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第7章 帝都にて、それぞれの時と思い

085★どうやら、アルの妹さんは凄い方のようです

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 エリカが、腕の中でどうしようと困っている間にも、母(キャロライン)と子(アルファード)の会話は無情に続いていた。

 「で、母上、アレは良いのですか?」

 名を呼ぶのも厭だという意味を込めて、アレ呼ばわりするアルファードに、キャロラインが、一応はたしなめる。

 「アルファード、妹をアレと呼ぶのは
 止めなさいって、何度も言っているでしょう」

 そういうキャロラインとて、娘の名を口にする気が無いのは事実で、アルファードがその言葉を聞くはずもなかった。

 「アレで、充分です
 俺やバードに気が付かず

 アンナコトをさせようとするバカは
 どこぞのバカに、投げてやれば良いんです」

 アルファードの冷え切った言葉に、エリカは小首を傾げる。

 〔アルの妹さん? 何をやったのかな?
 優しいアルが、アレ呼ばわりするなんて……

 じゃなくて、ギデオンとレギオンとは別に
 同腹の弟さんがいるんだ

 アルバードさんていうのが弟さんね
 アルはバードって呼んでいるんだ

 いや、それよりも…アンナコトって…なに?
 いったいどんなコトをさせようとしたの?
 いやいや、それより兄弟って気付かないの?

 ……いやいや、妹さんで現実逃避しても……
 アルとの結婚は回避できなさそうだから……

 いや、別にアルが嫌いとかじゃにいけど……
 むしろ、大好きだけど…皇太子妃はちょっと
 できれば避けたかったんですけど………

 って、あれ? これって、もしかして……
 性女(娼婦)は回避されるってことじゃ……〕

 そこでようやく、エリカは性女(娼婦)落ち回避が出来ることに思い至り、どこかホッとする自分に肩を竦めていた。

 〔はぁ~…なんか、気分は地獄から天国ね
 《召還》されて、聖女候補って言われて……

 側にいた少女達は美少女ばかりで
 これは詰んだって思ったモン

 ………じゃなくて…現実逃避しないで
 きちんと会話を聞いて、後で聞かないと
 これ以上、大変なことになった嫌だモン〕

 心の中で折り合いが付いたエリカは、2人の会話に聞き耳を立てる。
 と、その原因をキャロラインが首を振って口にしていた。

 「ああ…アレね…失敗したわ
 男の子しか生んでいない妹が
 姫を育ててみたいって言うから…つい…」

 〔アルのお母様の妹さんて
 いったい、どんな育て方したの?
 そこ、もっとくわしく聞きたいんですけど…〕

 エリカがどう聞けば良いか迷っている間に、話しは進んでしまう。
 そして、アルファートのにべも無い絶対零度のような言葉が紡がれる。

 「今更、どうしようも無い話しです
 私はアレを妹と認識しない」

 きっぱりとそう言うアルファードに、キャロラインは重い溜め息を吐く。

 「はぁ~アルバードも嫌っているものねぇ~
 ギデオン、レギオン、貴方達は
 少しはマシよね」

 希望観測の入ったキャロラインの言葉に、ギデオンとレギオンは声をハモらせて拒否の言葉を口にする。

 「「義母上、私達もアレを妹と認識出来ない」」

 その凍て付いた声での言葉に、エリカはきょとんとする。

 〔ちょっと…それって……凄すぎるわ…
 アルにその弟さんに、ギデオンさんと
 レギオンさんにまで拒絶されるって……

 その上で、実の母親にさりげなく?
 忌避されるような育ち方って………〕

 びっくりしているエリカの前で、キャロラインは困ったような口調で言う。

 「そうダメなのね…仕方ないわ、アノ子は
 カンパネラ伯爵の後継に降嫁させます
 彼なら、我が儘なアノ子でも大丈夫でしょう」

 最初から確定しているような口ぶりのキャロラインに、アルファードもああという表情をして頷く。

 「カンパネラ伯爵か…確かに…あの家は
 皇家の姫が、いまだに降嫁していない

 それに…成り上がりのダルージャ男爵の次男を
 莫大な持参金を貰って婿にして継がせたはず
 それが、現カンパネラ伯爵だったな」

 自分の認識を確認するように言うアルファードに、キャロラインは頷いて言う。

 「そうよ。アノ子の我が儘って
 基本が、ドレスと宝石よ

 ダルージャ男爵家は、ドレスも宝石も
 扱っているわ

 それにカンパネラ伯爵の領地では
 最高級の絹を生産しているわ
 なんとかなると思うの」

 一応は、母親として気にしているらしい言葉に、エリカはどこかホッとする。
 母親に、拒絶されまくったエリカだけに、キャロラインの娘への認識と、好みに配慮した政略結婚に、思い遣りを見出して内心で無意識の溜め息を零す。
 が、次のアルファードのセリフに、ちょっと硬直する。

 「カンパネラ伯爵の後継は
 かなりの遊び人だったが?」

 キャロラインは、アルファードの確認を含めた言葉に、クスッと嗤って言う。
 「その辺りは、世間知らずのアノ子を
 上手に転がせると思うのよ」

 そんなキャロラインに、アルファードは冷たく言い放つ。
 
 「まっ、アイツに疲れて愛人を囲うなら
 上手くやれと言うだけだ」

 アルファードの冷淡な反応と言葉に、エリカは小首を傾げてしまう。

 〔アルどころか、弟さんにギデオンさんに
 レギオンさんにまで嫌われているって
 どんだけ、酷い性格なのかな?

 エリカ、もしかしなくてもイジメられる?
 っと、そういえば、大概のイジメって
 淑女のマナーやたしなみの指摘からよね

 うわぁ…全然わからないんですけどぉ……〕







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