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第14章 冒険者の始まりの街フォレンへ

206★葛藤はあるけど………

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 私は、まだ迷っている。
 確かに、これだけの魔晶石があれば、赤ちゃんも神獣達も問題なく覚醒(めざ)めさせるコトが出来るとは思う。
 けど、そけには大前提として、シアが健常な状態であるコトが求められる。

 なんと言っても、赤ちゃんは神子としての役割を持っている。
 それに、言っちゃなんだけど、シアは本当にガリガリで、骨に皮が張り付いているに近い姿だから………。
 その姿の理由も一応、聞いてはいるから………でも、悩むわ。

 「シア、私としてはその提案
  嬉しいし、賛成だけど
  反対でもあるのよね」

 だから、私は率直にシアに言う。
 もう少し、健康体になってからの方が良いと思うと、言外に匂わせて………。
 そんな私の言葉に、シアは愛らしく小首を傾げる。

 今のシアは本当に折れそうなほど華奢で、心配になる。
 私は、私のやりたいコトの為に行動している。
 だから、何時までもシア達と行動は出来ない。

 長くひとところに留まれば、いくらアバターで身体を換えていても、何時お兄様達にバレないとも限らないのだから………。
 ヤンデレの嗅覚は侮れない。
 私は、そのコトをゼフィロス村で実感したわ。

 「どうして?賛成だけど反対なの?
  ライムは、残りの神獣の子達を
  甦生させたいんでしょ

  私は、この眠ったままの赤ちゃんを
  目覚めさせたい

  で、ここに12個の魔石がある
  それと、ライムが作った…あれ?
  紫色のが無い………」

 私の言葉に、シアが戸惑った表情で訴える。
 こころに来るけど、不安要素バリバリの姿をしているシアに再考を促したけど………。
 なんか明後日の方向に思考が跳んで、指輪のインベントリ身体し忘れていたらしい、紫色の魔晶石を取り出してテーブルに置きながら言う。

 「ほら、こんだけあるんだから
  全員、無事に覚醒(めざ)め
  させられるでしょ」

 私はテーブルに置かれた魔晶石の群れを見て、どれぐらいの確率で全員を覚醒(めざ)めさせられるかを計算する。
 そんな中、ジオンが私に聞いて来る。

 「何か問題でもあるのか?
  これだけあっても足りないのか?
  それとも、もっと違う理由か?」

 私はその問い掛けに、内心でこの朴念仁がっとぼやく。
 どうやら、ジオンはシアの状態を認識していないようね。
 ここは丁寧に説明するしかないわね。

 「端的に言うと、シアの身体
  どう見てもボロボロでしょ

  視た限りでは、魔力の方は
  横溢(おういつ)するほど
  充実してるけど

  肉体自体はかなり酷いわよ

  これで子育てって
  シアにかなり負担だと思うのよ」

 前世の世界と、今の世界の子育てに、基本的な違いは無い。
 と言うことは、母親役にはかなりの負担が強いられる。
 今のシアに、その負担はかなりリスクがあると思うのよねぇ………。
 かりに、ジオンやフリードがこまめに補佐しても………。

 あらあら、ジオンてば表情に出ているわよ。
 いや、シアの身体を視たら、そうなって当たり前よね。
 あちこちの骨にヒビや炎症があって、肉も脂肪もほとんどなくて、よく平然と動きまわっている………っていう、状態だものね。

 「確かに、かなり酷いな」

 ジオンの言葉に、シアは自分の味方をしてくれると思っていたのにという感じで頬を膨らませる。
 なんだろう、痩せっ子ハムスターが木の実を頬張っているように見えて、可愛すぎるわ。
 シアは、私達の心配を余所に、プンプンしながら言う。

