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第14章 冒険者の始まりの街フォレンへ

191★魔晶石を手に入れる為には‥‥‥

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 ガッちゃんてば、すっごいわぁ~‥‥‥物質化した呪文の鎖がどんどん無くなっていくわ。
 でも、この呪文の鎖ってば、アレみたくバラバラになって落ちるっていうのは無いのね。

 《封印》した者達の、ジオンに対する執念を感じるわね。
 ううん、これは執念よりも濃いモノ‥‥‥そうね、いっそ怨念って言った方が良いようなモノかもしれない。
 それぐらい、ジオンに対して、恐れと同時に妬(ねた)んでいたコトがわかるわ。

 だって、物質化してガッちゃんにガリガリと食べられているのに、それでもジオンを縛ろうと足掻いているように見えるもの‥‥‥。
 この世界に居るなら、きっとガッちゃんに食べられているコトを感じるでしょうね‥‥‥まぁ、居ればだけど‥‥‥。

 なんか、跳び出した女神のコトを追い駆けて行っちゃったんじゃないかな?って思うのよねぇ‥‥‥。
 だいたい、何で女神の愛しい子である《神子》をわざわざ狂わせた上に、解体する必要があったのかしらね‥‥‥。

 まぁ、謎は謎のままで構わないけど‥‥‥どんだけ魔力を込めて、呪縛の呪文をジオンにかけたのよ。
 ガッちゃんが必死に食べ続けているなんて‥‥‥。
 あの恐竜もどき達なんて、ちゅるんっだったのに‥‥‥それを考えると、込められている魔力は半端ないわよね。

 ガッちゃんが、咀嚼して食べなきゃならないほど、濃厚な魔力の塊なんだもの。
 いったいどのぐらいの魔晶石が出来るのかしら?

 ガッちゃん自身が食べた恐竜もどき達の魔力の塊に、同じように食べたコウちゃんの魔力、そして私が掻き集めた魔力で、ウズラの卵ぐらいの魔晶石が出来たけど‥‥‥。
 
 そんなコトを考えている間に、ようやくガッちゃんは、ジオンの全身を拘束していた物質化した、呪文だったモノを食べ終えていた。
 取り込んだ魔力が膨大だっていうコトが、ガッちゃんの姿でわかるわね。

 もう、なんて言ったら良いんでしょうねぇ~‥‥‥もふもふでもこもこになって‥‥‥。
 さっきの大きさから考えたら‥‥‥ミニュチアの猫バスかしら?
 出来上がる魔晶石の大きさ、期待できるわね‥‥‥なんて思っていたら、シアちゃんが‥‥‥。


 「ライム、ガッちゃん大丈夫かな?
  なんか、言葉に出来ないほど
  もの凄い状態になっちゃってるけど‥‥‥」

 まぁ‥確かに、初めて見るガッちゃんの姿の変容は、インパクトあるモノねぇ‥‥‥私もコレが初めてだったら不安になったわ。
 じゃなくって、思い切って魔晶石を譲ってって言わないとね。

 「シアもそんなに心配しなくても
  ガッちゃんは、大丈夫よ

  じきに、今食べるコトで取り込んだ
  魔力を魔晶石にしちゃうから‥‥‥

  と、そうだ、言い忘れていたんだけど‥‥‥」

 ちょっとだけ、魔晶石を譲ってと言うのを躊躇う私の側では、ジオンを呪縛をしていた、物質化した呪文を食べ終えて、ご機嫌で身繕いしているガッちゃんがいる。
 はぁ~‥癒されるわぁ~‥‥‥じゃない、頑張れ私。

 「ジオンの声や身体を拘束していた
  呪文から出来上がる魔晶石を
  私に譲ってくれないかしら?

