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第6章 シルビアーナの父親レギオン・カイドール視点
056★パーティー会場にて・そして茶番がはじまる3
しおりを挟むあの手紙の内容には、流石に驚いてしまった。
が、いくら、馬鹿でも、自分でシルビアーナから呪具(その効果を教えられているだろうから)を取り外したりはしないだろうなぁ………。
だから、魔術師は必要だと思い、この場に連れてきたが………。
はたして、あの馬鹿はどうするのか?
そんな私の予想の斜め上を、あの馬鹿は行くらしい。
卒業パーティーに、あの娼婦を腕に絡ませて来るとは………。
流石に見下げ果てすぎて、開いた口がふさがらんわ。
ハイオシスの仮にも皇太子が、なんと見っとも無いまねをするものだ。
あれでは、今回のことが無くても、廃嫡されるのは確実だな。
側近達は、こんな無様な姿を他国の王族貴族や大使に、見られることを止められなかったのか?
馬鹿の側近には、最低限の常識も無かったようだな。
私のシルビアーナが、あのような娼婦を苛めただと。
ふざけるな、たかが男爵風情の私生児を、シルビアーナが苛め殺したとて、罪になるなど有り得ない。
シルビアーナは、カイドール侯爵家の娘であり、ハイオシス皇家の血を引き、ソレント王家の王女を母に持つのだぞ。
あのような、貴族とも呼べないような男爵の娘なぞ無礼打ちにしても、咎める必要なぞ無いものを………。
あの馬鹿も、その側近も、そんな身分差がわからない馬鹿しかいないのか?
そう思った瞬間、怒りが沸騰して、宮廷魔術達が張った魔法障壁を、あっさりと砕いていた。
ったく、魔法障壁は壊したが、シルビアーナの所に向かうには、近衛が多すぎて邪魔だな。
招待客がパニックを起こすと面倒だから、鞘で殴るしかない。
なんて、面倒なのだ。
あの馬鹿は、どうして皇族の出入り口を兼ねた階段付近で、茶番劇を始めるんだ。
こっちは、会場中央付近の廊下側の壁付近に居たっていうのに………。
何の証拠も出さずに、あの馬鹿は近衛団長の息子に、シルビアーナを捕まえさせようとする。
皇太后陛下セレナーデ様の付けた従者は、邪魔だと蹴られて飛んでしまった。
くそっ………あんなに、弱いとは思わなかったんだろうなぁ~………。
だが、許せんのは、近衛団長の息子だ。
私のシルビアーナの両手を握り、その背中に足をかけるなぞ、万死に値する。
だが、あの馬鹿は、本当にお花畑の馬鹿たったようだな。
幸いなことに、あの呪具のことを、聞かされていなかったようだ。
私とシルビアーナにとっては、幸いだな。
くっくくくく………あの馬鹿が、自らシルビアーナの呪具を外してくれるとはな。
良かった、それが一番シルビアーナに負担が無いからな。
後は、あの子を我が手に取り戻すだけ………。
シルビアーナに着けられた呪具さえなければ、もう、なんの遠慮も用もないわっ。
はぁ~……でも、このうざっと居る招待客と、近衛が邪魔だっ………。
私のシルビアーナの元に行くのを邪魔する障害物どもめ………。
そう思いながら、私は目の前を遮る者達を薙ぎ払いながら、愛しい娘のもとへと一心に向かう。
遅々として進まない中、シルビアーナは近衛団長の息子の息子に突き飛ばされていた。
おのれっ…絶対に、許すものかっ………私の娘に………。
近衛団長の息子の所業に、怒り心頭になりつつも招待客や近衛達を薙ぎ倒しながら、急いでシルビアーナを確保しようとあがく私の眼前で、床に幾何学模様の魔法陣が展開されていた。
その魔法陣を見た瞬間、私は焦った。
それが、良くないモノだと瞬時に理解できたから………。
娼婦に溺れた青二才どもの所業が、帝国を揺るがすモノであると知った貴族達は、その瞬間、顔色を悪くさせたが………。
勿論、私の邪魔をことごとくしていた忌々しい侍従長も、顔色を悪くして驚きの声を上げる。
「…えっ? なにを………」
「今頃驚いたとて遅いわっ……貴様が邪魔しなければっ………」
そう、我が愛しい娘は、我が手が届く前に、魔法陣の光りに包まれて、その場から消失していたのだ。
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