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第14章 冒険者の始まりの街フォレンへ

203★どうやら、赤ちゃんのコトはジオンに丸投げのようです

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 私はそう言いながら、翳した手の平か読みとったモノを考える。

 (うぅ~ん………この状態を
  なんて言ったら良いのかしらねぇ………

  どうやら【理=(ことわり)】や
  【調停者】?だとか言う

  この世界を守る役割をもった者を
  この世界に定着させる為に

  赤子の姿までは作ったけど………
  てきな感じで、あの2人が
  創ったとしか思えないわ

  綺麗さっぱりとまっさらなんだもの

  あとは、ジオンにお任せってこと?
  ジオンが封印から目覚めなかったら………)

 そのコトを想像して、ライムはゾッとする。
 なんせ、赤子はまっさらなのだ。

 文字通り、色彩さえない、ただ見た目が赤子の姿をしているというだけの状態だったりする。

 (そう言えば、コウちゃん達
  神子を解体して誕生した神獣も
  ぜぇ~んぶ白色系よね

  いや、それでもアルビノでは
  無いのだけど

  目はきちんと光彩も色も
  はっきりしているし………

  コウちゃんの瞳は紺碧色に
  金色が散りばめられた
  ラピスラズリ色だし………

  ガッちゃんの瞳だって
  金色の混じった深紅色だし

  まぁどちらも白色だけどね

  フリードの瞳は朱銀色よね
  そこは、素であるコウちゃんと
  お揃いじゃ無かったわねぇ………

  って、そうだったフリードは
  コウちゃんから剥がれおちた

  魂のカケラだけで繭になってて
  肉体は持って無かったんだっけ

  狼系獣人の子の身体を貰った
  状態だから素の色は判らないわね)

 手を赤子に翳したまま考え込んでいたら、シアが不安そうに瞳をゆらしながら問いかけて来る。

 「ねぇーライム…この赤ちゃん
  もしかして不味い状態なの?」

 (あらあら…心配させちゃったかしら
  とはいえ、確かにこの赤ちゃん
  あまり良い状態では無いわね)

 シアにどう説明したら良いかしら?と思いつつ、私は安心させるように首を振る。

 「うぅ~んそぉ~ねぇ………
  甦生の時を待つ神獣達とは
  ちょっと違う状態かな?

  こうしてこの赤ちゃんの持つ
  内包する魔力に触れて見た限りじゃ

  腕輪の中に居る子達に比べると
  まだまだ十分平気な状態よ

  魔力枯渇までは言って無いわ
  かなりギリギリだけどね

  それにね、この赤ちゃん
  どうやら、あの2人に

  この世界の神子としての
  役割を定められて創造された後

  その生命を維持する為に
  極限まで休眠状態にされて
  封印されたままだったみたいね

  役割の為の【理(=ことわり)】だとか
  そういうモノを存在自体に
  仕込まれているようだけど………」

 (うぅ~んこの言い方で良いのかしら?
  良い言葉や言い回しが浮かばないわ

  なんか、丸投げかんたっぷりなのよね

  『代替の神子は作ったから
   後始末よろしくぅ~………』

  って、ジオンにポイ………

  それが私が感じたモノだけど
  言ってもいいものやら………)

 私が次の言葉を探している間に、シアはきょとんとした表情で首を傾げて言う。

 「えっ? 封印されているの?
  もう、あそこから出た時に
  封印はとかれているんじゃないの?」

 水晶柱に封印されているところを解放したので、もう封印は全部解けたと思っていたらしいシアに、私は首を振る。

 「まぁ…そうね、例えるなら……
  第一の封印は解除されてるけど

  まだ封印は幾つもあるようね
  手応え的にそんな感じかな?

  封印解除の条件は判らないけど………
  この子の成長に合わせて
  封印が解放されるモノもありそうね

  じゃなくてね、残念なコトに
  どうやら、この赤ちゃんは

  この世界の為の調和を保つという
  役目は架せられてるけど

  それ以外は、見事にまっさらだから」

 (シア、自分で抱っこしてて
  疑問に思わなかったの?

  膨大な魔力があっても
  全部啜られて魔力無しって
  扱い受けていたセイなのかしら?

  違和感を感じなかったの?

  この赤ちゃんの内包する魔力は
  純粋に魔力の塊で色が無いって

  属性も存在しなければ
  生きていれば植物ですら持つ
  感情のようなモノも存在していない

  挙句が、見た目からして
  いっそ見事に真っ白なのに

  髪の毛にまつ毛からうぶ毛まで
  なにより、肌の色が真っ白でしょ)

 声を大にして、その違和感を訴えたいと思いつつ、私はシアの様子を見る………が。

 「まっさらだから?」

 私が感じる違和感をシアは感じていなかったらしい。
 その様子から、魔力で相手の素質などを読みとるという能力が無いことを見てとる。

 (いや、無いんじゃなくて
  これは、知らないのね

  流石に、三人分の前世持ちと
  引きこもりひとり分の前世じゃ
  知識量が違うってコトかしら?

