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第6章 野営地にて………

059★朝から、砂糖に蜂蜜をかけたような新婚さん……には、なれませんでした

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 元の世界に居た頃と違って、車や電車の音、家庭から溢れる音が無い静かな朝に、騎士達の鍛錬の音が響く。

 〔……ぅん? あっ…っと…なんの音?〕

 それは、清々しい目覚めを誘うというよりは、何の音がしているのかわからなくて、エリカは混乱したまま目が覚める。
 まだ、意識が少しぼーっとしているエリカは、自分の状況に小首を無意識にこてんと傾げて、なんとはなしに天井?を見る。

 〔えぇ~とぉ……見たコト無い天井?
 って、ここはどこ? …はっ…じゃなかった

 そうだ、エリカってば《召還》されたんだっけ
 なんか半日の間に、色々とありすぎて………
 認識力が、絶賛低下中ね

 ……なんて、ふざけている場合じゃないわね
 はぁ~…全部、夢じゃなかったんだぁ~……

 まるで、出来の悪いラノベのような
 ご都合主義の展開だったから…………

 簡単に魔法も使えたし……じゃないって
 ダメだ、意識が逃げちゃうわ〕

 そう思って、エリカは現実逃避しかかる意識に、現状を認識させようと、見慣れない天幕の天井?を無意識見詰める。
 が、まだ、意識はハッキリしていないので、ぼぇ~としていた。

 〔はぁ~…やっぱり、これって天幕よね
 聖女候補として《召還》されて………

 《魔力》枯渇や衰弱した人を助けて……
 魔法騎士団が、まだ戦闘………〕

 そう今までのことを追想しているところに、サーチをかけていたアルファードが天幕の中へと慌てて入って来る。

 〔ふわぁ~…何度見ても、アルってば…
 美少年よねぇ~……キラキラ度が凄い〕

 「おはよう、エリカ…今日も良い天気だよ」

 目が覚めたエリカに、声をかけたのは、やっぱりアルファードだった。

 〔…っ…じゃなくて…近いっ…近いっ…
 上からそんな風に覗き込まないでぇぇ~……

 アルゥゥ~……無邪気な表情で……ぁう~…
 キラキラで目眩しそう……じゃないわ〕

 銀髪に紫紺の瞳の美少年が、自分を覗き込んでいる図は、エリカに多大な精神的負荷を与える。
 そんなエリカの精神状態を知らないアルファードは、全開の笑顔で話しかけてくる。

 「クスクス…おはよう、エリカ
 お風呂の用意は出来ているよ

 まだ、ちょっとぼぉ~っとしているようだね
 すっきりと目覚める為に…………
 朝から、お風呂にはいるんだろう?」

 それ(朝風呂)が当然のように言うアルファードに、エリカはコクッと頷く。

 「あっうん…入りたい…じゃなくて
 おはよう…アル……」

 ちょっと恥ずかしそうに挨拶したエリカに、アルファードは無意識に蕩けるような微笑みを浮かべていた。

 〔だぁぁぁ~……美少年の微笑みぃ~……
 眼福だけど…威力……あるわぁ~……
 あぁ~アルの笑顔ってクラクラする〕

 エリカの意識がぱっちりと目覚めたと判断したアルファードは、少しエリカから離れる。
 やっと、上半身を起こせるスペースを得たエリカは、いそいそと起き上がる。
 そんなエリカに、アルファードは当然のように着替えを差し出す。

 「俺の騎士服とエリカ用の新しい下着と
 あとは、バスタオルな」

 ソレを、疑問も無く何の気なく受け取り、エリカは小首を無意識に傾げる。

 「ありがとう、アル
 もしかして、騎士様達と鍛錬したいたの?」

 〔うっ…だぁぁ~…エリカ…可愛すぎだ……
 何の含みも無い瞳がたまらない……じゃない

 しっかりしろ、アルファード…何時も通りだ
 落ち着け俺、不審な行動はエリカに疑われる

 無邪気な、エリカでいて欲しいんだから
 警戒心を持つような行動は控えるんだ〕

 アルファードは、エリカの愛らしい仕草に、内心クラクラしながらも、外見上は平素と同じように取り繕って言う。

 「ああ…ある程度鍛錬に付き合ったから…
 俺は上がりにしたんだ
 それで、先に風呂に入ったんだ

 勿論、ギデオンとレギオン達も入ったから
 次は、エリカの番だよ」

 さらりと言うアルファードに、エリカは他の人は?と聞く。

 「オスカーさんやマクルーファさん達は?」

 その問いに、アルファードはエリカの眠る天幕に入る前のことを、ちょっと思い出しながら言う。

 「んぅ~と……マクルーファは……
 まだ、鍛錬に付き合っているけど

 オスカーは、鍛錬を終えて
 風呂に入った頃だな」

 アルファードの言葉に、エリカは頷いて言う。

 「そうなの…じゃ…お風呂に入ります」

 朝からお風呂に、嬉しそうにそう言うエリカに、アルファードが優しい口調で言う。

 「風呂から上がったら、お茶にしよう
 水分補給は大切だから」

 「うん」

 お兄ちゃんなアルに着替え一式を渡されたエリカは、入浴の為に別の天幕にトテトテと向かった。
 その後を、ゆったりと付いて行くアルファードだった。

 アルファードにとってエリカは、大切な愛しい姫だったから…………。
 完全に一目惚れだったのだ。

 自分より小さくて、それでいて大人な部分と頼りない少女の部分を持つエリカは、まさに好みの女性だったから…………。

 《魔力》でも釣り合いが取れる、聖女のエリカは理想の結婚相手だったのだ。
 いずれ、どう足掻いても、皇帝に成るとわかっているアルファードは、自分の隣りに立てる、本当の意味(愛せる)皇妃を求めていた。






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