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第14章 冒険者の始まりの街フォレンへ
213★万能調味料と錬金術万歳
しおりを挟む私は、シアの魔力が動き、それと同時くらい……ほぼタイムラグ無しに、夕食が並ぶテーブルのほぼ中央に、壺が2個に革袋が2袋、全部で4個のモノが忽然と姿を現した。
それを見た瞬間に、この現象を起こしたのすぐさまシアだと理解《わか》った。
が、だがしかし、この現象を起こした当のシア本人は、何が起こったかを理解《りかい》しておらず、出現した4個の物体を見て小首を傾げて呟く。
「えっとぉ…壺なんて無かったよね
もしかして、これって………
ライムが出してくれたの?」
(シアぁ~……どうしてこの流れで
私が出したってコトになるの?
なんで、そんな遥か斜め上の
発言がでるの?
自分がやったって思わないの?
魔力抜けたの判るでしょうに………)
と、こころの中で盛大に喚く。
勿論、シアの魔力が動いたコトを感知したジオンとフリードも、シアの発言に、身体を大きく揺らしていた。
そして、今のシアの魔力変動を感知して、寸前まで眠っていたコウちゃんが、私にだけ聞こえる小さな声で言う。
「ママぁ~……たぶん今のって
あの《牢縛の神殿》で
シアさんがもらったご褒美だよ」
と言った、コウちゃんの言葉に被せて………やはりガッちゃんも今の魔力の変動で目覚めたようで………続けて、私に小声で言う。
「そうですよ、マスター
シアさんが使ったのが
錬金術が創造魔法かは
判断できかるますが
きっと自分が魔力を使って
出現させたモノとは
気付いていなでしょうから
教えて差し上げた方が良いかと………」
そうコウちゃんとガッちゃんに言われた私は、ソッとジオンとフリードへ視線を向ける。
私の視線を感じたジオンが、視線だけでよろしく頼むと言って来る。
ちょっと困って、フリードへと視線を振れば、小さく首を振ってよろしく~という感じで丸投げして来た。
私は、ちょっと困ったなぁ~と思いつつ、シアの言葉を否定することにした。
「いや、私は持って無かったから………
コレは、シアが出したのよ」
「えっ?」
私の指摘に、シアがきょとんとした表情で、小首を傾げる。
(もしかして、これって
丁寧に説明しないと
ダメなやつ?)
そんなコトを思いながら、私は端的に言う。
「今、魔力が抜けたでしょ」
私の問い掛けに、シアは素直に頷いて言う。
「うん、スゥーって抜けた感覚あった」
シアの答えを聞いて頷いた私は、ちょっと諭すような感じて、この現象の原因を指摘する。
「この周囲には、街中だけあって
ろくな妖精さん達が居ないから
コレを出したのはシアよ
たぶん、創造魔法……ではなくて
錬金術の方じゃないかな?
創造魔法は、1日1回が限度で
錬金術は数とか回数に
制限がない感じだったし
材料となるモノがあれば
こういうモノなら簡単に
出来るんじゃないかな?」
私の説明を聞いたシアは、きょとんとしてから言う。
「えっ? 妖精さんっているの?」
(だぁ~…シアぁ~…
食いつくところって
そこぉ~………
どうやら、私は説明の仕方を
間違ったようね……はぁ~……)
そう思いつつも、予備知識って大事よねっと、少しだけわかっている妖精に付いてを説明しておく。
(この妖精に付いての知識が
後々何かの役に
立つかも知れないしね)
「うん…こっち世界には
沢山の種類がいるよぉー…
私が歌を歌っていたら
ひょこひょこと出てきたよ
じゃなくて、シアは何を出したか
確認しないとね
たぶん、直前に叫んだ
お好み焼きソースと
マヨネーズ
それに青ノリと
かつおぶしじゃないかしらね
器も大きさも違うけど
数が4個あるからね
あとは、本気度かしら
気合い(込められた魔力)が
強いヤツが多いってコトかな?」
器の大きさに大小があるのは、込められた思いと魔力の差だろうと見当を付けて言う。
そして、取り敢えず、一番自分に近い位置にある小玉スイカ程度の壺に手を手に取り、その蓋を外して、中を覗き込む。
(うん、この独特の匂い
間違いなくソースね
それも馴染みのある匂いね
それに、このトロミよ
まさしくお好み焼き用ね
味はどうなのかしら?)
