上 下
89 / 450
第7章 帝都にて、それぞれの時と思い

089★オスカーが居ない場所では、マクルーファも意地悪になるんです

しおりを挟む


 マクルーファは、言うべきセリフを考えてから、少し離れた場所で自分達を見ている聖女候補を確認し、そのまま直ぐ近くまで近寄って言う。

 「始めまして、聖女候補の皆さん
 私は、魔法騎士団の副団長を務めます
 マクルーファと申します

 警護の騎士達の不手際で
 お待たせしてすみません

 なにぶん魔法騎士団ゆえ、男所帯なので
 女性への対応に不慣れで………

 現在、高貴な方がいらしているので
 上司の指示がないと動けないのですよ

 団長がお連れになった聖女候補の姫君は
 残念ながら、今、来客中なんです
 お客様は、西の妃様なので………

 その為、私がこれから案内する部屋で
 西の妃様が、ご自分の離宮に帰るまで
 待っていて下さいますか?」

 マクルーファの申し出に、聖女候補の少女達はにっこり笑う。
 そして、各々思ったコトを口にするのだった。 

 「来客中なら、待ってればイイよね」

 「うん、ちょっと待ってれば良いんでしょ?」

 「面会の順番が来るまで待ってる」

 「これで、彼女に会えるのね」

 少女達は、自分の思いをそれぞれ口にする。
 それから、はっとした顔になる。
 マクルーファと名乗った魔法騎士団の副団長に、お礼を言っていなかったことに気が付いたから…………。
 そして、慌ててお礼を言い、いっせいに頭を下げる少女達だった。

 「「「「「「マクルーファさん
 ありがとうございます」」」」」」

 少女達のお礼の言葉に、マクルーファはちょっと苦笑する。

 〔見た感じとしては、とんでもないハズレは
 いなさそうですが……さてさて………
 これは、オスカーと相談せねば……〕
 
 「いいえ、どういたしまして
 では、行きましょうか?」

 内心を綺麗に隠したマクルーファの言葉に、少女達はいっせいに答える。

 「「「「「「はい」」」」」」

 聖女候補達が可愛い返事をしたのを確認してから、マクルーファはクスッと笑ってから、扉前の護衛役の者達に言う。

 「聖女候補達の所属する騎士団や
 魔法師団達などが来ても通す必要はない
 幾ら王城内とは言え、無責任すぎるからな
 団長からの、きっつーいお小言が必要だろう」

 そう言い終わったマクルーファは、聖女候補達に向かって、優しげに笑って言う。

 「おまたせしました
 それでは、行きましょう」

 「「「「「「はい」」」」」」

 少女達は可愛らしいハモった返事をし、たたっと二列になって、マクルーファの後を付いて歩き出す。
 その姿はカルガモの親子の行進のように見えた。
 勿論、親はマクルーファで、少女達は子カルガモだった。

 それを見ていた警備をしていた騎士達は、笑いを堪えて黙っていた。
 魔法騎士団本部の扉を潜り、少女たちはマクルーファの後をひたすらついていった。

 その後を、マクルーファの側近達が付いて歩いていた。
 マクルーファは、予定していた部屋の前に立ち止まる。
 そして、少女達を振り返って言う。
 
 「この部屋でお待ち下さい」

 聖女候補の少女達は嬉しそうに笑って答える。

 「「「「「「はい」」」」」」

 何かといっせいに答える少女達に、マクルーファは微笑みながら、側近に命令する。

 「デュラン、お茶の用意を…」

 「はい」

 デュランは、室内に入ることなく、お茶の用意の為に食堂へと歩み去っていった。
 それを見送ったマクルーファは、側近に次の命令をする。
 
 「レオンとマルコは、聖女候補の皆さんの
 護衛に残って下さい」

 「「はい」」

 名前を呼ばれた二人は、了承の返事と同時に騎士の礼をとる。
 そして、扉を開けて、室内をざっと見渡してから入って行った。
 マクルーファに続いて、少女達は、室内に入って行く。
 そして、マクルーファは少女達に話し掛ける。

 「こちらに座ってお待ち下さい
 西の妃様が帰りましたら
 ここにいるランスロットが迎えにまいります
 これでよろしいですか?」

 「「「「「「はい」」」」」」

 「では、私達は団長室に向かいます」

 少女達に笑顔を見せてから、マクルーファはランスロット達を連れて部屋から出て行った。
 それを見送った少女達は、迎えが来るまで取り留めの無い会話を続けるのだった。

 生温い視線を少女達に向けながら、レオンとマルコは、警護をするのだった。
 少女達を来客用の部屋に置いて来たマクルーファは、団長室の前で軽く深呼吸してから扉を軽く叩いて言う。
 
 「団長、マクルーファです
 入室の許可を…………」

 「さっさと入れ」

 マクルーファのセリフを遮ってアルファードは入室の許可をだす。
 その様子を西の妃キャロラインは、くすくす笑って見ていた。
 エリカは、マクルーファがどんな用事があるんだろうと首を傾げていた。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

その聖女、娼婦につき ~何もかもが遅すぎた~

ノ木瀬 優
恋愛
 卒業パーティーにて、ライル王太子は、レイチェルに婚約破棄を突き付ける。それを受けたレイチェルは……。 「――あー、はい。もう、そういうのいいです。もうどうしようもないので」  あっけらかんとそう言い放った。実は、この国の聖女システムには、ある秘密が隠されていたのだ。  思い付きで書いてみました。全2話、本日中に完結予定です。  設定ガバガバなところもありますが、気楽に楽しんで頂けたら幸いです。    R15は保険ですので、安心してお楽しみ下さい。

異世界召喚に巻き込まれました

ブラックベリィ
恋愛
気分転換として、巻き込まれモノも書いてみようかと………。 でも、通常の巻き込まれは、基本ぼっちが多いようなので、王子様(笑)を付けてみました。 なんか、どんどん話しがよれて、恋愛の方に傾いたので、こっちに変更ます。

【完結】魅了が解けたあと。

恋愛
国を魔物から救った英雄。 元平民だった彼は、聖女の王女とその仲間と共に国を、民を守った。 その後、苦楽を共にした英雄と聖女は共に惹かれあい真実の愛を紡ぐ。 あれから何十年___。 仲睦まじくおしどり夫婦と言われていたが、 とうとう聖女が病で倒れてしまう。 そんな彼女をいつまも隣で支え最後まで手を握り続けた英雄。 彼女が永遠の眠りへとついた時、彼は叫声と共に表情を無くした。 それは彼女を亡くした虚しさからだったのか、それとも・・・・・ ※すべての物語が都合よく魅了が暴かれるとは限らない。そんなお話。 ______________________ 少し回りくどいかも。 でも私には必要な回りくどさなので最後までお付き合い頂けると嬉しいです。

断罪されたので、私の過去を皆様に追体験していただきましょうか。

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢が真実を白日の下に晒す最高の機会を得たお話。 小説家になろう様でも投稿しています。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

聖女は夫の王太子が浮気したので、王孫を連れて出て行くことにしました。

克全
恋愛
「アルファポリス」と「カクヨム」にも投稿しています。

断罪されているのは私の妻なんですが?

すずまる
恋愛
 仕事の都合もあり王家のパーティーに遅れて会場入りすると何やら第一王子殿下が群衆の中の1人を指差し叫んでいた。 「貴様の様に地味なくせに身分とプライドだけは高い女は王太子である俺の婚約者に相応しくない!俺にはこのジャスミンの様に可憐で美しい女性こそが似合うのだ!しかも貴様はジャスミンの美貌に嫉妬して彼女を虐めていたと聞いている!貴様との婚約などこの場で破棄してくれるわ!」  ん?第一王子殿下に婚約者なんていたか?  そう思い指さされていた女性を見ると⋯⋯? *-=-*-=-*-=-*-=-* 本編は1話完結です‪(꒪ㅂ꒪)‬ …が、設定ゆるゆる過ぎたと反省したのでちょっと色付けを鋭意執筆中(; ̄∀ ̄)スミマセン

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

処理中です...