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第14章 冒険者の始まりの街フォレンへ
199★魔晶石、喉から手が出るほど欲しいです
しおりを挟む私は、シアの提案に、後味悪くなく言う方法を考えるが、言葉を飾るコトで真意を曲解される可能性を考えしまう。
(えぇい…ままよい
シアは見るからに天然の純粋だもの
下手に言葉を飾って言うよりも
きちんと真正面から言った方が
誤解を生む可能性が減るわよね
ここは、そのまま言っちゃおう)
「シアの提案は凄く魅力的よ
ただ、そのシアの持つ12個の
魔晶石の群れが甦生に使えるかは
残念ながら、神獣のコウちゃんや
ガッちゃんが直接魔晶石を
触ってみないとわからないのよ
現に、単なる魔晶石ってだけなら
《難攻不落の深淵の絶望ダンジョン》の
裏イベントの中に結構あったもの
ただ、それって特殊な術が
魔晶石の中に編み込まれていてね
下手に、神獣が魔晶石に触れると
逆に魔力をゴッソリと
奪われちゃうモノもあるのよ
コウちゃんが、不用意に
魔力搾取の術が組み込まれている
魔晶石に触れちゃって
あやうく、ちょっと不味いコトに
なっちゃったくらいだし
それこそ、生命に影響が出るくらいね
そして、あのダンジョンの魔晶石って
元、ジオンの仲間達が作ったモノも
かなぁ~り存在しているのよね
特に、神子から誕生した神獣を
封印して魔力搾取して
空間修復に使用されていたのは
警戒しないとならないから………
誤解しないでね
シア達に神獣達を見せるのが
嫌ってわけじゃないのよ
ただ、もう既に仮死状態で
命が保たれているだけなの
ギリギリ死んでないって
危険な状態だから………」
(こう言えば、他人にも優しい
シアは無理な提案を私達に
しないと思うのよね)
喉から手が出るほど欲しい魔晶石ではあるけど、トラップじゃなくても、条件が編み込まれて精製された魔晶石の場合もあるコトを考慮しないとね。
(でも、12個の魔晶石かぁ………
もしそれらが、安全な……そう
純粋な魔晶石なら………
この腕輪の中で仮死状態で
甦生を待つあの子達を全員
安全安心で覚醒させて
あげられるのになぁ……残念
でも、あの子達の安全には
換えられないわ
絶対に安全という魔晶石以外
あの子達の甦生には使えないもの)
欲望と安全の狭間で揺れる私を余所に、コウちゃんがシアをチラチラと見ながら言う。
「ママ、誰かひとりだけを
甦生するんじゃなくて
魔晶石を解(ほど)いて
全員に均等に与えるんなら
シアさん達に、その姿を
見せるコトぐらいは出来るよ
ただし、その場合は
ジオンの呪縛をしていた
紫色の魔晶石の他に
俺達3人の魔力を恐縮して作った
あの魔晶石も使えばだけど」
手渡された紫色の魔晶石を、神獣の姿を見せるのと引き換えに、確実に消費してしまえば後々『返して』と言われる心配が無いという意味を込めて言うコウちゃんに、シアが何事かを考えるそぶりを見せる。
そして、指輪からなんのためらいも無く、12個の魔晶石を取り出す。
(あっ本当に4個は大きい
8個もかなり大きいわ
もし、あれが使えるモノなら……
いやいや、ダメよライム
あのダンジョンの魔晶石と
同じ制作者かも知れないんだから)
そう思う私の気持ちを余所に、シアがジオンの名を呼ぶ。
「ジオン、この8個を持ってて
フリードは4個持ってね」
ついで、ジオンの両手に8個の魔晶石を出したのを見て、私は目が釘付けになるのを自覚した。
(シア、魔晶石の全部を出して
ソレをどうするの?)
純粋にそう思ったら、シアがフリードの手の平に出したジオンのコブシぐらいある大きい4個の魔晶石を乗せて、そのひとつを手にしていた。
白色の魔晶石に視線が自然と吸い寄せられるのを感じて、私は内心で苦笑する。
そんな私に、シアは白色の魔晶石を私に向かって差し出しながら、なんの気負いも無く言い放つ。
「ライム、もんもんと悩むより
安全かどうか確認してよ
取り敢えず、ライムが握ってみて
はい、大きい方の4個のひとつ
私には何の影響も感じないから
どれが危険か判らないわ
だから、見た目てきに
安全そうな白色ね」
(シア、貴女天然すぎよ
もう、そんな風に差し出されたら
手にとってみたくなるじゃない
本気で、私は安全な魔晶石が
欲しいのよ)
私は、シアの差し出した白色の魔晶石とシアの顔を見比べ、覚悟を決めて、ソッと手に取る。
(良かった…取り敢えず
危険は何も感じないわね
まだ、安全とは限らないけど
害意は感じないわね
意識を集中して魔晶石の中を
よぉ~く視るのよ
へんな術が込められていないか………)
「どう? なにか術がかかってる?」
魔晶石を確認する私に、シアが不安げな声で聞いて来る。
(私が視る限り、この魔晶石に
搾取の術などは入ってないわね
あの時と大違いだわ
コレはほのかに温かいもの)
「うーん、持った感じでは
何も感じないわね
あれは、私が触っても
ビリッとしたから………
コレなら大丈夫かな?