  もちろん、タダでじゃないわよ
  物々交換でね

  シアってば、男装しているだけで
  防具すら身に着けて無いから‥‥‥

  天使シリーズ一式ね、もちろん
  その上位の女神シリーズもあるわよ

  ジオンは、神魔シリーズしかないでしょ
  フリード君は何がいいかなぁ?
  同じく、神魔シリーズを装備させちゃう?」

 畳み込むように言えば、そのシリーズがこの世界では、けっこう手に入れずらいモノであるコトを知っているシアちゃんの表情が動く。
 同時に、両肩に手を置いたままだったジオンが動いて言う。

 「なぁ‥その神魔シリーズって
  なんだ?」

 お父様にもお兄様にも似ていないけど、メッチャ腰に響く低い声に、流石の私もビックリしちゃうわ。
 ジオンってこんな声していたんだぁ‥‥‥って、前世での声優さんって誰だったっけ?記憶に無いんだけど‥‥‥。
 ただ、正統派じゃなくて、悪役系の声よねぇ~‥コレって‥‥‥じゃない、逃避するな、私。

 「うわぁ~‥凄いイケボ‥‥」

 私の中の葛藤を他所に、シアちゃんは純粋に思ったままを口にしている。
 ここは、私もそう思うから同意ね。
 昔の少女マンガにあったわよねぇ~‥‥‥たしか、メッチャ良い声の男性で‥‥‥尾骶骨直下型とか言うの。

 「うん‥私もそう思うわ‥‥
  こういう声を尾骶骨直下型
  っていうのね、きっと」

 さて、ジオンは、この世界生まれなのかしら?
 なんか、違うような気がするのよねぇ‥‥‥私やシアちゃんみたいに、高次元の生まれよね、きっと。
 ただし、私達は転生だけど、ジオンはそのまま降りてきたって感じよね。

 まぁ、それでも長い間《封印》されていたんだから、この世界の常識も知識も無いと思う。
 当然、乙女ゲームのレイパレなんて知るはずはないわね。
 説明はシアちゃんに丸投げしちゃえ、私は魔晶石が欲しい。

 「ジオンは《封印》されていたから
  現在の状況なんてモノ
  ほとんどわからないでしょ

  私が言ったのは防具の話しよ
  詳しくは、シアに後で聞いて‥‥‥

  って、コトで出来上がった魔晶石を
  私に譲ってくれない?」

 さて、シアちゃんは頷いて‥‥‥。

 「うん、良いよ、出来た魔晶石は
  ライムに上げるよ

  つーか、それってライムの損じゃない?
  天使シリーズに女神シリーズで
  ジオンやフリードに神魔シリーズって‥‥‥」

 シアちゃん、ほんとぉーに交渉ごととか向いてないわ。
 自分に有利になるように‥‥‥なんて、全然考えてないわね。
 マジで心配だわ‥‥‥だからって、一緒になんて行動出来ないし‥‥‥。

 ジオンが側にいたって、この世界の常識なんて無いんだもん、不安を感じるわ。
 いくらフリード君がいたって、この子も同じように《封印》されていたんだし‥‥‥。
 なんて思っている私を知らないシアちゃんは、にっこり笑って言ってくれるんだから、良心が痛くなっちゃうわ。
 ここは誠心誠意、私に損はないし、切実に欲しいってコトは言っておこう。

 「ううん、損じゃないよ
  私達は、切に魔晶石が欲しいのよ」

 ああそうだ、シアちゃんになんで魔晶石が欲しいか言っておこう。
 あとで、また逢うコトもあるかもしれないもの‥‥‥その時、シアちゃんが魔晶石を持っていたら、ねだりたいしね。

 「コウちゃんとガッちゃんの他にね
  まだ、この腕輪の中に、仮死状態で
  蘇生されるのを待っている子がいるの

  この中に入っている間は
  死ぬことは無いけど‥‥‥

  このまま、自然に目覚めるのを待つと
  軽く20年ぐらいは目覚めないって‥‥‥

  だから、濃縮された魔力の魔晶石を
  与えて目覚めさせたいのよ」

 ジオンやフリード君が付いているんだし、神魔シリーズ着せる予定だしねぇ‥‥‥。
 シアちゃんには、まず天使シリーズを着せて、着こなせるようになったら上位ランクの女神シリーズ着てねって手渡す予定しているから‥‥‥。

 きっと、すぐに冒険するはずだもの‥‥‥。
 なんか、シアちゃんて、あんなに細いのに、行動力ありそうだもん。
 きっと、魔晶石を手に入れるに決まっている。
 








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