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第14章 冒険者の始まりの街フォレンへ

212★転移者並みに、こちらの知識が無いようです

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 私は、こころの中で叫んでから、頬が引き攣らないように気をつけながら、シアに向かって言う。

 「行っても面白くないわよ
  そりゃ~ねぇ~……
  めっちゃ寂《さび》れてたから

  ソルス・エル・ピーシェを
  採り放題だったけど………

  魔物は厄介なの多かったし
  行く意味無いと思うよ」

 実際、あまり行っても意味は無いし、シアの体調や体力を考えると、切実に止めて欲しいという思いからそう言うと、私の気持ちを悟ってくれたらしいフリードが口を開いた。

 「ままぁ……サファイアが
  ある程度大きくならないと
  危険地帯になんて行けないよ

  いくらジオンがいるとしても
  僕も戦力にはかなり程遠いし

  まだ、この身体に完全に
  馴染んだわけじゃないし………」

 思わず私はフリードの言葉にうんうんと頷いていた。
 実際、シアの身体は、呪いのような毒素はソルス・エル・ピーシェで解除されたけど………。
 長年の強制不摂生でなった、ガリガリのトリガラのような身体は一朝一夕でどうにかなるモノじゃないし………。

 新たなお荷物、神子のサファイアはまだ目覚めたばかりという状態なのだから………と、思ったら、フリードにソレを指摘されたシアは、自分が無謀なコトを言ったコトを自覚してくれたらしい。

 「あっ…そうね、サファイアが
  大きくならないと無理かぁ~……」

 (良かった、シアも気付いたのね
  ほっとするわ)

 ガックリと肩を落としたシアは、ペロッと舌を出してぼやく。

 (シアぁ~…ジオンがガン見してるよ
  そんな可愛い仕草したら……一撃ね

  ある意味、ジオンが不憫からしらねぇ………
  男として辛くなるのも近いわね

  今は、意識がそっちに行ってないから
  本人も気づいてないようだけど………

  面白いから黙ってよぉ~………
  敵に塩は送らないじゃないけどぉ~

  ジオンにもっと頑張って欲しいからね
  うん、ガンバレって感じね

  こころの中で応援してあげるわ
  その代わりアドバイスもしないし
  邪魔もしないけど)

 「ずっと自由ってモノが無かったから
  なんか焦っているのかな?

  友達っていう人もいなかったし
  親しいって人もいなかったから……

  前世考えると、すっごい寂しい
  人生を送ってきたのよねぇ~………

  お兄ちゃん達どうしているかなぁ?
  お父さんやお母さんは?

  伯父さんや伯母さんも従兄弟達も
  どうしているかなぁ?

  私の前世って、何で死んだのかなぁ?」

 (あれ?シアってば前世の自分の
  死因を知らないんだ

  普通、前世を思い出したら死因も
  付属でついて来るのかと思ったけど

  もしかして違うのかな?)

 思わず私はシアの言葉に首を傾げて聞いてしまう。

 「あれ?シアは前世の死因
  覚えてないんだ」

 私の言葉に、シアはびっくりして表情で言う。

 「えっライムは覚えているの?」

 (シア、あんた不味いって、その顔
  ジオンのハートをザクザクと
  射止めているわよ

  身の危険感じても私は知らないよ
  馬に蹴られたくないからね)

 そんなコトを考えつつ、私は思い出した死因を並べて行ってみた。

 「うん、1人目は暗殺組織のメンバーで
  女性でトラックに轢かれて死亡

  2人目も女性でアラフィフの喪女
  寒い日に外で心筋梗塞
  不摂生してたからねぇ………

  3人目が男性で市役所職員で
  自衛隊の予備役に入ってたわね

  武器オタでアニオタでゲームオタ
  極めつけの遺跡オタでね

  その遺跡に、コウちゃんが
  封印されていたのよねぇ……

  祭壇らしき場所にね
  スノーボール見たいな珠があってね

  遺跡の1部をゲットーって喜んで
  その珠を抱いて歩いていてね

  胸を撃たれたのよねぇ………
  つーことで、撃たれて死亡ね

  ただ、面白いことに死亡時期が
  ほぼ一緒なのよぉ

  繰り返す輪廻って感じかしらね
  その時から、コウちゃんは私の魂に
  くっついて転生していたの

  だから、たぶん3人目の男性が
  一番最初なんじゃないかな?

