上 下
82 / 450
第7章 帝都にて、それぞれの時と思い

082★口を挟む気力が湧きません

しおりを挟む


 母キャロラインの言葉に含まれた、副音声がしっかりと聞こえたアルファードは、少し苦笑いを浮かべつつも言う。

 「わかりました
 次は気を付けましょう」

 アルファードからの快諾?をもらったキャロラインは、少女のような微笑みを浮かべてから、ターゲットをエリカへと移す。
 そう、好奇心と、陛下へのお土産の為に………。

 「嬉しいわぁ……それじゃ、姫君の話しを
 もっと詳しく聞きたいわ

 貴方の…いいえ…皇太子妃となる
 姫君のことを………」

 嬉々とするキャロラインに、こちらものろけたくてしかたがないアルファードが楽しそうに口を開く。

 「そうですね……エリカは……
 俺のシルファードに乗れるぐらいの
 身体能力がありますね

 それに、異界から持ち込んだ刀という剣で
 俺達の使う剣を切ることができます
 あと、弓も使えると言っていました

 《魔力》は、たぶん寵愛の聖女様クラス
 究極の治癒魔法を使えるんですよ

 精霊魔法も、火水地土の4種類使えるんです

 それと、無意識で…あの魔の森周辺の瘴気を
 浄化していたので………

 後は、守護獣を手にするだけで
 良いと思います」

 聖女になれると太鼓判を押されたような状態であると自慢するアルファードに、エリカは無意識に頬を染める。

 〔アルぅ~…それ、褒めすぎだよぉ……
 いや、すっごく嬉しいけど………
 必要とされるって幸せ感じるんだよね
 それだけで、頑張れるもん

 ここには、恵里花にベタ甘な
 パパやお兄ちゃんの威光なんて無いから

 家族贔屓じゃなく、評価してもらえる
 頑張った分だけ、エリカを見てくれる

 エリカがみんなの為に頑張れば
 みんながエリカを認めてくれるんだもん
 ここには、エリカの居場所がある〕

 頬を染める初々しいエリカに、キャロラインはふんわりと微笑みを浮かべる。

 〔あらあら、ごちそうさま
 でも、良かったわぁ~…優秀な子で

 それなら直ぐに婚約式しないと……
 横槍の入る前に…聖女を確保よ…〕

 もう、それはうきうきという言葉が入りそうなほど楽しそうに言う。
 その頭の中には、エリカをどう着飾ろうかという妄想しかなかった。

 「そう…では…私が…姫君と貴方の
 婚約式の準備をしても良いわね?」

 キャロラインのセリフに、エリカを確実に自分のモノにしたいと思っているアルファードは、それはそれは嬉しそうに答える。

 「ええ、良いですよ…ただし、お祖母様
 いや、皇太后陛下の指示も受けて下さいね

 衣装については、エリカのダンス練習用とか

 夜会用とか言って、採寸させます

 ソレまでは、最上級…いや極上の布と宝石を
 用意しておいて下さい」

 〔あのぉ~……もしもし…エリカの意思は…
 はい、無いんですね……なんだろう?

 アルとアルのお母様の会話なのに……
 まるで、お兄ちゃんとパパの会話みたいに
 なっているのは……はぁ~…ドレスかぁ…
 いや、それよりダンス…やっぱりあるんだ

 もう、ここにエリカの意思は無いわね……
 状況を楽しまなかったらやってられないわ〕

 そうは思いつつも、親子の会話に口をはさむ気はさらさらなかった。
 いや、言っても無駄をさとったのだ。
 そのエリカの視線の先では、両手を嬉しそうに合わせて、キャロラインが言う。

 「まぁ嬉しいわ」

 そんなキャロラインに、アルファードは破格の提案…いやいや、待遇?を口にする。

 「母上のドレスや宝石も作って構いませんよ
 その分は、俺が出します

 お祖母様にも、お礼としてドレスと宝石を
 送りたいと思っています
 その辺りは、母上にお願いします」

 アルファードから無限のお財布、いやいや、宝物庫の扉の鍵をもらったキャロラインは、エリカをじーっと見てにぃ~っことり笑う。

 「そうね、まかせて…楽しいわ…と…
 貴方とエリカ姫は良いとして……
 アルバードはどうなっているの?」

 そこで、もう1人の息子の存在を思い出して、アルファードに聞くが…………。
 アルファードも、聖女候補の《召還》に立ち会っていないので、聞かれても困るという表情で言う。

 「その辺は、魔の森で湧き出して魔物討伐で
 《召還》時にいなかったので判りません
 母上の方が、情報が有るんじゃないですか?」

 聞き返すアルファードに、キャロラインはあっさりと返す。

 「無いわよ」

 「本当に?」

 聞き返すアルファードに、キャロラインはなけなしの自分が知る情報を口にする。

 「アルバードは、東域騎士団の魔物討伐で
 3日前から、東域騎士団と東辺境守護
 騎士団合同の魔物討伐に
 出かけているのよ」






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

召喚されたのに、スルーされた私

ブラックベリィ
恋愛
6人の皇子様の花嫁候補として、召喚されたようなんですけど………。 地味で影が薄い私はスルーされてしまいました。 ちなみに、召喚されたのは3人。 2人は美少女な女子高生。1人は、はい、地味な私です。 ちなみに、2人は1つ上で、私はこの春に女子高生になる予定………。 春休みは、残念異世界への入り口でした。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。

断罪されたので、私の過去を皆様に追体験していただきましょうか。

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢が真実を白日の下に晒す最高の機会を得たお話。 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

処理中です...