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第7章 帝都にて、それぞれの時と思い

079★親子でも皇族同士なので、面会も大変なんです

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 エリカが、皇妃リリアーナと他の妃達と、アルファードの母であり、西の妃であるキャロラインとの関係を聞き、なるほどと感心しているそこに、オスカーが再度声をかける。

 「それで、どうなさいますか?
 お会いになりますか?」

 オスカーのどこか冷えた言葉に、アルファードは苦笑する。

 「母上は、何処に居るんだ?」

 その問い掛けに、事務的にオスカーは答える。

 「本部前の馬車でお待ちになっています」

 ちょっと待たせたかな?と思いつつも、先触れなしで来たのだからと、そこは気にしない方向で、アルファードはエリカへと向き直って言う。

 「そうか、わかった
 エリカ…母上は、父上以外には
 あまり興味の無い人だから………

 もし、なにか厭味になるようなことを
 言われても、気にしないでくれ

 どうせ言った本人も、そこまで言ったことを
 覚えていなかったりするから………」

 「それって…」

 「まっ本人に会えばわかるから」

 「うっうん」

 アルファードにそう言われて、西の妃キャロラインに会うことにしたエリカは、内心でかなりドキドキしていた。
 が、それを口にするのも……と思い黙って…存在を消して空気になろうと思っていた。

 色々なコトを考え始めたエリカは、周りが見えなくなる性質があると知っているアルファードは、内心で真っ黒な微笑みを浮かべる。
 そして、ソッとエリカを抱き上げ、自分の膝にひょいっとのせてしまうのだった。

 自分の状況に頭のまわらないエリカは、アルファードに抱きこまれて何度も口付けを受けてしまう。
 エリカの意識が戻ると困るので、アルファードは頬やまぶたや首筋に触れるだけの口付けを落とす。
 それを生温い表情で見ながらオスカーは、側近のフェリックスに命令する。

 「フェリックス、西の妃様を
 ここに案内してきなさい
 団長から許可がでました」

 「はい」

 フェリックスは、オスカーの命令に従ってさっさと部屋を出ようとして背を向けた。
 その背中に、オスカーは新たな命令を付け加える。

 「ああそうそう…西の妃様に……
 団長は姫君に夢中で余計なコトを言ったら
 嫌われますよと伝えておきなさい

 それと…姫君に口付けしている姿を見ても
 絶対に、そのコトに突っ込まないようにと…
 馬に蹴られますよとでも言っておきなさい」

 その命令の内容に、フェリックスは苦虫をがっつりと噛み潰したような顔になって深呼吸をする。
 そして、オスカーに向き直ってから、無意識に拳をギュッと握って言う。
 それは、オスカーの命令がいかに無理な話しかを如実に現していた。

 「あの副団長、私ではそこまで
 言えませんので…………」

 フェリックスのこわばった表情とかたい声に、オスカーは地位を考えない無茶な命令をしたことに気が付いた。
 そこで命令に修正を加えるオスカーだった。

 「では、御付きの侍女に言っておきなさい
 その会話が聞こえたというコトでも良いですよ」

 「はい」

 オスカーの許可を貰ったので、フェリックスはほっとした表情になって部屋から出て行った。
 その姿を見送ったオスカーは、西の妃が来たことを知らせに来た騎士に問い掛ける。
 
 「クラウス、西の妃様は
 侍女と騎士を何名連れて着ましたか?」
 
 オスカーの問い掛けに、クラウスは騎士の礼を取り一礼してから答える。

 「馬車の中には、西の妃様と侍女が3名
 馬車の外に、馬に乗った守護騎士が6名
 おりました」

 その答えに、オスカーは嫌そうな表情でボソッと言う。

 「はぁ~……相変わらず、大げさな警備を
 敷くのが好きな方ですねぇ~………
 王城内なのだから、守護騎士は
 2名でも事足りるのに………」

 そんなオスカーに、アルファードが苦笑しながら言う。

 「オスカーそう腐るな
 母上の守護騎士には…お前の兄が2名いたよな
 たぶん、その2人を連れていると思うぞ

 それに、クリストファーの従兄弟や
 ギデオンとレギオンの従兄弟も

 守護騎士に就任したと聞いたから
 たぶんそれらを連れて来たと思う

 だから、守護騎士達にも席に着いてもらい
 エリカのクッキーを食べてもらおう

 侍女も、誰かの身内じゃないかな?」

 アルファードの説明?にオスカーは、眉を顰めてからしぶしぶ了解したという返事をする。
 そのついでに、お茶の用意をジャスティーに命令するのだった。

 「はぁ~…わかりました…ジャスティー
 お茶を10人分用意して下さい」

 「はい」

 オスカーの命令に、騎士の礼をし、軽く頭を下げてから茶器やお湯、お菓子を用意する為に別室へと向かうジャスティーだった。







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