  ってことで、死因は覚えているわよ
  シアには、そういうの無いの?
  おぼろげにとかでもさぁ………」

 言うだけ言った私は、改めてシアに前世の死因に繋がる記憶はないの?と言ってみたが………。

 「うぅ~ん無いなぁ~………
  だいたい、私ってば何歳ぐらいで
  死んだかもおぼえて無いのよねぇ~……

  ただ、クリスマスは超えていたと思う
  もしかしたらアラフィフかも………
  下手したら、もっといってたかも

  でも、両親は健在だったし
  兄弟も欠けてなかったと思うわ

  自分で言うのもなんだけど
  親戚一同から愛されていたわ

  それ考えると今世の家族は………
  もう、全部クズね

  死んだお母様ぐらいしか
  まっとうな人がいなかったわねぇ」

 シアからの言葉に、私はあらあらと思う。
 が、ジオンはシアへの仕打ちを窺わせる発言を聞いて、ピリッとした波動を零れ落とした。

 (ジオン、あんた覇気が零れているわよ
  シアの境遇にピキッと来たんでしょうけど
  それって、不味いわよ………てか

  ジオンの覇気を感じても
  サファイアは泣かないのね)

 チラリとサファイアに視線を移すと、ジオンから零れ落ちた覇気にモミジのような両手を伸ばして、キャッキャッと声も無く笑っていた。

 (さいでっか…覇気も美味しいのね
  サファイアは感情の波も美味しのかも
  そうやって、色々と学ぶのね)

 そう思って感心している中、シアは喉を潤す為に、ルゥズゥベリーの炭酸割りをコクコクと飲んでいた。
 そして、私を見てルゥズゥベリーの炭酸割りの入った使い捨てコップを指さして聞く。

 「そう言えば、このうす紫のジュースって
  どんな果実から出来てるのかなぁ?
  ライム知ってる?」

 愛らしく小首を傾げるシアに、私は本当にシアに自由が無かったコトを実感する。
 なぜなら、ルゥズゥベリーの炭酸割りは庶民も貴族も好んで飲むジュースだから………。

 (シア、もしかしてルゥズゥベリーの
  実自体も知らないのかな?
  とりあえず、説明してみようか)

 その様子でシアがどのぐらい世間知らずか判るわね、と私は自分を納得させつつ説明する。

 「これは、ルゥズゥベリーよ
  前世でのラズベリーとブルーベリーを
  ミックスさせたようなやつよ

  絞っただけだとドロッとしていて
  濃厚過ぎて飲めないから
  天然の炭酸水で割られているのよ」

 私の説明を聞いたシアは、なるほどーっという表情で頷く。
 それで確信が持てた、シアは本当にこの世界のコトを何も知らないって………。

 (だぁぁ~……このぶんじゃ、シアは
  ゲームで仕入れた知識以外
  この世界の知識って無いわね

  ラノベで言うところの転移者並みね
  転生特典がほとんど無いわ

  私も転生者だから
  前世と言葉が違うかすら
  わからないけどね

  前世の記憶ほ応用出来るし
  アバターもあったし
  クランと隠れ屋敷も存在したけど)

 なんて私が思っていたら、シアは自分の前に置かれた皿の上の料理を見てぼやく。

 「はぁ~……本気で
  お好み焼きソースと
  マヨネーズが欲しいわ

  ついでに、青ノリと
  かつおぶしぃぃぃぃぃ~…」

 そう小さく無意識にシアが言った瞬間、私はシアの魔力が大きく動くのを感じた。
 そして、声にならない思いをこころの中で叫んでいた。

 (シアぁ~…あんた魔力が
  大きく動いてるよぉ~……
  おーい、何を考えたぁ~………)








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