シルビアーナの方が魔力の色合いが、陛下にそっくりだったからなぁ~………。伯母上は、生贄とされたあげくに無碍に扱われるシルビアーナが不憫でしかたがなかったんだ。少女時代は着飾らせて可愛い姿を楽しむはずだったんだ。母親は、可愛い女の子を欲しがるものなんだぞ。己の真実を知らず、身の程知らずな傲慢者に育った孫息子と比べれば、可愛くて当然だろう」
そう私が言えば、ブランデルは信じたくないという思いで唇を戦慄かせる。
「色を無くし、感情の大半を封じられて、醜い姿になったシルビアーナが、それでも可愛いと………」
「きさまがソレを言うのかっ……私に、本気で斬られたいようだな? シルビアーナは本当に美しく可愛い子だったのだぞ。お前の手の者に攫われ、呪具を嵌められるまでは………あの子とディアの人生の幸せを奪ったお前を、私はけして許しはしないっ……」
そう言い放つ私に、廃嫡された馬鹿が絡んで来る。
「俺とシルビアーナを比べるな。俺は………」
どこまでもお花畑でお馬鹿な元皇太子に、言い返そうと視線を向ければ………。
我が親友の息子が、憤りを浮かべて側に来て、その言葉を遮った。
「私のルビアを奪い、あんな寂しい状態にしたお前を、私は絶対に許さない」
そう言い放った彼は、本来私達が決めたシルビアーナの真実の許婚(いいなずけ)ルドレイツ侯爵家嫡子のアルディーン。
既に自分が父親である皇帝に、廃嫡を言い渡されたことで、身分を失ったという事実を認識しない、何処までもお花畑な馬鹿は、身の程知らずにも言い返す。
「はっ…あんな醜い女、欲しいと言えば、さっさと譲ってやったモノを、俺にそれを言えなかったのは、お前がぐずだったからだろう」
自分より格下と思い込んでいるが故の愉悦に満ちた言葉に、アルディーンは嘲笑(ちょうしょう)をもって言い放つ。
「殺されたいか? ルドルフ? 君は1度も私に勝ったコトが無いだろう。まして、既に廃嫡を言い渡された身で、身分を失っているというのに………。この私にそんな口がきけるとでも思っているのか? まぁ…あんな品の無い娼婦風情に入れ込むから、廃嫡されるんだよ」
「きさま、殺してやる」
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