217 / 238
第14章 冒険者の始まりの街フォレンへ
216★私が仕切ります
しおりを挟む私のこころの声が届いたのか、シアは楽しそうに錬金術?を使って望みの物を出してくれるらしい。
なんだか気分が軽くなって、私の口も軽くなる。
「あっじゃあ…
両方とも粉でお願い
くすくす………まんまでもイイけど
マヨネーズに混ぜても
良いのよねぇ
カラシマヨにワサビマヨ
肉にもあうのよねぇ………」
煮込んだ肉やボイルしただけの鶏の胸肉に温野菜を添えて、それにカラシマヨネーズやワサビマヨネーズを付けて食べたコトを思い出し、喉が無意識にゴクッと鳴る。
ああ、懐かしいわねぇ~………
おひとり様で晩酌しながら食べたわぁ~………
なんて私が妄想している間に、シアの魔力が動くのを感じた。
その直後に、やはり革袋入りの何か……まず間違いなく、カラシの粉とワサビの粉……が入ったモノが出現する。
私は、出現した革袋に手を伸ばし、いそいそとその巾着状になっている口紐を解いて中身を確認する。
勿論、今回は中身を見比べる為に両方とも開いた。
ああ、この独特な香り、懐かしいわぁ~……
まだ、温水で練ってないからねぇ
本来の香りからすれば、匂い自体は薄いけどね
なんて思いながら、私はインベントリの中から適当な大きさの器を2個出す。
「うん、粉ワサビと粉カラシだね
それじゃさっそく練るね」
私は2個の器にカラシの粉とワサビの粉をそれぞれに取り分けているのを見て、シアはとても楽しそうに言う。
「うん、よろしくぅ~………
私は上手に出来ないから………
くすくす………粉ワサビって
本物じゃないけど
便利なんだよねぇ~………
手軽に使えてさぁ~……
本物のわさびって
いちいち鮫皮おろし器で
すりおろさないと
使えないから
面倒なのよねぇ………
まぁその分美味しいけどね」
私はシアの言葉に同感と頷きながら、カラシ粉とワサビ粉の器に、それぞれ適量の温水を出して注ぐ。
確か、どちらも適量は粉の2倍
温度は40度くらいだったはず
私は温水を入れた後、ますカラシ粉から加えた温水と混ぜてくるくると軽く練る。
終わったら、次はワサビ粉の方も同様に温水と混ぜてよぉーく練る。
後は少し寝かせればOKね
ラップは無いから魔力で密封
私は風味が飛んでしまわないように、魔法でラップと同様の効果があるようにする。
「はい、できあがりぃ~………
とはいっても、ちょっと待つ
そうね10分くらいが適当ね
その間に、出来たてのおでんを
取り分けましょうか」
言いながら、私はインベントリの中から、おでんに相応しい器を取り出す。
いやだって、シアが借り上げてもらった
宿屋の部屋の中に何があるか探すの面倒だし
私、適当な食器を大量に持っているしね
そんなコトを考えつつ、全員分の器を出す。
勿論、カトラリーにお箸まで出した。
ちらっと土鍋おでんを出したシアを見るが、にこにこしながら待っている。
それで、前世では取り分けてもらうのを待っていたクチだと理解し、私はそれぞれの器に適当に盛って行く。
いやだって、ジオンもフリードもねぇ……
ただただ、興味津々なだけで動かないし
いや、この場合は、どうしていいかわからないから待っているだけかもしれないというコトに思い当たり、私は黙って取り分けたおでんの皿に練りカラシを添えて行く。
あらあらシアったら、可愛いわぁ~……
まるで、待てをしている子犬ね
食べて良いよって許可が出るのを
今か今かと待っているみたい
そんな感想を持ちつつ、私は左右に控えめに大人しく座っているコウちゃんとガッちゃんの分を目の前へと移動させる。
と、その匂いに釣られたのか、コウちゃんもガッちゃんも身を乗り出していた。
ちなみに、コウちゃんやガッちゃんに対しての食事制限はない。
ペットの犬猫の用に、あれはダメこれもダメというモノは一切ない。
だって、コウちゃんもガッちゃんも神獣なんだから…大丈夫。
勿論、フリードやジオンの前にも、練りカラシを添えたおでん皿を移動させた。
ちなみに、ジオンには大盛りにしておいた、男の人だからね。
全員の前に、練りカラシ添えのおでんを置いた私は言う。
だって、シアは仕切る気なんいカケラも無いし、フリードはシアに従うだけだし、ジオンも似たり寄ったりだからしょうがない。
「それじゃ、食べようか
せっかくだから
温かいうちにね」
私の言葉を待っていたシアは、にこにこしながら両手を合わせて言う。
「それじゃ、いただきまぁーす」
うん、私達前世日本人の習慣だね。
そう思っていると、ジオンとフリードもシアの行動に習って食前の感謝の気持ちを表した言葉を口にする。
「「いただきまぁーす」」
私は、その光景に前世での懐かしさにちょっと瞳をうるうるさせながらも、同じように感謝の言葉を口にしていた。
「それじゃ、私もいただきます」
私の言葉に反応して、コウちゃんとガッちゃんも唱和する。
「「いただきます」」
食べ始めれば、その懐かしい味に食欲を刺激され、パクパクと行く。
取り敢えず、最初に盛ったおでんを食べた私は、いったんしまった屋台の夕飯用の料理を再び並べる。
が、調味料が増えたので、練りカラシや練りワサビ、それにマヨネーズなどを加えて、あれやこれやと付けて食べる。
と、シアも同じように、自分の錬金術?で出した調味料を付けて食べだす。
当然、ジオンやフリードも真似る。
気付けば、コウちゃんやガッちゃんも食べていた。
そんな和気あいあいの雰囲気から、つい前世の飲み会を思い出してしまう。
「あぁ~あ…ここにビールが欲しい
きゅっと一杯、冷えたの飲みたい」
そう呟いた私に、シアが………。
「い~よぉ~……どこの好き?」
聞かれた私は、何の気なしに答えていた。
「えっとぉ~……
キリ○の一番搾りぃ~……」
もう、この時、完全に魔力酔いになっていたので判断力は綺麗さっぱりと失っていたりする。
が、そんなコトに気付いたのは、翌日目覚めた時になってからである。
この後のドンチャン騒ぎに突入し、綺麗さっぱりと記憶が………吹っ飛ばずに、後悔のどん底に落ちるコトを、この時はだれも知らなかった
0
お気に入りに追加
3,281
あなたにおすすめの小説
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~
イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」
どごおおおぉっ!!
5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略)
ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。
…だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。
それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。
泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ…
旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは?
更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!?
ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか?
困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語!
※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください…
※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください…
※小説家になろう様でも掲載しております
※イラストは湶リク様に描いていただきました
【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。
曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」
「分かったわ」
「えっ……」
男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。
毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。
裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。
何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……?
★小説家になろう様で先行更新中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる