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第10章 緑の魔の森にて
142★やっぱり、余裕は無いままです
しおりを挟むエリカは、洞窟という環境の中で咲き誇る花々を見て、小首を傾げる。
〔この洞窟はとても広くて
綺麗な花が色々と咲いているし
身体が洗えそうな小川もあるけど……
流石に、洋服になるような綿とか糸とかは
無いわよねぇ~……やっぱり……
はぁ~…今のエリカの格好って
どこのエロゲーのヒロインって感じだから
まぁ裸じゃ無いだけマシって言っても
やっぱり、こんな格好は恥ずかしいのよねぇ…
いや、マジでこういうのは精神的にキツイわ〕
1人で頬を紅く染めてエリカは、人差し指を頬に当てながら考え込む。
首を傾げたお陰でエリカは、首に巻いていたスカーフの存在を思い出す。
騎士服の襟元が、詰襟状態だったので、エリカは青いスカーフをなんとなく巻いていたのだった。
〔あぁ良かった…そうよ、スカーフが
あったじゃない、これを何枚か魔法で
コピーして洋服にしてしまえば良いわ
たとえ薄いスカーフでも、二重にすれば
なんとなるでしょう
こんな下着姿より、よっぽどマシよ〕
なんとか、下着姿から脱することができると思ったエリカの気分が上昇する。
そして、エリカは嬉しそうに笑って、首からスカーフを取り魔法を唱える。
「無属性魔法で、スカーフをコピーする」
するとエリカは自分の身体から《魔力》が抜けるのを感じた。
と同時に、エリカの目の前にスカーフの束がフワリッと現われた。
それを見てにっこり笑うエリカは、途中ではっとする。
〔いやだわ、私ってば、針も糸も
無いってこと忘れていたわ
しょうがないわね
ここは、スカーフ同士をキュッと結んで
それらしい格好になれば……って
いやいや、そんな格好は流石に恥ずかしいわ
流石に、結んだだけじゃイヤだなぁ…はぁ~
う~ん、針と糸の代わりになるモノって?〕
エリカは、コピーしたスカーフを手に、考え込んでしまう。
そんな姿を見て、アルファードは声をかけることも出来ずにいた。
なぜなら、鼻と口元を押さえたまま、波打つ鼓動と下腹に自然と集まって行く熱気に惑乱されて動けなかったから…………。
所詮は、健全な恋する男の子のアルファードであった。
そんなアルファードを、オスカーは微笑ましく見ているだけで、一切の手助けはしない。
勿論、周囲への警戒も怠らずに、現在の状態を打開しようとする、エリカの姿も、黙って見ていた。
コピーしたスカーフを片手に悩んでいたエリカは、行動しなくては始まらないと、とりあえず、花々の近くによって行く。
そう、何か今の自分に役に立つモノは無いかと…………。
「う~ん、こうして綺麗に咲いている花に
近寄っても、見た感じからして、糸や針に
なりそうなモノは無いよねぇ」
危険が無さそうな花々をつっつきながら、エリカは苦悩していた。
そして、無意識に結われている髪に手をかける。
そう、イライラして頭をかこうとしたらしい。
が、そのお陰でエリカはあることを思いつく。
〔あっ…そうだわ……糸が無いなら
私の髪の毛を使えば良いじゃない
硬化魔法で髪の先端を固くして
針と糸の代わりにして縫えば良いんだわ
良し、やってみよう
アル達が助けに来る前に、なんとしても
身体を覆えるモノを作りあげなきゃね〕
ようやく活路を見出したエリカは、慎重に自分の髪の毛を何本か抜いた。
その長い髪の毛を握って、先端に硬化魔法を唱える。
「無属性魔法にて
髪の先端を鉄と同じ固さにせよ
無属性魔法にて、針として動け」
エリカが魔法を詠唱すると、スカーフと髪の毛が中に浮く。
すると、針がエリカのイメージによって動き出す、スカーフを四枚重ねにしてチクチクと縫っていき筒状の者を作り上げた。
そこまで大きなスカーフでは無かったので、同じ物を2回作った。
その二枚を重ねて、ワンピースのストンとした胸と胴とスカート部分に当たる長さになった。
スカーフを2つに切って、畳んで肩部分をして使うことにし、先に作った部分に縫い付けたのだった。
スカーフを再度、2つに切って、ざっくりと端と端を縫い合わせて袖にして、肩部分に縫いつけた。
ざっと作ったワンピースもどきをエリカは、頭から被って着た。
〔なんとかワンピースに見えるかな?
下着が見えなきゃOKって感じね
残ったスカーフを、ショールとサッシュに
してしまえばなんとかなるよね
こっちでは、脚を見せないってファッション
らしいけど、緊急避難だから良いよね〕
エリカは、ストンとしたワンピースもどきを着た自分の姿を見聞する。
そんなエリカを見て、健全な男の子のアルファードは、ちょっと残念と思ってしまっていたのは確かな事実だった。
そして、オスカーはというと、エリカの発想力と行動力に感心していた。
そう、どんな状況下にあっても、最善を探して掴み取るという、上に立つ者に必要な精神力と、強く創造性のある魔法を行使するエリカを、是非、アルファード(真の皇太子)の正妃(皇妃)にと思うのだった。
近くまで、アルファードとオスカーが到着していることに気付く余裕の無いエリカは、自分のワンピースもどきの姿に頷いてから、頬に手をあてて考える。
〔今度からは《魔倉庫》を鞍に括ったりしないで
ウエストポーチの中に入れるか
そうじゃなかったら、簡易版の《魔倉庫》を
ウェストポーチの中に組み込んで
何時でも、着替えを用意するってした方が
イイよね……いざっていう時も考えないと〕
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