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第11章 訓練開始
164★入浴は夫(または、婚約者)と、一緒に入るもの? おまけ編
しおりを挟むエリカのきっぱりとした断罪に、アルファードは嬉しそうに笑う。
「そうだな
皇帝は寵愛の聖女様だけがいれば
それで良かったんだ
逃げた側妃達は、後宮から出て行ってくれて
ありがとうと思っていただけだったんだ
もう、どうでも良かったから
そして、寵愛の聖女様が慈愛をもって
育ててくれていた姫達を、皇帝は
他国の王家にさっさと与えてしまったんだ
自分を裏切った側妃の血を引く者に
皇位継承権が発生しなくても
皇族として尊ばれるのはむかつくから
寵愛の聖女様は反対したんだけど
幼いうちに、相手の国で育つ方が
ドラゴニア帝国の影響を受けないから
相手の国も助かるんだと言って
寵愛の聖女様と婚姻する前に
すべての姫を乳母や守り役を付けて
他国に送ってしまったんだ
もっとも、送っておいて良かったんだ
母である側妃やその父や祖父
一族郎党と一緒に処分されないすんだから」
アルファードのセリフに、一蓮托生や連座という言葉が脳裏に浮かび上がり、それでも、ソレは幼くして母親に捨てられた娘達への、皇帝からの愛情だったのかなと思った。
「側妃の実家はすべて処分されたの?」
確認するように言うエリカに、アルファードはちょっと人の悪い、そう、皇帝になる者としての表情で言う。
「ああ、寄り親として事件を起こしたから
それに、寄り子達も関わってくれたから
皇室の直轄地が大量に増えて
貴族達の《力》を削ぐことが出来たしな
皇家としては、本当に馬鹿な側妃と実家で
助かったと嗤っていたんだ」
最上位の地位に着く以上、綺麗ごとばかりではやっていけないということを理解し、実行できる強い精神を、アルファードもまた持っていることをエリカも理解した。
だから、疑問に思うことを聞く。
アルファードが自分に嘘を言うとは思っていないから……。
「側妃達は、娼館で生涯が終わったって
言ったけど……その……
子供が生まれたりしなかったの?」
エリカの質問に、あまり答えたくない(女性にとっては酷いことだから、エリカに嫌われたくないから言いたくない)という表情で、淡々と答える。
「勿論、子供は生まれなかった
なぜなら、身分を剥奪する時に
子供を孕めぬように、薬と魔法で
処分していたから……
寵愛の聖女様が嫌がったから
奴隷に落として他国に売り払うという
処分はされなかったんだ
女は娼婦に、男は騎士団で魔物討伐の
最前線に立たせたり、下働きや鉱山の
鉱夫にしたり、身体が利かない者達は
薬の実験体として使われたんだ
ただし、休みの日もあったし、小額でも
給料は出ていた
娼婦に落とされた女達も、客が
付かなくなったら、下働きになり
身体が下働きも出来なくなったら
薬の実験体になった
でも、休日と給料はあったんだ
それに、貴族としての記憶を
寵愛の聖女様は消したんだ
哀れだからって、普通の犯罪者としての
記憶を植えつけて、罪の償いをさせたんだ
だから、我がドラゴニア帝国での刑罰では
貴族の地位を剥奪される罪を犯した者達は
その地位にあったという記憶を消されるんだ
そして、平民としての記憶を植え付けるんだ
寵愛の聖女様の
『罪を憎んで人を怨まず』
っていう、言葉に従ってね」
「うっわぁー寵愛の聖女様って
本当に優しい人だったのね
皇帝陛下が溺愛するのは
当然だって思うわ
それに、皇帝陛下って、我が子は
可愛いと思っていたのね
側妃達が馬鹿やった時に、その娘に累が
及ばないように国外に出していたんだから
っていうのは…置いておいて、私は
自分のぽにょな体型をアルに見せたくないから
一緒にお風呂に入りたくないんだけど」
「ダメだ。俺と一緒に入るんだ
エリカの髪は、水を含むとめちゃくちゃ
重たくなるんだから、1人で入るのは危険だ
だから、俺が洗ってやるよ
それに、エリカの身体は、どこもかしこも
ふわふわで、柔らかくて触り心地が良くって
肌の感触もたまらないんだ
それを味わったあとで、1人でむなしく
風呂に入るのは嫌だ
どうせもう一緒に入ったんだから
諦めような、エリカ」
言っている内容は爽やかと言い切れないのに、アルファードの表情は爽やかで綺麗で眩しかった。
そして、アルファードの言うコトも確かだと思ってしまうエリカは、立派に騙されていたりする。
まっ、それがしあわせなんだからとも言える。
〔うっ確かに、もう、全部、隅々までアルに
見られて、触られて、洗われたんだから
今更、拒否しても意味は無いよね
それに、アルにはいやらしさが無いから
気にしないように我慢するしか無いかな?
どうせ結婚するんだから、諦めるしかないよね
ラノベのように、綺麗な貴族出身の侍女や
女官に入浴の世話をされるのを考えれば
アルとお風呂に入っていた方が
よっぽどマシだわ
綺麗な貴族のお姫様達って、絶対にエリカを
ブスとかデブとか、アルに不釣合いな
デブスって言うに決まってるもんね
そんな集団に、エリカの生の体型を
言いふらされる可能性がガッツリある
侍女や女官に手伝われてお風呂に
入るなんて、絶対に嫌だわ
寵愛の聖女様のお世話を、自分以外に
させなかった皇帝陛下ありがとう
貴方のお陰で、私はアル以外に入浴姿を
見られなくてすむんだもん〕
エリカは、羞恥心を捨てて、侍女達や女官達や貴族の姫達の悪意の有る態度や言葉を聞かないですむ方法を選んだ。
だから、自分を愛して守ってくれるアルファードに向かって、エリカはにっこり笑って言う。
「わかったわ
これからも一緒にお風呂に入るわ
だから、髪を洗ってね、私じゃ直ぐに
疲れて嫌になっちゃうから……」
愛しいエリカに一緒にお風呂に入って欲しいと言われてアルファードは花の顔(はなのかんばせ)に極上の微笑みを浮かべる。
「うん、一緒に入ろうな」
こうして、エリカは、アルファードの婚約者としての習慣を1つ受け入れたのだった。
◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆
いやー思ったより伸びてしまいました。
ちょっと寵愛の聖女様のことを入れると、何故か伸びる(汗)
現在、寵愛の聖女を一人称で書こうと練り直しております。
そして、インフルの猛威のセイで、いまだに復調しきらず体調不良の身体を引き摺って、ミニヤギやニワトリにネコにウサギのお世話をしています。
その合間に、聖女以外の話しを幾つか思いついて作っているのですが、恋愛やファンタジーに入るのかな?という内容のモノなので、大衆娯楽にでも入れようかと思っています。
いっそ、エントリーする?とか言いながら……。
まぁ、本当に出せるかは未定ですが、できるだけ毎日更新を目指してかんばります。
ここまで読んでいただきまして、ありがとうございます。
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