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第10章 緑の魔の森にて

146★幻のサンタマドラーヌを採取しました

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 サンタマドラーヌを、どのように処理して薬にするかというコトに、興味が移ったエリカは、その方法を知っているらしいオスカーに質問する。

 「オスカーさん
 これは、このままの状態で運ぶんですか?」

 動きを完全に停止させたサンタマドラーヌを見ながらのエリカの質問に、オスカーは首を振って答える。

 「いいえ、このままの状態だと
 また何かの拍子に、活動し始める
 かもしれませんので、水魔法で
 水分を取り除いてから運びます」

 「そうなんですかぁ~」

 エリカの質問に答えたオスカーは、さっさと魔法を使ってサンタマドラーヌを乾燥させると《魔倉庫》にしまった。
 それを見ていたエリカに、アルファードが《魔倉庫》から出した洋服を手に話し掛ける。

 「エリカ、俺の騎士服に着替えるか?」

 アルファードの好意をエリカは素直に受け取ることにした。
 にっこり笑って、手をアルファードに向かって伸ばしながら言う。

 「ありがとう、アル」

 お礼を言って、騎士服を受け取ったエリカに、アルファードは話し掛ける。

 「ここに、簡易テントを張るから
 そこで着替えると良いぞ」

 自分の羞恥心を理解して言うアルファードに、エリカはにこにこと笑ってお礼を言う。

 「ありがとう、アル。すっごく嬉しい」

 笑っているエリカに、何時の間にか用意した暖かい紅茶を差し出すのは、オスカーだった。
 
 「姫君、紅茶をどうぞ
 お1人だったので、不安と恐怖で
 かなり叫んだと思いますので
 ハチミツを入れておきましたから」

 「ありがとうございます、オスカーさん
 とても喉が渇いていたから、嬉しいです」

 エリカはにっこり笑って紅茶を受け取り、クイィーッと飲み干した。
 それを確認してから、オスカーはアルファードにも紅茶を差し出す。

 「はい、団長には
 落ち着くようにという意味を込めて
 ハチミツとミルクを入れておきましたので」

 「ありがとう」

 差し出された紅茶をアルファードは、頷いて受け取るとボソッとお礼を言うとクイッと飲み干した。
 そんな3人に生暖かい視線を向けてから、オスカーの側近ジャスティが指示を出す。
 
 「この洞窟の調査を始める
 各自、担当の部分を調べろ」

 「「「「「「「「「「はい」」」」」」」」」」」
 
 騎士としての礼をとると、一声に動き出す。

 警備を担当する者達が周囲を警戒する。
 その中で、洞窟の大きさを調べる者達は、高さ、幅、奥行きなどを数箇所にわたって調べ始めていた。
 勿論、温度や湿度、小川の水量や水深や温度、その中にいる魚などの捕獲、植物の採取など洞窟内の様子をスケッチするなどもしていた。

 他には、洞窟内に生えている植物を採取する者達や、植物を1つづつ丁寧にスケッチする者達がいた。
 その採取には、当然、壁の光り苔や洞窟内に咲き乱れる花々が含まれていた。

 ジャスティーの指示のもと、それぞれが、幻のサンタマドラーヌが育った環境などを含めた色々な事柄を調べていたのだ。
 そんな騎士達の様子を、エリカは驚いて見ていた。

 〔うっわぁー…なんかこうして見ていると
 学術研究って感じがするわねぇ

 魔法騎士団の騎士達って、ラノベ定番の
 脳筋集団じゃないんだぁ~……

 っていうか、魔法を使う時点で、脳筋の
 はずが無いか

 最前線で戦って、そのついでに調べる
 って感じなんだなぁ

 これなら、戦闘後に1度戻ってから
 わざわざ学術調査探検隊を編成して出す
 必要が無いから、2度手間にならないわね

 その上で、時間経過による環境変化も無く
 鮮度の良い状態で調べられるもんね

 いやぁー…本当に、魔法騎士団って
 エリート集団なんだぁ~……〕

 興味津々という表情で動きまわる騎士達を見ているエリカに、アルファードが意識して柔らかい声音で話し掛ける。

 「エリカ、テントを張ったから
 着替えた方がイイぞ

 幻のサンタマドラーヌを、緑の魔の森で
 採取できるとは思わなかったからな
 調査には、それなりに時間もかかるから

 その間、少し休んだほうが良いぞ、エリカ
 勿論、毛布やクッションも用意してあるから
 何ならすぐに休むか?

 それとも、シャワーでも浴びるか?
 あの紫のツタに絡まれて気持ち悪かっただろう
 なんなら、風呂にゆったりと入るか?
 どれもできるぞ」

 アルファードの思い遣りの溢れた優しい提案に、エリカは満面の笑みで答える。
 〔うわぁ~…すっごく、嬉しいぃ~…
 触手に痺れる毒や媚薬を塗りつけられて
 ベタベタにされたから…………
 シャワーを浴びたかったんだよね

 でも、お風呂に入れるなら入りたい
 勿論、髪も洗いたいなぁ~…………〕
 
 「ありがとう、アル
 お風呂に入って、髪を洗いたい
 そしたら、少し疲れたから
 ちょっと眠りたいな、良いかな?」






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