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第8章 エリカは聖女候補達と一緒に学校に通いたい

098★エリカのお強請りに、アルファードは思考に落ち込む

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 アルファードは、副団長であるマクルーファや、腹違いの弟、ギデオンとレギオンを伴なって、魔の森から湧き出す魔物討伐から帰って来る間に、その程度(聖女候補の説得)の仕事もせずにいた者達をどう処罰してやろうかと思う。

 そんなアルファードを見上げ、エリカはほえぇ~と見惚れる。

 〔ふわぁ~…怒ったアルってカッコイイ…
 よく、美人が怒ると綺麗っていう人がいるけど
 美少年でもソレは確かだわぁ~……

 怒られる人には、余計に怖いだろうけど
 お仕事をサボったんだから、自業自得よね〕

 そう思いつつも、エリカは自分と他の聖女候補達との立場の違いというモノを実感する。

 〔私が情報をアル達から多くもらえたのは
 異世界から持って来た食べ物を迷わず
 提供したことも影響しているのかな?

 エリカは、ブスでぽっちゃりだけど
 アル達にはそういう美醜ってあまり
 関係ないのかな?

 こんなにタイプ別の美人から可愛い子が
 目の前に居るのに、誰もそういう視線
 していないんだよねぇ………〕

 そんなコトをエリカが考えていると、百合はポツリと呟くように言う。

 「……でも、ここってすごく安心できる
 誰も、妙な視線で私達を見ないから………」

 その本心からのセリフに、残りの5人もコクコクと頷く。

 「本当だよねぇ……」

 「うん…あの…纏わり付くような……」

 「ねっとりとした感じの視線が無いって……」

 「「「ほっとできるよねぇ~……」」」

 そんな、ごく普通のガールズトークが出来そうな雰囲気に、エリカもウズウズする。

 〔この異世界で、日本人の女子高生は
 ここにいる私達7人以外に存在しない

 まだ、所属した騎士団の人達と交流が
 足りなくて不安そうだけど

 アルが率いる魔法騎士団が上から
 きっちりと監視してくれるはずだから
 彼女達に危険が及ぶ心配は少ない

 それに、騎士様達って基本的に姿形が
 綺麗な人達ばかりだから………
 慣れれば、そんなに気にならないと思うし

 これから、色々と忙しくなるから、私を
 標的にしてイジメたりしないはず

 っていうか、そんな余裕ないよね
 いや、私もだけどさ

 だって、色々と頑張って護身術から
 魔法まで覚えることいっぱいだから

 それに、私が、あの大和の妹だって
 知ってる人もここには居ない

 そう、私の存在を拒否するお母さんも
 お姉ちゃんもここには居ないんだから

 …ここなら…同年代の女の子の友達が
 出来るはず…たぶん…きっと………

 だから、女の子のお友達と同じ学校に
 通って学ぶ…っていうのもやってみたい

 ごめんなさい、アル
 エリカ、そういうのもやってみたいから
 我が儘言います〕

 心の中で、そう謝りつつ、エリカは自分をいまだに抱きこんで放さないアルを見上げて言う。

 「アルぅ~…話しが反れたけど………
 エリカ、聖女候補のみんなと一緒に
 その魔法学校に行って学びたいな

 この国の歴史とか常識とか
 色々と一般教養を知りたいの………

 ねっ…アル…エリカと一緒に
 魔法学園に、通って欲しいの………
 ねっ…お願い…アル」

 エリカは、心の中でちょっとあざといかな?と思いつつも、何時も自分に甘いパパとお兄ちゃんにお強請りする時の口調と態度で、アルに一生懸命強請る。
 腕の中から自分を見上げて訴える、そのエリカの可愛いお強請りに、アルファードはクラクラしてしまう。

 がしかし、ここでそのお強請りに負けて、勝手にエリカの願いを叶えて、オスカーを怒らせると困ったことになるのだ。
 そう、後々祟るというコトを身を持って知っているので…………。

 〔あうぅっ……可愛いエリカのお願いは
 何でも全部叶えてあげたい…けど………
 流石に、無理だよなぁ…仕事あるし…〕

 下手なコトを言って、エリカとの時間を減らしたくないのだ。
 こんなにも、離れがたいと思う唯一無二の相手との時間を、部下の訓練や事務処理に費やすように、オスカーに仕向けられるのは避けたいのだ。

 なんと言っても、限界を超えるような怒らせ方をすると、オスカーやマクルーファのガード無しで、パーティーに強制参加させられてしまうからだ。
 いや、実際には、手が離せないことも多々あって、欠席できないモノだからと送り出されていたのが真相なのだが…………。

 後から、その理由を知ったとしても、アルファードには、怒らせた罰だとしか思えなかった。

 そして、ガードなしでパーティーなど出席すると、見かけが美少年なアルファードは、自分より確実に大柄な、肉食系女子の貴族の姫君達に絡まれるのだ。

 その上で《魔力量》の有り過ぎる自分を、以前は蛇蝎のごとく毛嫌いしていた貴族の姫君達が、愛想笑いを浮かべて腕を絡めにやって来るのだから……。

 そう、魔法騎士団の団長という、武の最高位にいる自分の隣りの席に座ろうという野心を隠しもせずに、踊って欲しいとか、遠乗りに行きたいとか、帝都の店に一緒に行きましょうなどと言いながら、愛想笑いを浮かべて強請りにくるのだ。

 それでも、第1皇子という地位の為に、どんなにムカムカしても、姫君達の相手を、礼を逸しない程度にしなければならないので、パーティーは大嫌いだった。

 そして、なによりも1番大嫌いなのは………。

 何時も自分を敵視して、何度も毒殺をくわだてたり、暗殺者を何食わぬ顔で送ってくる相手が居ることだった。






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