上 下
118 / 450
第9章 魔法騎士団本部にて

112★言いたいけど、言って良いか判らない

しおりを挟む


 そう、聖女候補達見解はおおむねは間違ってはいないのだ、が…………。

 「(ねーギデオン、聖女候補達の見解
 訂正してあげたほうが良いかな?)」

 「(う~ん…下手に俺達がソレを言うのは
 ちょっと不味い気もしないでもないが……」

 「(でも、聖女と認定されたら…っていうか
 まず間違いなく、全員認定されると思う)」

 「(うん、性質的に性女はいなさそうだし
 魔女もいなそうだから…………)」

 「(聖女には、側室や愛妾って立場は無い
 このドラゴニア帝国だけじゃなく
 周辺諸国でも、決まりごととして……)」

 「(聖女には、正妃や正室、正妻と呼ばれる
 地位しか無いって…………)」

 「(きっと、兄上かオスカー副団長が言って
 くれるとよ……ってことで、俺達は黙って
 聖女候補達の会話に耳を傾けていれば良いさ)」

 「(そうだね、きっと訂正してくれるよね)」

 などと言う、視線での会話をしている間も、聖女候補の6人は楽しそうにお喋りしていた。

 「…………そういうことよ……
 それに、この国の貴族ってば…
 基本が、ドラゴニアンの系譜を引く者達に
 大半が獣人じゃない……」

 牡丹の言いたいことをさとった撫子が、あぁ~という表情になってから言う。

 「うわぁ~……マジですか?
 それって、絶倫の代名詞でしょう?
 ドラコニアンも獣人も…………」

 撫子の言葉に、ようやく唯1人の妻という地位がどう言うモノかという、内容を理解した蘭が、盛大な溜め息混じりに言う。

 「うえぇぇ~…そんな絶倫の旦那様を
 1人で面倒みるのは、ちょっと…いや…
 かなり勘弁して欲しいわ
 確かに、側室や愛妾のが良いね」

 納得した蘭に、桔梗が肩を竦めながら言う。

 「でしょぉ~…………
 それを考えると、エリカちゃんってば
 凄いよね」

 百合もその意味に気付いて、うんうんと頷く。

 「うん、皇太子と結婚するんでしょ……
 義務と責任が半端ないよね」

 その地位が意味するモノをおぼろげながら、完全に理解した鈴蘭が溜め息を吐いて言う。

 「だよねぇ~……子供も、男の子を
 絶対に生まなきゃいけないんでしょう」

 そこを、撫子がまとめ的な結論をひと言で言う。

 「これはもう、愛だね」

 撫子の言葉に、牡丹もうふふふと言う表情で言う。

 「エリカちゃんってば
 皇子様を愛しているんだよ
 義務も責任も一緒に引き受けたいと思う程」

 その言葉に、百合が身をくねらせるようにして言う。

 「いや~ん乙ゲーみたい」

 まさしく、今の状況を表現するに相応しい言葉に、鈴蘭が小首を傾げてから言う。

 「うん、乙ゲーだよねぇ~……
 それも、完全なる正統派というか
 王道の皇太子様の攻略だよね
 それじゃ、私達はモブキャラかな?」

 メインのヒロインに華を添える、モブキャラは必然でしょう的な言葉に、桔梗も頷きながら言う。

 「サポートキャラかも?」

 桔梗の言葉を聞いて、鈴蘭が聞く。

 「私達が、エリカちゃんの敵になることは
 絶対に無いから、サポートキャラよね
 じゃあ、悪役令嬢は?」

 その疑問に、クスクスと笑って牡丹が当然のように言う。

 「そんなの決まってるでしょう」

 牡丹のセリフの後を、撫子が当然ように続けて言う。

 「皇族のお姫様に、大公令嬢、公爵令嬢
 侯爵令嬢、辺境伯爵令嬢、伯爵令嬢って
 辺りが出て来るんじゃないのかなぁ」

 撫子の後を、桔梗が続ける。

 「そうすると、私達聖女候補が、皇子様とか
 公爵の後継、侯爵の後継、辺境伯爵の後継
 伯爵の後継とか?」

 蘭ものれる話題なので、思い付くモノを上げる。

 「騎士団の団長、副団長、将軍とか
 その息子達?」

 鈴蘭も、小首を傾げて上げてみる。

 「宰相の息子とか大臣の息子とか
 神官の息子とか?」

 そこへ至ったところで、百合が突っ込む。

 「あれ? それって、まんま私達も
 そうなるんじゃないの?」

 途端に、牡丹が嫌そうな表情で言う。

 「うぇー面倒くさいわね」

 その気持ちに同感と思いつつ、撫子は現実を直視し、自分にとって最良の状態を獲得する為に、口に出してみる。

 「でも、聖女候補で《召還》されたから
 独身でいれるとは思わないしね」

 現実問題として、その事実があるので、本人達は真剣に会話していた。
 その様子を、ギデオンとレギオンと騎士達が黙って生温い視線で見ていた。
 勿論、書類を作成しているオスカーとマクルーファの副団長コンビと、作られた書類を確認する団長のアルファードは、エリカの様子を気にしていた。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

召喚されたのに、スルーされた私

ブラックベリィ
恋愛
6人の皇子様の花嫁候補として、召喚されたようなんですけど………。 地味で影が薄い私はスルーされてしまいました。 ちなみに、召喚されたのは3人。 2人は美少女な女子高生。1人は、はい、地味な私です。 ちなみに、2人は1つ上で、私はこの春に女子高生になる予定………。 春休みは、残念異世界への入り口でした。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。

断罪されたので、私の過去を皆様に追体験していただきましょうか。

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢が真実を白日の下に晒す最高の機会を得たお話。 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

処理中です...