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第5章 シルビアーナはコウちゃんとダンジョン探索する
029★対のお部屋はそっくりでした
しおりを挟む大きくなったコウちゃんをもふもふした後、私は壷のお水をもう1度飲みながら考える。
コウちゃんの言葉から考えて、この壷は持って行っても良いモノらしいからゲットしましょう。
いやぁー良かったわぁ~…先に腕輪型のインベントリを手に入れていて………。
じゃ無かったら、この壷を持っていこうなんてカケラも考えられなかったわね。
でも、コレ(水入りの壷)があれば、喉が渇いた時に気軽に出して飲めるわね。
そんなコトを考えながら、喉の渇きが癒えた私は壷に左手首に嵌まる腕輪を翳した。
その次の瞬間、そこにあった水を満たしていた壷はあっさりとインベントリの中へと消える。
が、この時も、腕輪に嵌められている魔晶石に表示されたモノは確認していなかった。
そう、表示されるモノを一切確認していないのだ。
はっきり言って幾つもある部屋の中のお宝を回収する作業に追われて、何をインベントリへと入れたかなど、いちいち確認するだけの時間が惜しかった。
いや、時間は停止状態の場所と言われても、長くそこに居たいとは思わなかったので、考えないようにしていただけなのだが………。
後で『自分が、コレを持っていて良いのか?』と後悔するようなモノが結構入っていたが、その時はカケラも思い至らなかったのは確かな事実だった。
大きくなったコウちゃんは、私の腕の中からポンっと飛び出し、空中をふよふよと歩き始める。
大気中に存在する魔素を、足場に歩いていたようだった。
翼はというと、3対とも背中に折りたたまれていた。
「コウちゃん、翼で羽ばたかなくても空中にいられるのね」
それを見た私は、素朴な感想を口にしていた。
『うん…ここの魔素と真素は、ちょうど良い配分で、濃い目なんだ』
そっかぁー…魔素のほかに、真素も濃いのかぁ………なるほど。
じゃなくて、次行こう、次っ………。
「さて、それじゃ、コウちゃん、この部屋で回収するモノも、イベントもなさそうだから次の部屋? 行こうか?」
私のセリフに、コウちゃんはコクっと頷いく。
『そうだね。それじゃ対になっている部屋に移動しようか………』
そう言って、入って来た時に通った等身大の大鏡の真正面の壁に設置されている、まるっきり同じ装丁の等身大の大鏡の前へと移動する。
私もその前へと移動し、立つ。
そこに映る自分は、更に美少女に変身していた。
そう、更に身体が引き絞られて、凹凸が強調された肢体を持つ姿へと変化した私、シルビアーナがそこに立っていた。
その姿をマジマジと見て、無意識の溜め息を零れ落とす。
これが、本来の私の姿ってことよねぇ………。
いや、努力して手に入れたモノじゃないけどね。
後で自分のスペックを確認したら、少し鍛錬しないとね。
薄く柔い手じゃ冒険者なんてできないもの。
勿論、筋肉も必要よ。
ひとしきり、本来のシルビアーナとしての自分の姿を確認した私は、ふよふよと浮かぶコウちゃんに手を伸ばし、自分の肩へと誘導する。
私の手の意図を認識したコウちゃんは、そのまま肩へと乗り込む。
さっきも思ったけど、大きさとか変わっても、ほとんど重さとか感じないわねぇ………。
そう思いつつ、大鏡の鏡面に両手を当てて魔力を通すと、さっき同様に大鏡の中を通って反対側の対の部屋へと移動していた。
見た目だけで言うなら、そっくりそのままなので、大鏡の移動に失敗したのではないかという錯覚を覚えるほど、そのままだった。
「ねぇ…コウちゃん、私ってば失敗してないわよね」
思わず確認する私に、コウちゃんは頷いて答えてくれる。
『大丈夫だよぉ~……ここは対の部屋だから、そっくりなだけだから………』
それを聞いて、私は安心する。
コウちゃんというナビ(または、サポーター)がいるから、安心してこのダンジョンの裏ルートを突き進めるのよねぇ………本当に、助かるわぁ~………。
高スペックな上に、もふもふで可愛くて、私の大事な子。
あぁ…でも本当に対なのねぇ…部屋の壁際に壷が鎮座しているわ。
とは言え、さっきあっちで飲んだから、飲んで確認する気ないし………。
「コウちゃん、この壷の水も飲んでも大丈夫なモノ?」
私の確認に、コウちゃんはコクコクする。
『大丈夫だよぉ~………でもって、飲みたくなくても、ちょっと飲んでおくと、後でお得お得だよぉぉ~………』
楽しそうにそう言うコウちゃんは、何でお得なのかは教えてくれる気はなさそうである。
まぁ…害が無いお水なら良いか………。
そう思った私は、その壷のお水の水面に指先を付けて、口元へと引っ張りツルッと飲み込んだ。
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