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第6章 野営地にて………

051★お好み焼き、焼肉、ホットケーキは存在してませんでした

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 アルファードのセリフから、エリカはその料理が存在しないことを知る。

 〔あっ…名前を知らないってことは
 こっちには、お好み焼きや焼肉は無いんだ
 あと、ホットケーキも無いんだ
 どれも美味しいのに…勿体無い〕

 エリカの様子から、名前のあがったモノがどんな料理か知りたくて、アルファードは無意識に少し身を乗り出す。

 「それって、どんなモノなんだ?」

 わくわくという言葉がとてもあてはまりそうな表情のアルファードに、エリカは楽しそうに言う。

 「うふふ、とても簡単な料理なの……

 油を引いて、熱した鉄板の上に…
 材料をのせて焼くだけだから…

 アルもやってみると楽しいと思うの…」

 エリカのセリフに、アルファードはびっくりする。

 〔そういえば、料理はしたことないな
 獲った魔物の解体とかは一応するけど
 そのあとは、調理担当とかに丸投げしてたな
 はたして、俺に出来るかな?〕

 「自分で調理するのか?」

 ちょっと困ったような表情で言うアルファードに、エリカはあっさりと言う。
 自分が、特別なことを言っている気がないのだ。
 しかし、皇族や貴族の子弟や姫君が、料理をすることなど無いという事実には、思考が行かなかったエリカである。

 まして、ある年齢まで、パパの祖父母達に預けられていたエリカにとって、料理を作ることは空気を吸うのと代わらないほど普通のことだった。
 とくに、みんな(エリカにとっての曽祖父母や祖父母、近所のジジババ)と一緒に作る、お好み焼きや焼肉のパーティーはエリカのお楽しみだった。

 だから、是非アルファードにも、その楽しい雰囲気と美味しいお好み焼きや焼肉を食べて欲しかったのだ。
 勿論、デザートのホットケーキもである。
 太るの代名詞となる炭水化物だらけとたんぱく質の献立である。

 だから、エリカはぽっちゃりなのだ。
 いっぱい動くけど、どうしても美味しいモノが大好きなので、カロリーオーバーする為に、ふくふくとしてしまう。
 身体能力はかなり高いのに、ぽっちゃりなのは、そういう理由があった。

 そして、田舎の曽祖父母が亡くなり、否応もなく自分の存在を否定する母親や姉と暮らすことになったセイで、精神的なストレスが強くなり、つい甘いモノに救いを求めてしまったお陰で、よりぽっちゃりが増したのは確かな事実だった。

 自分が、パパの実家より出て一緒に暮らすようになってから、よりぽっちゃりになった理由の自覚がないエリカは、その頃の思い出に浸るように、お好み焼きや焼肉パーティーを好んでいた。

 そう、田舎で楽しかった思い出に引き摺られて…………。
 勿論、母親と姉はそんなモノと嫌ったが、パパと兄はそれを喜んでくれたので…………はい、ぽっちゃりぽっちゃりになりました。
 閑話休題

 料理というモノをしたことが無いと判る表情のアルファードに、エリカは笑って言う。

 「うん、とても簡単な料理よ

 なんと言っても、手間が掛かるのは
 材料を切って混ぜる時だけで

 あとは、焼きあがるのを待つだけだから
 その間に、色々な話しをしながら………

 ちょっと、お酒を飲むのも有りかな?

 どうかなぁ…騎士様達も神官様達も
 魔法使い様達も全員で温かいモノを
 いっせいに食べられるの」

 エリカと一緒に、自分だけが作るのではなく、他の騎士や神官や魔法使い等も巻き込んでの企画と理解し、アルファードは楽しそうに頷く。

 「良いんじゃ無いか」

 アルファードから快諾を得たエリカは、更に続けて言う。

 「じゃ、みんなにアルが伝えてね
 そして、みんなで色々な材料を切って
 小麦粉と混ぜてって感じで料理しましょう」

 エリカの楽しそうな様子に、それだけで気分が浮かれたアルファードは楽しそうに頷いて言う。

 「ああ、こうして聞いているだけで
 すごく面白そうだな」

 こうして、今日の夕食のメニューは、エリカの提案で決まったのだった。
 
 そのコトをアルファードは、側に控えていたキデオンとレギオンを使って廻りに知らせた。
 ギデオンからの連絡でやってきたオスカーは、騎士達に調理をさせると言うエリカに苦笑する。

 「姫君、魔法騎士団には
 極僅かの例外はありますが
 貴族の子弟しかおりません

 ですから、調理などというコトは
 連れてきている下働きにさせています
 身の回りのコトはできますが……」

 そう説明するオスカーに、エリカは小首を傾げて聞く。

 「食材を切るというのは?」

 簡単なのになぁ…と、いうニュアンスを込めて言うエリカに、オスカーは首を振る。

 「魔物を討ったり、魔果を採ったりは
 出来ても、それをどうこうするなんて
 ほとんどの騎士達は出来ませんよ」

 言外にせっかくの材料が無駄になりますから…的なニュアンスで返され、エリカは小首を傾げて聞く。

 「オスカーさんもですか?」

 その問いに、オスカーはちょっと考えつつも答える。

 「私やマクルーファ、フェリックス
 クリストファー、ジャスティーなどは
 一応、出来ますね

 とは言っても、血抜きして
 塩やコショウを振って焼く程度です

 あとは、乾燥野菜と魔肉を入れて
 塩やコショウで味をつけて
 煮るスープぐらいですね

 当然、団長も似たり寄ったりですよ」

 「そうですか…だったら…
 私が、材料を切ったり…混ぜたりして…
 焼くだけにしておきますね

 せっかくの材料を無駄にしたくないので
 それなら大丈夫ですよね」

 確認するエリカに、オスカーもちょっと考えてから頷く。

 「まぁ~焼くだけだったら
 何とかなるでしょう」

 焼くだけなら大丈夫じゃないかという言葉をもらったエリカは、にっこりと笑う。

 「そうですか
 では、材料の方は私が用意しますね

 あっとぉ~…肝心なこと聞くの忘れいたわ
 この討伐に来ている人達の人数って
 何人ぐらい来ているんですか?」



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
やっと、ここまできました。
色々と聖女モノを読んだけど、お好み焼きとか無かったような気がするので、入れてみました。
中世あたり?の貴族や皇族の人達が、料理をする筈がない。
なんと言っても、戦うことが専門の騎士(基本的に男)達、魔法使い(少数の女性も混じっています)達は、貴族の中でもエリートです。
神への《信仰心》と《魔力》が、神官(男が多いですね)達の《力》の元なので、平民も2割超えて3割いくかという設定と薬草を使って薬を作るし、滋養強壮の薬膳を作るのも仕事なので、料理をするのは神官だけです。が、彼らには効力しか頭に無いので、味は問題外です(笑)
こんな設定なので、簡単に作れる料理ということで書きました。
次点は、しゃぶしゃぶとか、ナベでした(笑)
次の更新は、たぶん21時かな?

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