上 下
54 / 238
第6章 シルビアーナの父親レギオン・カイドール視点

053★皇太后セレナーデ・ハイオシスからの手紙 1通目

しおりを挟む


 『カイドール侯爵レギオン殿へ

 シルビアーナの皇妃教育は、皇太后たるこの私セレナーデが、
 愛情と責任を持って養育しますコトを誓います。

 また、シルビアーナの身の安全も、必ず確保します。

 本来の領地を離れ、魔の森と接する辺境に移動させられ、
 本来は、その地を守る者達を奪われ、

 一から警備体制を構築する苦労をさせる、
 我が息子の不心得と不徳を、母として、

 そなたの義伯母として、書面にて謝罪します。

 夫たる皇帝陛下・アレクサンデル様を失った私には、
 もはや息子のブランデルを抑える力はありませんでした。

 ですから、貴方の信頼する乳母と
 シルビアーナの乳兄弟を帰します。
 シルビアーナ自身の人質とされないように………。

 哀れとは思いますが、私以外の人間が
 シルビアーナに愛情を与えるコトを禁じておきます。

 シルビアーナに、この魑魅魍魎が跋扈する宮廷内で、
 心許せる存在を、私以外に作らせません。

 また、私は心を魔物にし、シルビアーナに、
 優しく甘い言葉と行動をとる者達を、排除します。

 シルビアーナが、甘言(あまごと)で誘われて、
 攫われたりしないように………。

 だから、貴方達の手紙も贈り物も、
 私は、受け取らないことを、ここに宣言します。

 それは、貴方達からの贈り物と偽って送られるだろう、
 毒薬や呪い、呪具などの危険な術や物を、
 シルビアーナが受け取ってしまわないようにする為です。

 レギオン、私は、娘をブランデルに奪われた貴方に
 酷いことを言っていると判っていますが、あえてそうします。

 全ては、貴方達(カイドール侯爵家)が
 シルビアーナを切り捨てたと、ブランデルに思わせる為です。

 それと、次に子が出来ても決して表に出さないようにしなさい。
 特に男の子なら、暗殺者が送られるでしょう。
 また、女の子なら、奪って政略結婚のコマとするでしょう。