「この小玉スイカ並みの壺には
たぶん、お好み焼きのソースね」
そう思った私は、インベントリの中から食器の類の一部、小皿とスプーンを取り出す。
そして、蓋を開けた壺の中身を丁寧に掻き混ぜてから、小皿に少量取り分けて、小指で掬って舐めてみた。
(あら…どうりで………
これってアレじゃない
家の近所のスーパーにも
売っていたわねぇ………
たこ焼きやお好み焼きと
同じ列の棚に配置されてたわ
うぅ~ん…懐かしいわぁ~…
おた○くのお好み焼き用
好みが出るわねぇ~………)
舐めて中身を確認した私は、シアに向かって手でOKを作りながら言う。
「うん、お好み焼きソースね
それも馴染みのあるヤツよ
シアも舐めて確認してみてよ
はい……あっちょびっとよ
しょっぱいからね」
私の言葉に、どきどきしていたらしいシアが頷いて、おずおずとお好み焼きソースを小指に付け、ペロッと舐めて確認する。
「あぁ~っ…これ、おた○くの
お好み焼きソースだぁ~……」
嬉しそうな顔で、前世の食卓の味のひとつを手にしたシアは、うっとりしながら、そのしあわせを噛み締めていた。
(シアは幸せそうねぇ~………
じゃなくて、確認確認
でも、前世の味が手に入るのは
本当に嬉しいわぁ~………
シアとは、神獣達を仮死状態から
覚醒《めざ》めさせたら
それっきりにしようと
最初は思っていたけど………
新たな神子サファイアの
コトもあるし………
この前世の調味料も
魅力的過ぎるわねぇ………
じゃない、残りのも確認よ)
私はこころの中に思いを仕舞って、お好み焼き用のソースの壺に蓋をする。
そして、一回り大きい方の壺を手に取る。
おソース同様、蓋を取って中身を確認すると、少しツンとした特有の香りが鼻をくすぐる。
(ああ、これは間違いなく
マヨネーズね
前世、マヨラーだった私には
この酸味の香りがたまらないわ
うん、1番大きいのに納得ね
きっとシアも前世は私と同じ
マヨラーね)
「うん、こっちは案の定
シアのだぁ~い好きな
マヨネーズよ
それも、きちんと日本の
食卓版のやつね
こういう入れモノだけど
海外産の酸っぱいヤツじゃないわ」
私は新しい小皿とスプーンをインベントリから取り出し、小皿へと取り分ける。
卵黄の黄色と油と酢に、塩コショウその他調味料によって構成されるマヨネーズを試食する。
勿論、小皿に取り分けたマヨネーズも、小指でちょこっとだけ掬いとり、舌で味わって確認する。
(うん、これも懐かしいわぁ~…
自分で自家製マヨネーズを
作ったりもしたけど
やっぱりメーカーモノには
負けちゃうのよねぇ~………
マヨネーズって、万人向けの
万能調味料のひとつだもんね)
私は、前世を思い出しつつうんうんと頷いて言う。
「凄いわ、シア
成功しているわよ
もどきじゃなくて、本物ね」
私は、毒見よろしく味を確認した後、シアへとマヨネーズを取り分けた小皿を差し出す。
シアは私の確認に、満面の笑みを浮かべたあと、それでもちょっと心配そうに、私と同じように小指でちょいっと掬って、口に運んだ
「うわぁ~…嬉しいぃぃぃ~……
きゅー○ーのマヨネーズだぁ
この程良い酸味が好きなのよぉ~」
とても幸せそうに言うシアに、私も前世を思い出して自然と笑顔になる。
「私は使い分けしてたなぁ~……
温野菜系には味○素ので
サンドイッチや生のサラダには
きゅー○ーだったなぁ……
鳥の胸肉をボイルしたのは
ゴマドレッシングとマヨネーズで………」
思い出した、平和で物が溢れるほどあった懐かしい前世をほわほわと思い出しつつ、私はマヨネーズの壺の蓋を閉める。
マヨネーズ独特の、酸味が効いた風味が飛んでしまうのを避けるために………。
(凄いわね、シアは
いや、でもこれなら
やせ細っているシアも
しばらく、ここで静養して
前世調味料を使った
食事をすれば
ぽっちゃりさんになるかな?)