  というか、前世の私って
  やり込みカンスト系だったし………

  課金つぎ込んで色々と苦心して
  アバターとか創ったから………

  シアの言動から察するに
  私と違って裕福で課金し放題

  その上、手助けしてくれる人が
  何人もいたみたいねぇ………

  のほほんゲームしてたのがわかるわ

  だから、内包する魔力を探索して
  相手を観察するなんてコトも
  シアはしたことないようねぇ………

  それ以前に、そういうコトを
  思い付かないってコトね

  取り敢えず、シアの思考を
  誘導しないとね

  話しが進まないわ)

 内心の溜息を飲み込み、私はちょっと戸惑ったような表情を浮かべつつ、シアの興味が引かれるようなコトを口にする。

 「普通の赤ちゃんと一緒な状態」

 「普通な赤ちゃん状態ってことは
  普通に育てて良いのかな?」

 私はちょっと内心ホッとしつつ頷いて言う。

 (これだと、丸投げっぽいから………

  ダメね、ジオンもあてにならないわ
  フリードもシアしか見て無いし………

  赤ちゃんの初期設定まで持って行くの
  大変そうだわ)

 「たぶん、それで良いと思うわよ
  ただ、シアに育てられる?
  育児経験、前世である?」

 私はもっともらしい質問をシアにして、経験値を確認する………と。

 「実は、無いんだよねぇ………
  引きこもりしてたし………

  犬や猫の子なら引き取って
  世話したコトあるけど……」

 あまりに予想の通りな答えに、内心で半泣きになる。

 (あっやっぱり………シアの様子から
  そうじゃないかと思ったわよぉ~………

  じゃなくって、初期設定よ
  ゲーム開始直後に出るアレを
  シアにやらせなきゃ………

  私だって、何時までも
  シアに関わってフォレンに
  居る訳にはいかないもの………

  ヤンデレに捕まって軟禁生活はイヤ
  私は自由な冒険者をするんだから)

 赤ちゃんを撫でるシアは絵になるわねぇ……なんて思いつつ、私はどうやったら、シアの内包する魔力で、赤ちゃんをキャラ起動させるか悩む。

 (あっ…良い香り……花茶ね……)

 フワリと香った心地よい香りに、私はふっと肩の力が抜けるのを感じた。
 視線を香りの方に向ければ、フリードが専用ワゴンに茶器セットを乗せてこちらに来るところだった。
 私の視線を感じたフリードは、視線だけで頷いてシアに言う。

 「まま、その子の名前どうする?
  僕の弟でしょ………

  色々な条件とか難しいコトは
  あとで考えれば良いでしょ

  取り敢えず、名前を付けようよ」

 (ナイッスよ、フリード
  今、一番シアにして欲しいコト
  良く言ってくれたわ)

 内心でガッツポーズをしながら、チラリとジオンを見れば、こちらも頷いて言う。

 「そうだな、何にしても
  その赤子には名前だな

  呼び名が無いのは不便だし
  そういうモノも必須だろう」

 (そう、初期設定は大事よ
  名前に性別に色彩に………

  はぁ~………思い出すわぁ………
  レイパレでアバター創った時の
  設定の大変さを………

  いや、小課金しか出来ないっていうのに
  かなりこだわったからだけどね)

 ジオンの言葉に頷いて、私はシアを誘導するべくやるべきことをさりげなく言う。

 「まぁ…ゲーム設定の最初は
  名前に職業に属性とかだから………

  まずは、名前ね
  職業はさしずめ、赤ちゃんね

  属性は、神子のようだから
  聖属性って感じかしら?

  でもって、貰ったのはシアだから
  その権利と義務はシアにあるわね」

 私は、具体的な内容を口にしながらシアを見て微笑む。

 (ここは、はっきりと赤ちゃんを
  受け取ったシアが設定するコトを
  認識させないとね)

 「そうね、それじゃここは………
  ジオンも一緒に考えてね

  あの2人の元仲間だったんでしょ
  神子を解体した責任とってね

  あっと勿論、フリードは
  元神子のカケラということで

  この赤ちゃんにとっては
  お兄ちゃんなんだから一緒に考えてね」

 (おやおやお惚気ですよソレ
  無意識なところがシアらしいですけど

  そんな風に、ジオンに頼っている姿を
  見ていると、独り身の私は
  あてられてしまいますね

  なんか、無性に兄様に
  会いたくなってしまいました)

 そんな私の視線の先では、嬉しそうに微笑むシアがジオンを見て首を傾げていた。

 「そうだな、それじゃ………
  腰据えて考える為にも
  取り敢えず、座ろうか?」

 ジオンは大胆にシアを抱き上げて、ソファアへと降ろす。
 そんな姿に、チクッと胸が痛みを覚える。
 ただし、ジオンに対しての恋情は無い。

 コウちゃん達を解体した憎い男達のひとりではあるものの、なんらかの理由があるらしいコトも判ったし、ジオン本体は悪意を持っていないコトも理解した。
 だから、憎まずにいられるだけで、恋愛対象にはならない。

 (そう、それがレイパレの
  幻の第6の攻略対象者でもね)

 シアの隣りに座ったのを見て、私もさっさと対面に座る。
 当然、コウちゃんとガッちゃんもタタッと左右に分かれてソファアに乗る。
 が、やはり自分達を封印した男達が創った神殿だけあって、負担を感じたていたのだろう。
 疲れている様子のコウちゃんとガッちゃんは早々に寝る為に丸まった。

 (屋台で、夕食用に
  色々と買ったんだけどなぁ………)

 そう思いながら、シアの方を見れば、フリードがソファアに座る姿が目に映る。
 テーブルの中央には赤ちゃんを入れた寝籠。

 (さて、シアを誘導して
  赤ちゃんの初期設定よ

  そしたら、シアと話して
  腕輪の中の子を甦生して
  覚醒(めざめ)させるんだから)







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