87 / 450
第7章 帝都にて、それぞれの時と思い
087★7人目の聖女候補に会いたい
しおりを挟む断定するアルファードに、キャロラインは妹が育てた娘の性格を考えて溜め息を吐いた。
「あらあら、エリカ姫に絡むなんて
バカなこと…するわね…きっと……
これは…陛下に頼んででも…さっさと
降嫁させるわね
婚約式の前に、結婚式を上げさせるわ」
陛下と自分の娘ではあるが、妹が育てたがゆえの性格を考えて、出来るだけ早く、皇女の地位から降ろさないと、なにをしでかすか判らないという事実を改めて認識したキャロラインの言葉に、アルファードが頷いて言う。
「ああ、エリカに絡めないように
早めに皇族から除籍して欲しい」
そのアルファードのセリフに、エリカはちょっと小首を再び傾げる。
〔えっとぉ~…どんだけ凄い性格なの?
いったい、どういう育て方をされたの?
アルとお母様と、弟に義弟の2人にって
拒絶されまくっているけど………
でも、絡まれるのは嫌だから、黙っていよう
かかわらなければ、被害は無いはず…だよね〕
そんなアルファードのセリフに、ちょっと考えてから、キャロラインは確実性を求めて助言する。
「貴方からも、陛下にお願いしなさい」
キャロラインの言う意味が理解出来るアルファードは、大事なモノ(エリカ)を守るためなら、使えるモノ(権力)は、なりふりかまわず使うことを心に誓いながら頷く。
「そうする」
そんな、ある意味で不毛なアルファードとキャロラインの会話が、盛り上がっている、その頃。
エリカと同じ、聖女候補の少女達が、魔法騎士団本部に、やっとたどり着いていた。
「けっこう歩いたよねぇ………」
「うん、意外と距離があったわ」
そう言い合いつつ、本部の建物の前で、どうやって中に入るか?という会話をし始める。
「ここが、魔法騎士団の本部の建物なの?
私が、滞在させてもらっている
北域騎士団本部よりも凄いんですけどぉ~」
そう1人が言えば、他の聖女候補も頷いて言う。
「なんか、私が滞在させてもらっている
帝都騎士団本部の建物より大きくて
使っている材料も、高そうなんだけどぉ~」
建物をマジマジと見上げてのセリフに、その隣りにいた聖女候補も頷いて、感想を口にする。
「うん、中央騎士団の本部よりも大きいよ」
「東域騎士団本部なんか完全に負けてる」
「いやいや、西域騎士団本部も
完璧負けてるね」
素材自体の価値は判らなくても、良いモノを使っているのは判るので、興奮して喋る。
「確か、全騎士団の上にあるのが
魔法騎士団だって、言っていたから……
だから南域騎士団本部より立派で当然なのよ
…たぶん…きっと」
声を掛けることをちょっと躊躇(ためら)った聖女候補達は、ちょっと現実逃避して、それぞれ自分が滞在している騎士団本部の建物と魔法騎士団本部の建物の大きさや使っている資材の違いを話し合っていた。
その中のひとり、鈴蘭がぽつりと言った。
「ねぇ~……これって……あの……
国会議事堂と迎賓館って感じがしない?」
言われて、改めて建物を見る聖女候補達。
「うんうん、そんな感じがするね」
「他の騎士団本部の建物って
なんかごっつい感じがするよね」
「来る途中で見た魔法師団本部って
ここに比べると、ちょっと暗い感じがしたよね
建物の感じとしては、優美だけど」
「神聖魔法師団も、優美な感じがしたよね」
「優美な建物の方が、建設費用がかかるよね」
「うん、確かに、魔法騎士団の方が
権力とか《力》が上なんだよね」
それぞれの感想をひと通り口にしてから、改めて本題を口にする。
「じゃ、彼女にお願いすれば
あのストーカー達をなんとか出来るね」
確認するように言えば、撫子が頷きながら言う。
「確か、彼女をお姫様抱っこしていった
あのすっごい美少年が、魔法騎士団の
団長さんなんでしょう?」
と、周囲の会話に聞き耳を立てていた桔梗が口を開く。
「えっとね、ちらっと聞いたんだけどぉ」
「なになに」
「あの美少年って、第1皇子なんですって」
「うっそぉー」
「ってことは、ラノベの展開よね」
「彼女って、将来は皇太子妃ってこと?」
3人集まればかしましいの2倍いるのだ、おしゃべりスズメ状態で、聖女候補達はきゃっきゃとする。
が、実際は、この世界に《召還》されたことによるストレスで、躁(そう)状態に入っているのだ。
ある意味で、自分達を落ち着ける為に、こちらに《召還》されて早々に姿を消した、7人目に会いたい聖女候補の6人だった。
10
お気に入りに追加
2,240
あなたにおすすめの小説
召喚されたのに、スルーされた私
ブラックベリィ
恋愛
6人の皇子様の花嫁候補として、召喚されたようなんですけど………。
地味で影が薄い私はスルーされてしまいました。
ちなみに、召喚されたのは3人。
2人は美少女な女子高生。1人は、はい、地味な私です。
ちなみに、2人は1つ上で、私はこの春に女子高生になる予定………。
春休みは、残念異世界への入り口でした。
番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる