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第7章 帝都にて、それぞれの時と思い
082★口を挟む気力が湧きません
しおりを挟む母キャロラインの言葉に含まれた、副音声がしっかりと聞こえたアルファードは、少し苦笑いを浮かべつつも言う。
「わかりました
次は気を付けましょう」
アルファードからの快諾?をもらったキャロラインは、少女のような微笑みを浮かべてから、ターゲットをエリカへと移す。
そう、好奇心と、陛下へのお土産の為に………。
「嬉しいわぁ……それじゃ、姫君の話しを
もっと詳しく聞きたいわ
貴方の…いいえ…皇太子妃となる
姫君のことを………」
嬉々とするキャロラインに、こちらものろけたくてしかたがないアルファードが楽しそうに口を開く。
「そうですね……エリカは……
俺のシルファードに乗れるぐらいの
身体能力がありますね
それに、異界から持ち込んだ刀という剣で
俺達の使う剣を切ることができます
あと、弓も使えると言っていました
《魔力》は、たぶん寵愛の聖女様クラス
究極の治癒魔法を使えるんですよ
精霊魔法も、火水地土の4種類使えるんです
それと、無意識で…あの魔の森周辺の瘴気を
浄化していたので………
後は、守護獣を手にするだけで
良いと思います」
聖女になれると太鼓判を押されたような状態であると自慢するアルファードに、エリカは無意識に頬を染める。
〔アルぅ~…それ、褒めすぎだよぉ……
いや、すっごく嬉しいけど………
必要とされるって幸せ感じるんだよね
それだけで、頑張れるもん
ここには、恵里花にベタ甘な
パパやお兄ちゃんの威光なんて無いから
家族贔屓じゃなく、評価してもらえる
頑張った分だけ、エリカを見てくれる
エリカがみんなの為に頑張れば
みんながエリカを認めてくれるんだもん
ここには、エリカの居場所がある〕
頬を染める初々しいエリカに、キャロラインはふんわりと微笑みを浮かべる。
〔あらあら、ごちそうさま
でも、良かったわぁ~…優秀な子で
それなら直ぐに婚約式しないと……
横槍の入る前に…聖女を確保よ…〕
もう、それはうきうきという言葉が入りそうなほど楽しそうに言う。
その頭の中には、エリカをどう着飾ろうかという妄想しかなかった。
「そう…では…私が…姫君と貴方の
婚約式の準備をしても良いわね?」
キャロラインのセリフに、エリカを確実に自分のモノにしたいと思っているアルファードは、それはそれは嬉しそうに答える。
「ええ、良いですよ…ただし、お祖母様
いや、皇太后陛下の指示も受けて下さいね
衣装については、エリカのダンス練習用とか
夜会用とか言って、採寸させます
ソレまでは、最上級…いや極上の布と宝石を
用意しておいて下さい」
〔あのぉ~……もしもし…エリカの意思は…
はい、無いんですね……なんだろう?
アルとアルのお母様の会話なのに……
まるで、お兄ちゃんとパパの会話みたいに
なっているのは……はぁ~…ドレスかぁ…
いや、それよりダンス…やっぱりあるんだ
もう、ここにエリカの意思は無いわね……
状況を楽しまなかったらやってられないわ〕
そうは思いつつも、親子の会話に口をはさむ気はさらさらなかった。
いや、言っても無駄をさとったのだ。
そのエリカの視線の先では、両手を嬉しそうに合わせて、キャロラインが言う。
「まぁ嬉しいわ」
そんなキャロラインに、アルファードは破格の提案…いやいや、待遇?を口にする。
「母上のドレスや宝石も作って構いませんよ
その分は、俺が出します
お祖母様にも、お礼としてドレスと宝石を
送りたいと思っています
その辺りは、母上にお願いします」
アルファードから無限のお財布、いやいや、宝物庫の扉の鍵をもらったキャロラインは、エリカをじーっと見てにぃ~っことり笑う。
「そうね、まかせて…楽しいわ…と…
貴方とエリカ姫は良いとして……
アルバードはどうなっているの?」
そこで、もう1人の息子の存在を思い出して、アルファードに聞くが…………。
アルファードも、聖女候補の《召還》に立ち会っていないので、聞かれても困るという表情で言う。
「その辺は、魔の森で湧き出して魔物討伐で
《召還》時にいなかったので判りません
母上の方が、情報が有るんじゃないですか?」
聞き返すアルファードに、キャロラインはあっさりと返す。
「無いわよ」
「本当に?」
聞き返すアルファードに、キャロラインはなけなしの自分が知る情報を口にする。
「アルバードは、東域騎士団の魔物討伐で
3日前から、東域騎士団と東辺境守護
騎士団合同の魔物討伐に
出かけているのよ」
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