上 下
218 / 238
第14章 冒険者の始まりの街フォレンへ

217★お酒は飲んでも、呑まれるな……教訓です

しおりを挟む

 「マスター…起きてください…」

 「ままぁー……起きてぇ…」

 「起きて欲しいですぅ~…」

 「…おはようですぅ……」

 心地良い眠りから揺り起すような呼び掛けに、私はぼぉ~とした頭でほわほわと考える。

 あれぇ~…なんだろう、聞いたこと無い声が聞こえる。
 最初のがガッちゃんでぇ……次のがコウちゃんでしょぉ………。
 んじゃ次の声は?その後の声も知らない声………だよね。

 シアのフリードとも違う……どこか子供っぽい。
 そう、コウちゃんやガッちゃんと同じくらいの………。
 なんだろう?……何か重要なコトを………。

 そんなコトを考えながら、私は妙にショボショボする目を無理やり開ける。

 あぁ~………知らない天井だ………。
 って、どこの定番………じゃないっここ何処?

 そう思ってから、昨夜のドンチャン騒ぎを思い出す。
 だぁ~…もしかして、お酒に呑まれたわけ(脂汗)。
 つーことは、ここはシアが借りてもらっている宿屋の部屋。

 そこで私はハッとする。
 
 【ホワイトファング】のお兄さん達と泊る予定だった宿屋へと帰らなかったコトを………。
 あっちゃ~……もしかしなくても、ああいう人達だから………。
 きっと心配しているわね。
 私が強いって理解していても、心配してたもんね。

 まぁ…このアバターって保護欲そそるようだから………じゃない。
 起きなきゃ……そして………へっ? えっとぉ~………。

 取り敢えずの混乱をやり過ごした私は、自分を見下ろす多数の瞳にビックリする。

 はぁぁぁ~………私ってば何をしたのぉ~………。

 まぁ、仮に鳳翼虎(ほうよくこ)とでも呼べば良いのかな?
 のコウちゃんでしょ。
 それに、宝石獣(カーバンクル)のガッちゃん。

 この2人は、甦生が必要無かったから………。
 現実逃避しても始まらないわね………。

 私は、ちょっと目をぱちぱちしてから、自分の瞳に映ったモノを一生懸命に認識する努力をした。

 見たまんまの一角天馬(ユニコーンペガサス)のちびたん。
 改めて見ても、三対あるわね、翼。
 たしか、右の腕輪が角の根元に嵌まってたのよね。
 反対側の最初の部屋の子よねぇ………。

 回らない頭で、そう考えてから、私を覗き込む顔を改めて確認すると………。

 まるで、卵から孵りたてのうな飛竜(ひりゅう)の子もいる。
 子飛竜(こひりゅう)も翼が三対あるわね。
 皮膜じゃなくて、ちゃんとした翼が………。

 他には、えぇ~とぉ~真っ赤な鳥?は………。
 ああ朱雀(すざく)って言えばいいのかな?
 とは言っても、まだまだ雛のようなぽってりさんね。

 その他は……目つきの悪いシベハスゥ?の子犬……じゃない。
 銀がかった灰色の子狼………たぶん氷神狼(フェンリル)の子供。

 あとは、鷲の上半身……とは言っても、四肢は獅子の足なのねぇ……。
 つーことは、鷲獅子(グリフォン)のやっぱり子供………って………。

 ぼぉ~とした頭で、私はコトの重大さにやっと至る。

 私ってば、なにをしたの?
 甦生待ちの子達、全部甦生したってコト?
 もしかしなくても、酔ったはずみで………。

 そして、思い出すのは、シアが差し出した魔晶石とおねだり。
 酔っぱらった私は、魔晶石を解いて魔力を………。

 と、思ったところで、一角天馬(ユニコーンペガサス)の子の額の角がほわぁ~と温かい色合いに光り輝いた。
 途端に、心身ともにすっきりして、はっきりとコウちゃんガッちゃんに、その兄弟を認識した。

 瞬間、私は思わず叫んでしまった。

 「にゃぁ~……うっそぉ~………
  ふぇぇぇ~ん…まじぃ~……」

 一気に正気になった私は、声を抑えるコトを忘れて、ガバッと起き上がり、自分を心配そうに見下ろしていた、元神子から誕生した神獣の子達を見回して、思わず溜め息を零れ落とした。

 どうしよう…私ってば、なにしちゃったの………。
 じゃなくて、名前………付けたっけ?
 やだ、本気で…どうしよう?


 





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

侯爵令嬢の置き土産

ひろたひかる
恋愛
侯爵令嬢マリエは婚約者であるドナルドから婚約を解消すると告げられた。マリエは動揺しつつも了承し、「私は忘れません」と言い置いて去っていった。***婚約破棄ネタですが、悪役令嬢とか転生、乙女ゲーとかの要素は皆無です。***今のところ本編を一話、別視点で一話の二話の投稿を予定しています。さくっと終わります。 「小説家になろう」でも同一の内容で投稿しております。

私達、政略結婚ですから。

恋愛
オルヒデーエは、来月ザイデルバスト王子との結婚を控えていた。しかし2年前に王宮に来て以来、王子とはろくに会わず話もしない。一方で1年前現れたレディ・トゥルペは、王子に指輪を贈られ、二人きりで会ってもいる。王子に自分達の関係性を問いただすも「政略結婚だが」と知らん顔、レディ・トゥルペも、オルヒデーエに向かって「政略結婚ですから」としたり顔。半年前からは、レディ・トゥルペに数々の嫌がらせをしたという噂まで流れていた。 それが罪状として読み上げられる中、オルヒデーエは王子との数少ない思い出を振り返り、その処断を待つ。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

処理中です...