 これから先、ブランデルには、子は生まれません。
 私が、ブランデルに高熱を一週間ほど発する薬を、
 飲ませました。

 高熱を発する流行病(はやりやまい)が、
 帝都で発生していたのは僥倖でした。

 貴方も知っている宮廷医師のヒポクラティスの診たてでも、
 もう子供は望めないと宣言されました。

 勿論、本人にも、皇妃や側室、愛妾達には伝えていません。
 側室である、グレイスの生んだ皇子が、最後の子です。

 皇室としては、皇位継承権の有る皇子は、
 皇太子とスペアの皇子がいれば十分です。

 それでも、駄目だったら、レギオン、貴方か貴方の子供に、
 皇位継承権を与えれば良いだけのことです。

 貴方やディアーナ、シルビアーナに対するブランデルの罪に、
 私なりの罰を与えました。

 だからと言って、ブランデルの暴挙の罪を
 すべて謝罪したことにはなりませんが………。

 皇太子が、皇太子としての自覚と能力を持ち、
 シルビアーナを大切に皇太子妃となすならば、
 あの呪具の秘密を、私が本人に伝えます。

 が、皇太子があのまま馬鹿だったのなら、
 呪具の秘密を伝えないように画策します。

 そうすれば、馬鹿な皇太子は、シルビアーナ以外の娘を選び、
 呪具を自らはずすという行動をとり、婚約破棄をするでしょう。

 馬鹿は馬鹿なりに考えて、皇太子は父であるブランデルが、
 側にいない時に、そういうことをするでしょうからね。

 だから、その時に、シルビアーナを取り戻せるよう、
 魔の森の魔物達と戦い、魔力と力を高めなさい。
 力を付けなさい、レギオン。
 貴方の信頼できる部下達と共に。 

 そして、我がハイオシス皇家の血筋の者としての、
 いいえ、カイドール侯爵家としてのプライドを捨てて、
 ソレント王国とアルビナ帝国に助力を頼みなさい。

 シルビアーナに着けられた呪具をはずすという、
 繊細な作業は、レギオン貴方には無理だから………。

 願わくば、皇太子がシルビアーナを愛して、
 国を割らないようにと………ただただ願うだけです。

 慈悲深き地母神ガイアーナに、これから毎日私は祈ります。
 未来は決まっていないのだから、時を有効に使ってください。

 民を、国を、皇家を守る剣、
 カイドール侯爵家の主たる
 レギオンを信じています。

 セレナーデ・ハイオシス』



 (※カイドール家は本来、侯爵家です。レギオン自身皇家の血筋を引いております。
  が、帝国の北部へと領地替えを強行した時に、ブランデルが辺境伯へと貶めました。
  ただ、辺境伯と侯爵は、地位や権力という意味である意味とんとんなので、多くの
  高位貴族達は不服があっても騒ぐことがでませんでした。
  そんな中、ブランデル皇帝がカイドール侯爵を、カイドール辺境伯と呼ぶ為に、
  辺境伯が定着しただけです。ですから、書き間違いとかではありません。by.作者)







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

侯爵令嬢の置き土産

ひろたひかる
恋愛
侯爵令嬢マリエは婚約者であるドナルドから婚約を解消すると告げられた。マリエは動揺しつつも了承し、「私は忘れません」と言い置いて去っていった。***婚約破棄ネタですが、悪役令嬢とか転生、乙女ゲーとかの要素は皆無です。***今のところ本編を一話、別視点で一話の二話の投稿を予定しています。さくっと終わります。 「小説家になろう」でも同一の内容で投稿しております。

私達、政略結婚ですから。

恋愛
オルヒデーエは、来月ザイデルバスト王子との結婚を控えていた。しかし2年前に王宮に来て以来、王子とはろくに会わず話もしない。一方で1年前現れたレディ・トゥルペは、王子に指輪を贈られ、二人きりで会ってもいる。王子に自分達の関係性を問いただすも「政略結婚だが」と知らん顔、レディ・トゥルペも、オルヒデーエに向かって「政略結婚ですから」としたり顔。半年前からは、レディ・トゥルペに数々の嫌がらせをしたという噂まで流れていた。 それが罪状として読み上げられる中、オルヒデーエは王子との数少ない思い出を振り返り、その処断を待つ。

【完結】本当の悪役令嬢とは

仲村 嘉高
恋愛
転生者である『ヒロイン』は知らなかった。 甘やかされて育った第二王子は気付かなかった。 『ヒロイン』である男爵令嬢のとりまきで、第二王子の側近でもある騎士団長子息も、魔法師協会会長の孫も、大商会の跡取りも、伯爵令息も 公爵家の本気というものを。 ※HOT最高1位!ありがとうございます!

婚約破棄?王子様の婚約者は私ではなく檻の中にいますよ?

荷居人(にいと)
恋愛
「貴様とは婚約破棄だ!」 そうかっこつけ王子に言われたのは私でした。しかし、そう言われるのは想定済み……というより、前世の記憶で知ってましたのですでに婚約者は代えてあります。 「殿下、お言葉ですが、貴方の婚約者は私の妹であって私ではありませんよ?」 「妹……?何を言うかと思えば貴様にいるのは兄ひとりだろう!」 「いいえ?実は父が養女にした妹がいるのです。今は檻の中ですから殿下が知らないのも無理はありません」 「は?」 さあ、初めての感動のご対面の日です。婚約破棄するなら勝手にどうぞ?妹は今日のために頑張ってきましたからね、気持ちが変わるかもしれませんし。 荷居人の婚約破棄シリーズ第八弾!今回もギャグ寄りです。個性な作品を目指して今回も完結向けて頑張ります! 第七弾まで完結済み(番外編は生涯連載中)!荷居人タグで検索!どれも繋がりのない短編集となります。 表紙に特に意味はありません。お疲れの方、猫で癒されてねというだけです。

処理中です...