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第14章 冒険者の始まりの街フォレンへ

216★私が仕切ります

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 私のこころの声が届いたのか、シアは楽しそうに錬金術?を使って望みの物を出してくれるらしい。
 なんだか気分が軽くなって、私の口も軽くなる。

 「あっじゃあ…
  両方とも粉でお願い

  くすくす………まんまでもイイけど

  マヨネーズに混ぜても
  良いのよねぇ

  カラシマヨにワサビマヨ
  肉にもあうのよねぇ………」

 煮込んだ肉やボイルしただけの鶏の胸肉に温野菜を添えて、それにカラシマヨネーズやワサビマヨネーズを付けて食べたコトを思い出し、喉が無意識にゴクッと鳴る。

 ああ、懐かしいわねぇ~………
 おひとり様で晩酌しながら食べたわぁ~………

 なんて私が妄想している間に、シアの魔力が動くのを感じた。
 その直後に、やはり革袋入りの何か……まず間違いなく、カラシの粉とワサビの粉……が入ったモノが出現する。

 私は、出現した革袋に手を伸ばし、いそいそとその巾着状になっている口紐を解いて中身を確認する。
 勿論、今回は中身を見比べる為に両方とも開いた。

 ああ、この独特な香り、懐かしいわぁ~……
 まだ、温水で練ってないからねぇ
 本来の香りからすれば、匂い自体は薄いけどね

 なんて思いながら、私はインベントリの中から適当な大きさの器を2個出す。

 「うん、粉ワサビと粉カラシだね
  それじゃさっそく練るね」
 
 私は2個の器にカラシの粉とワサビの粉をそれぞれに取り分けているのを見て、シアはとても楽しそうに言う。

 「うん、よろしくぅ~………
  私は上手に出来ないから………

  くすくす………粉ワサビって
  本物じゃないけど

  便利なんだよねぇ~………
  手軽に使えてさぁ~……

  本物のわさびって
  いちいち鮫皮おろし器で

  すりおろさないと
  使えないから
  面倒なのよねぇ………

  まぁその分美味しいけどね」

 私はシアの言葉に同感と頷きながら、カラシ粉とワサビ粉の器に、それぞれ適量の温水を出して注ぐ。

 確か、どちらも適量は粉の2倍
 温度は40度くらいだったはず

 私は温水を入れた後、ますカラシ粉から加えた温水と混ぜてくるくると軽く練る。
 終わったら、次はワサビ粉の方も同様に温水と混ぜてよぉーく練る。

 後は少し寝かせればOKね
 ラップは無いから魔力で密封

 私は風味が飛んでしまわないように、魔法でラップと同様の効果があるようにする。

 「はい、できあがりぃ~………
  とはいっても、ちょっと待つ
  そうね10分くらいが適当ね

  その間に、出来たてのおでんを
  取り分けましょうか」

 言いながら、私はインベントリの中から、おでんに相応しい器を取り出す。

 いやだって、シアが借り上げてもらった
 宿屋の部屋の中に何があるか探すの面倒だし
 私、適当な食器を大量に持っているしね

 そんなコトを考えつつ、全員分の器を出す。
 勿論、カトラリーにお箸まで出した。

 ちらっと土鍋おでんを出したシアを見るが、にこにこしながら待っている。
 それで、前世では取り分けてもらうのを待っていたクチだと理解し、私はそれぞれの器に適当に盛って行く。

 いやだって、ジオンもフリードもねぇ……
 ただただ、興味津々なだけで動かないし

 いや、この場合は、どうしていいかわからないから待っているだけかもしれないというコトに思い当たり、私は黙って取り分けたおでんの皿に練りカラシを添えて行く。

 あらあらシアったら、可愛いわぁ~……
 まるで、待てをしている子犬ね
 食べて良いよって許可が出るのを
 今か今かと待っているみたい

 そんな感想を持ちつつ、私は左右に控えめに大人しく座っているコウちゃんとガッちゃんの分を目の前へと移動させる。
 と、その匂いに釣られたのか、コウちゃんもガッちゃんも身を乗り出していた。

 ちなみに、コウちゃんやガッちゃんに対しての食事制限はない。
 ペットの犬猫の用に、あれはダメこれもダメというモノは一切ない。
 だって、コウちゃんもガッちゃんも神獣なんだから…大丈夫。

 勿論、フリードやジオンの前にも、練りカラシを添えたおでん皿を移動させた。
 ちなみに、ジオンには大盛りにしておいた、男の人だからね。

 全員の前に、練りカラシ添えのおでんを置いた私は言う。
 だって、シアは仕切る気なんいカケラも無いし、フリードはシアに従うだけだし、ジオンも似たり寄ったりだからしょうがない。

 「それじゃ、食べようか
  せっかくだから
  温かいうちにね」

 私の言葉を待っていたシアは、にこにこしながら両手を合わせて言う。

 「それじゃ、いただきまぁーす」

 うん、私達前世日本人の習慣だね。
 そう思っていると、ジオンとフリードもシアの行動に習って食前の感謝の気持ちを表した言葉を口にする。

 「「いただきまぁーす」」

 私は、その光景に前世での懐かしさにちょっと瞳をうるうるさせながらも、同じように感謝の言葉を口にしていた。

 「それじゃ、私もいただきます」

 私の言葉に反応して、コウちゃんとガッちゃんも唱和する。

 「「いただきます」」

 食べ始めれば、その懐かしい味に食欲を刺激され、パクパクと行く。
 取り敢えず、最初に盛ったおでんを食べた私は、いったんしまった屋台の夕飯用の料理を再び並べる。

 が、調味料が増えたので、練りカラシや練りワサビ、それにマヨネーズなどを加えて、あれやこれやと付けて食べる。
 と、シアも同じように、自分の錬金術?で出した調味料を付けて食べだす。

 当然、ジオンやフリードも真似る。
 気付けば、コウちゃんやガッちゃんも食べていた。
 そんな和気あいあいの雰囲気から、つい前世の飲み会を思い出してしまう。

 「あぁ~あ…ここにビールが欲しい
  きゅっと一杯、冷えたの飲みたい」

 そう呟いた私に、シアが………。


 「い~よぉ~……どこの好き?」

 聞かれた私は、何の気なしに答えていた。

 「えっとぉ~……
  キリ○の一番搾りぃ~……」

 もう、この時、完全に魔力酔いになっていたので判断力は綺麗さっぱりと失っていたりする。
 が、そんなコトに気付いたのは、翌日目覚めた時になってからである。
 この後のドンチャン騒ぎに突入し、綺麗さっぱりと記憶が………吹っ飛ばずに、後悔のどん底に落ちるコトを、この時はだれも知らなかった










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