 「そんなの大丈夫だから

  だって、もうご飯抜かれたり
  毒を盛られたりしないし

  何時でも、安全で美味しい
  ご飯食べれるし

  ゆっくりと休むことも出来るわ
  確かに、身体はかなりボロボロよ

  あの時《牢縛の神殿》で
  ちょっと説明したけどね

  あの《牢縛の神殿》に飛ばされる
  ほんの1週間程前にね

  ラノベのイジメの定番か
  って言うようなコトがあったのよ

  常日頃から私を虐待していた継母に
  階段の最上段から突き落とされて
  4日間も昏睡状態で放置されたのよ

  勿論、その間は絶食だし
  お陰で、もともと少なかった体重が
  さらにグッと減ったわよ

  その3日後には、レイパレ外伝
  最大イベントの婚約破棄よ

  この時に逃げ切れなければ
  王国の《結界》維持の為に
  ただただ魔力搾取されて

  意識も自由も無くして
  好きでも無い魔力が高いだけの
  男達の慰み者で子供製造機よ

  それを知ったのは
  イベント3日前だもの

  バットエンドから逃げられる
  人生ただ一度限りの
  逃亡のチャンスよ

  どんなに身体がボロボロでも
  家の中は敵だらけだから
  安心して休めないし

  食事だって毒盛りされてない
  食べれそうなモノをほんの少し
  口にしただけなのよ

  自分ながら、最悪イベントを
  よく気力だけで行動し
  逃げ切ったと思うわ

  だから、身体がボロボロなのも
  ガリガリなのはしょうがないわ
  
  だって、この1週間は
  ほとんど食べて無かったんだから

  だから、十分に食べて寝れば
  ある程度は回復するわよ」

 絶句するような状態だったコトを改めて知り、私はレイパレ制作会社を無意識に毒づく。

 (うわぁ~…外伝酷過ぎじゃないの
  いや、本編も酷いけどね

  でも、ヤンデレってだけで
  基本、愛されるのよね
  本人は望んでないけど

  なにより、好みの差はあれ
  相手は全部イケメン系だものね

  じゃなくて、私がヤラカシタから
  魔物のステンピートも
  聖女や勇者の召喚も消えたって………

  ヒロイン来ないの決定だって………
  コウちゃんとガッちゃんが言ってたわね

  じゃなくって、どうしようこの状況)

 溜息しか出ないんですけど、ジオンはシアの希望を、基本的には否定しないわよね。
 それから、ふとみて気が付く。
 隷属のピアスしているけど、ソレの分の呪術も綺麗さっぱりと、魔晶石の一部として無くなっているコトを………。

 まぁ、護衛用奴隷だって、見た目だけで十分威嚇になるでしょうし、ジオンがシアを裏切るコトなんて無いでしょうから、そこはどうでもいいんだけどね。
 フリードのは、まだ奴隷の隷属の効力はあるようね。

 ただ、あまり意味なさそうだけど。
 振り切ろうと思えば、あの程度の呪縛なんて簡単に切れるでしょうし………。
 あえて、そのままにしているのは、シアに何かあった時に感知できるようにでしょうね。
 なんて思っている間に、フリードがシアに抱き付いて訴えるように言う。

 「まま、僕の魂の中に
  溶け込んだ子がね訴えるんだ
  ままを抱き締めたいって………

  狼獣人のサガかなぁ………
  大切な人を守りたいって思うんだ

  僕も兄弟が欲しいなぁ………
  ライムさん、この赤ちゃんを
  覚醒(めざ)めさせて欲しい

  僕も頑張って手伝うからさ
  ジオンだっているし………

  その方が、ままも自分自身を
  いたわってくれるよ」

 ちょっとほっこりと見ていたら、こっちに飛んで来ちゃった。
 いや、みんなを覚醒(めざ)めさせるのは、私としても賛成なんだけどね。
 ただ、シアの身体の負担を考えると………ちょっと心配なんだよね。
 それでもって望むなら、赤ちゃんを覚醒(めざ)めさせるけどね。

 何と言っても、神子の役割持っている子だから、普通に愛情もって育ててもらわないと困るのよ。
 この世界の為にも、私の為にもね。

 神子が正常に機能しないと、いざって言うと気に世界を守れないものね。
 それに、それぞれの世界の境界線の外に、あんなバケモノがいるんじゃたまらないわ。

 今回はジオンが倒したけど、みんながみんな倒せるモノじゃない者ね。
 世界の境界線を守る為にも、神子には正常に育ってもらわないとね。
 シアの負担と希望、そしてこれからを考えると………。

 そう思っているところで、ジオンが双眸を開き、私をジッと見て言う。

 「俺からも頼む」

 あっやっぱりそうなったか………シアの身体は心配だけど、希望優先ね。
 いや、ジオンも理解しているのよね。
 神子を、世界を愛し、善悪をきちんと判断できる、その上で優しい子に育てる必要があるって………。

 いや、それでもシアの希望第一かな?
 本人に自覚あるかどうかしれないけど、ヤンデレ入ってきているからね。
 ここはもう、私が折れるしかないじゃない。
 本気で、どのぐらいの魔晶石で覚醒(めざ)めさせられるかは、それこそ神のみぞ知るなのよね。
 いや、ジオン達の言動から察するに、もうこの世界に女神はいないようだけとね。

 「もぉー…これじゃ私が悪者よぉ
  シアの負担になるから
  気持ち的には反対だけど

  私の腕輪に居る神獣達も
  覚醒(めざ)めさせたいからね

  ただし、ひとりずつね

  これだけあったとしても
  どれだけの子が問題なく

  覚醒(めざ)めさせられるか
  ちょっとわからないからね」

 思わず、私はそう言って自己責任の回避に走ったのは言うまでも無い。







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