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第14章 冒険者の始まりの街フォレンへ
192★禍々しい魔晶石を浄化したセイでしょうか?
しおりを挟む私は、魔晶石に対して、なんの執着も見せないでニコニコしているシアちゃんのコトが心配になる。
本当に、純真でまっさらなこころを持っている。
その姿から、かなりの不遇な目にあっていたコトが判るのに、歪みも淀みもない。
流石、第六の攻略対象者ジオンを捕まえて居るだけあるわね。
ただ、シアちゃんって恋愛に疎い感じだし………。
ジオンにいたっては………自覚あるのかしら?
はたから見ると、かなりジオンはシアちゃんを意識しているけど………それが、どういうモノかは、理解してなさそう………
あらあら、ガッちゃんの姿を心配して………。
って、でも、その気持ちわかるわぁ~…。
先に見ているから落ち着いていられるけどね。
初見(はつみ)には、ちょっと視野的にキツイよね。
っと、魔晶石が出来たようね。
うわぁ~流石に、ジオンにべったりと纏わりついた怨念が混じっているだけあるわぁ………。
ものすごいっ色あいだこと………。
でも、かなり大きいわ。
色はなんだけど、純粋な魔晶石。
そんな私の感想を余所に、シアちゃんは小首を傾げて魔晶石を見下ろして、私達に向かって聞いてくる。
「ねぇ? コレって魔晶石として
大きいの? 小さいの?」
そう言いながら、シアは警戒心も無く、禍々しい魔晶石を手にとり、手の平の上で何度か転がしてから、太陽に翳して愛らしく小首を傾げる。
思わず、無警戒でそういうモノを手にするんじゃありませんって注意しそうになる。
いや、流石にソレをいうのはちょっとアレかなぁ~と思って、寸前で思いとどまったけど、あとでやんわりと注意してあげよう………おもに、ジオンに………。
だって、シアちゃんにソレを言っても無駄そうなんだもん。
ここは一緒に行動する、ジオンとフリードに言わないと………。
じゃなくて、シアの質問に答えてあげましょう。
「かなり大きいわ
もしかしたらだけど………
腕輪の中で仮死状態の子を
1頭、完全に目醒めさせられるかも……」
その私の発言に、ガッちゃんとコウちゃんは互いを見詰めてから首を振って、コウちゃんが肩を竦めながら言う。
「ママぁ~…ゴメンねぇ~……
期待しているところ悪いんだけど
蘇生させて、覚醒させるコトは
出来るけど………
完全には程遠いんだ
だから、それでも足らないよ
本当に、残念だけどね………」
あらそうなの?こんなに大きいのに?まだ足らないの?
なんて思っていたら、ガッちゃんがすまなそうに付け足す。
「マスター…シアさんが手にした
魔晶石ぐらいのモノが2個あるなら
安全に蘇生し
覚醒させるコトはできます
だから次の兄弟を覚醒させるには
同じぐらいのモノを
せめてもうひとつ手にしてからが
良いと思います」
そう、1頭を、不安無く覚醒させるには、それぐらい必要なのね。
なるほどと頷く私の視線の先では、シアの手の中にある魔晶石が怪現象を起こしていた。
陽に翳された青黒と赤黒が混ざったような色合いの禍々しい魔晶石は、シアの手の中でもやもやしたモノを揺らめかせていた。
「えっとぉ~…コレって何?」
私は、シアの言葉にハッとする。
もちろん、シアを無意識のまま大事に思っているらしいジオンも、瞬時に正気に戻り、魔晶石をその手から取り上げようとしていた。
私も、それが正しいと思い、無意識に頷いて居た…そこに………。
「嘘っ…浄化されてる……
シアさんて、もしかして聖女?」
ジオンに絡みついた呪力を伴った魔力で、魔晶石を生成したガッちゃんの言葉に、私はエッと思ってしまう。
当然、シアも聖女と言われて驚く。
いや、それが当然の反応よね。
「聖女ぉ? って、私が?
ないない、それは無いわ
国の為に殉教も出来なかったし
私は自由に生きたいから
これ幸いで、逃げたんだし
そんだけの徳があるなら
こんな風に跳ばされないって………
きっと陽の力よ
太陽は陽力で光で聖だから
月は陰力で闇で魔だから
できれば、月光にも晒した方が
良いかも知れないわね
陰陽のバランスがとれている方が
自然で良いだろうし
でも、浄化されたんなら………
はい、ライム
欲しいって言っていたでしょ」
シアは魔晶石を握っていない方の片手をパタパタと振って、私の手に綺麗に浄化されて紫色に変化した魔晶石をひょいっと手渡たしてくれた。
「良いの?」
「良いの、良いの
そういうモノは必要な人のところに
あるべきなんだから………」
手の中にズッシリとおさまった、紫色の魔晶石から感じる穏やかで安定したやすらぎすら覚える波動に、ほぉ~っと無意識の溜息が零れおちた。
次の瞬間、空間が大きく震えて、グニャリという擬音が入りそうな空間の撓(たわ)みを感じた。
その瞬間、ジオンが鋭く指示を出す………そんなところは、流石ね。
しかも、その時には、しっかりとシアを片腕抱きしているし………。
「不味いっ…あの神殿に走れっ
まがりなりにも、神聖な神殿だっ
何か禍々しいモノが出現するっ」
私達へと無意識の指示を飛ばした次の瞬間には、シアを抱えて走るなんて、合格ですね。
フリードも走っているし、コウちゃんとガッちゃんは肩に戻ってきている。
もちろん、私だってもうダッシュする。
たった数メートル先の神殿の扉が、とても遠く感じられた。
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