コウちゃん、いけそう?」
心配はあるけど、私の魂と一緒に転生したコウちゃんは、この世界で封印され、魔力の搾取を受けていたガッちゃんよりはリスクの少ないコウちゃんにそう聞く。
コウちゃんも、自分の方がガッちゃんよりも耐性があると踏んで、身を大きく乗り出して、私の手の平に乗る魔晶石を覗きこむ。
(大丈夫かしら、ドキドキするわ
でも、もし安全な魔晶石なら
何を対価にしても欲しいわ)
「うん、ママ、見た感じでは
大丈夫そうだよ
どうかな? ガッちゃん?」
危険が無いと感じたコウちゃんの言葉に、安全をとって覗き込むことすらしていなかったガッちゃんも、白色の魔晶石を覗き込む。
(ガッちゃんも大丈夫って
保障してくれるなら
本気で、シアと交渉しようかな?
ああは言っていたけど
相応の対価は払いたいのよね
じゃなくて、後でフリードと
ジオンにも、魔王シリーズを
着せないとね
いや、シアほど不安は感じないけど
備えあれば憂いなしって言うじゃない)
なんて思っている私の肩で、ガッちゃんがコウちゃん問いかけに答えていた。
「嫌なモノは感じないよ
純粋に魔晶石な気がする
けど、その前に、もう1度
それを柱に嵌め込んでみたら?
ジオンは、呪縛された自分と繭を
封印(=安全に保管)する
意味を込めて作られた神殿だから
もうなにも無いだろう
って言うけど………
僕からしたら
あの2人の性格を考えると
まだ、何かありそうって思うから
甦生に使用する前に
その辺をちゃんと確認した方が
良いと思う
あっもちろん、その前に
コウちゃんは触って確認してね」
ガッちゃんの言葉に、私も無意識で頷く。
(そうね、ああいう性格なら
まだ、何かあるかも知れないわね
なんか仕掛けがあるかも………
悪戯好きそうな雰囲気あったし……)
なんて思っている間に、コウちゃんは大胆にも白色の大きな魔晶石に手を置いていた。
その愛らしい姿に、ついつい頬がぴくぴくしてしまう。
(ああ、ダメだわぁ…
デレてしまいそう
本当に、コウちゃんの
そういう姿って可愛いわぁ~……
前世の時のあの姿が思い出されるわ
何時まで経っても子供で
ネコじゃらしを振りまわすと
夢中で追いかけていたわねぇ………)
「ど…どうかな?」
私が夢想に逃避している間、シアが不安そうに見守り、つい問いかけていた。
それに対して、コウちゃんはケロリッと答える。
「うん、大丈夫だね
コレが後3個使えて
中ぐらいの8個も使えるなら
全員を起こせるね」
フリードの手の平の上にある残り3個の大きな魔晶石と、ジオンの手の平の上に置かれている8個の魔晶石を見て、コウちゃんは感慨深げに言うが………。
(さっきの言動を考えると
兄弟が覚醒するのは嬉しいけど
確実に、私の愛情が減る
って考えているわねぇ………
そして、それはガッちゃんも一緒ね
じゃなくて、話しを進めないとね
この魔晶石達による仕掛けが
まだあるかも知れないものね
いったい、何があるのかしらね
先に封印を解いたあの2人組って
かなりイイ性格していそうだし
逆に、ジオンは生真面目で
愚直って感じだから………
だから、真っ先に裏切り者達に
封印されたんでしょうねぇ)
そんなコトを考えながら、私は言う。
「それじゃ、取り敢えず
ひとつ平気だったんだから
全部平気だろうってコトで
この魔晶石全部を定位置に
嵌め込みましょうか」
そう私が言えば、シアも頷いて言う。
「じゃあ、指示するねぇ………
私がちまちまと嵌め込むよりも
ジオンとフリードがぱっぱと
嵌め込んだ方が早いと思うから」
(くすくす…シアも自覚あるのね
自分で動くよりも、フリードや
ジオンに任せた方が早いって……)
なんて思っている間に、12個の魔晶石は定位置に嵌め込まれていた。
12個全部が嵌め込まれた後、シアは最後のキーアイテムである扇を開いて、第9の水晶柱の中の魔法陣の上にそっと置いていた。
(ふぁ~あ……綺麗ねぇ~……
水晶柱がまるで、数多の花火を
咲かせて渦巻いているわ)
そんな感想を持っている間に、水晶柱そのものが虹色に変色した後、透き通った紫色に落ち着いていた。
(えっとぉ~…この色ってぇ……
共通の紫色ってコトで
あのシアが浄化した魔晶石を
入れてみたら良いのかな?
欲たけずに、謙虚に誠実にって
行動したら何か出現するかな?
シアのセリフじゃないけど
まず、やってみないとね)
そう思った私は、シアが水晶柱の中に置いた扇の上に、インベントリに仕舞っておいた紫色の魔晶石をソッと置いてみた。
その直後に、また、あの2人組のハモった声が響いた。
(なんか、一人称は僕と俺だけど
よぉ~く似ているから
この2人組って双子なのかなぁ?)
そんな感想を持つ私を余所に、楽しそうな響きを持った声が言う。
[[クスクス…正解ぁ~い
ジオンを解放した人って
凄いねぇ~………
ご褒美のお宝をきちんと
持って行ってねぇ~………
返品不可だよぉ~………]]
(えっとぉ~…返品不可ってなんですか?
いったい、何か出現するのでしょう?
不安しか感じないんですが………)
私は、その声の響き一抹の不安を覚えた。
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