なんて思いつつ、私は次の巾着式革袋………たぶん錬金術で出現した………の、中身の確認に入る。
(革袋ってことは乾きものね
さしずめ、中身はかつおぶしか
アオ海苔でしょうね
さっきこころから前世の
調味料を叫んでいたし)
手にした革袋の巾着式の口紐を解いて口を広げれば、とても懐かしい郷愁を誘われる香りが匂い立つ。
(あっ極上品)
実家で、お歳暮等の贈り物に良くあったモノと変わらない………小分けの袋を開封した時と同じ………美味しそうな香りがただよう。
「ママぁ~おかかご飯食べたいね
お醤油をちょびっとかけたやつ」
と、私の魂に寄り添い、前世の輪廻を廻ったコウちゃんが、酷く懐かしそうに言う。
当然、ガッちゃんもコクコクしながら追随して言う。
「食べたいです
ホカホカのおかかごはん」
だから、私も小声で返す。
「あとで、シアに頼んでみるわ
それと、お米探しね
私だって、炊きたての
ご飯をおにぎりにして
お醤油垂らしたおかかを
中身にした
おかかのおにぎりが
心底食べたいもの」
そう言いつつ、シアに中身を言う。
「ああ、やっぱりね
コレは、かつおぶしね
良い感じだわぁ~……
香りも良いわね」
口紐を緩めて広げた口から覗く、ちょっと見は薄茶色でペラペラで透けるようなかつおぶしを、私は懐かしく思いながらちょっと摘まんで口に入れ、その味を堪能する。
(うん、美味しいわぁ~コレ
お歳暮品より格段に上ね
シアの前世の生活が判るわね)
「うん、美味しいわぁ~……
ああ、おかかのおにぎりが
食べたいなぁ~………」
美味しいおかかを口にした私は、思わず本音を思い切りこぼしてしまう。
あまりの美味しさに、もうひとつまみとしてしまうそうな自分を叱咤して、私はシアへとかつおぶしの詰まった革袋を手渡す。
私の様子を見ていたシアも、迷わすかつおぶしを摘まみ、口に入れてほぉ~っとする。
「うん、美味しいねぇ~………
こっちにご飯……じゃなくて
お米ってあったけ?
猫まんまがたべたぁ~い
かつおぶしを炊きたてのぉ
ご飯にぱらっとかけて
お醤油をひと回し………」
おもえがけず、シアが自分と同じ感想を口にしたことで、私はつい突っ込みを入れてしまう。
「シアの前世ってさぁ……
聞いた限りじゃお嬢様でしょう?
それで猫まんまなの?」
私の突っ込みに、ちょっと頬を膨らませながら言う。
「しょうがないでしょ
愛しの猫ちゃん達が
あんまりに美味しそうに
食べるから………
それを、つまみ食いして
クセになったのよ
ああ、あの味が忘れられない」
くぅぅぅ~と握りこぶしをして言うシアの姿に、私はついつい苦笑いが浮かぶのを止められなかった。
(もしもしぃ~……シアぁ~…
ペットのご飯のつまみ食い?
いや、ペット大好きな人の
半数はやるって聞くけど……
シアの前世もそのひとりかいっ
いや、気持ちは理解《わか》るわ
私だって、コウちゃんだって
ガッちゃんだって、かつおぶし
たぁ~ぷりっの猫まんま食べたいよ
おかかおにぎり恋しいなぁ~……
じゃなくて、最後の革袋よ
コレはもう中身は決まっているわね
間違いなく、アオ海苔ね)
そう内心で呟いて、私は最後の革袋を手に取った。
感想は、少しかつおぶしの革袋より小さいかな?
私は、巾着式の革袋の口紐を解いて、広げて中身を確認する。
かなり細かい緑色の破片に、仄かな磯の香りをかぎ取った私は、口元が緩むのを感じた。
(完璧じゃない
これでお好み焼きもどきに
マヨネーズのソース掛けに
かつおぶしとアオ海苔のコンボ
それを掛けて食べたら
美味しいのは間違いなしね)
なんてコトを思いながら、私はシアに向かって言う。
「最高ね、シア
アオ海苔もOKよ
半島や大陸が作るような
もどきなんてひとつも無いわ
その錬金術の力は本物よ」
そう言った時、チラっと視界に入ったのは、ジオンとフリードが、おた○くのお好み焼きソースとマヨネーズを乗せた小皿をさりげなく手に取り、味見をしている姿だった。
(ジオンもフリードも
様子からしてOK
本当に、錬金術って便利で
万能よねぇ~………)
なんて思っていたら、フリードがコソッとコウちゃんとガッちゃんにも味見させていたりする。
(やっぱり、身体は無かったけど
コウちゃん達の兄弟なのねぇ)
なんて、のほほんと考えていた私だった。
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