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第6章 野営地にて………
044★過去の聖女様には、寵愛の聖女様と言われる方が居たそうです
しおりを挟むエリカは、その内容に眼を白黒させ、語るアルベルトを見て首を傾げた。
「えーとぉ……その魔女認定された人は
瘴気の浄化は出来たの?」
素朴な質問という感じで聞くエリカに、アルベルトは大きく頷いて答える。
「はい、瘴気の浄化は確かに出来ました
だから、困ってしまったとも言うのですが…」
「どうして?」
「その魔女を何も考えずに処分した時
魔女によって浄化された瘴気が
再び、その身から出るかもとしれませんし
魔女の恨みや憎しみの負の念が
瘴気にプラスされて
世界に溢れ出る可能性もありましたから
ただ処分すれば良いというモノでは
ありませんでした」
なるべく感情が入らないように、淡々と語るアルベルトに、エリカは眉を顰めて聞く。
「じゃどうやって、魔女を排除したの?」
そんなエリカに、アルベルトはちょっと情けない表情で、肩を竦めるようにして言う。
「当時の記録によりますと
どうやっても良い知恵が出ず
そう、どうしようもないと
新たな聖女様を
こっそりと《召還》しました」
〔もしもし……そんな頻繁に……
それに、聖女と魔女で相殺ってこと?〕
エリカは、不安そうな表情で聞く。
「もしかして……
聖女と魔女を戦わせたの?」
その問いに苦笑しながら、アルベルトは首を振って答える。
「いいえ、新たに《召還》した聖女様に
魔女をどうしたら良いかを聞いたのです」
アルベルトは、過去の話しなので…的な言い回しを使うが、聖女候補として《召還》されたエリカには、ひとごとじゃなかったので、ついぽつりと言ってしまう。
「それって、なんかズルイな?」
エリカの心情を読んだアルベルトは、いっそう情けなさそうな表情になる。
そして、当事者なのに黙ったきりで、沈黙しているギデオンとレギオンを見てから、1番の当事者である(エリカを抱き込んでいる)アルファードをジト眼で見ていた。
そのアルベルトの肩をオーギュストが宥めるようにポンポンと叩いていた。
肩に感じる手に勇気づけられて、アルベルトは言う。
「私達の力不足なのは確かなコトでしたが
他に方法はありませんでした
何度神託を得ようと、神々に尋ねても
何の答えもありませんでしたから……」
アルベルトの言葉に、エリカは素直に聞きたいコトを口にする。
(とりあえず、どうなったか? 結果は?)
「それで、聖女は何と言ったの?」
エリカの問いに、アルベルトはどこか遠い瞳で、あらぬほうへと視線を彷徨わせながら、嫌そうに言う。
「自尊心を満たし、快楽を与え
楽しんだ果てに、昇天させよ
……と、おっしゃったのです」
エリカはその瞬間、嫌そうにアルファードを振り返る。
〔うわぁ~…言われたくないセリフだ………
それって、むふふの最中にってコトでしょ……
誰が、その魔女の犠牲者になったの?
なんとく、想像は付くけど………ね、アル〕
アルファードは、エリカの視線を感じて、ものすごぉ~く厭そうな顔になる。
その表情に、ちょっと溜飲の下がったアルベルトである。
「まぁ…ざっくりと言えば………
ドラゴニアンの体力と《魔力》で
ご昇天いただきました」
アルベルトの明らかに、何かをざっくりと削った話しに、エリカは突っ込む。
「話しを端折ってますよね?
魔女って、存在に嫌気がというか
嫌悪感が止まらないと思うんですよね
それで、魔女とムフフなコトが
できるんですか?」
追求の手を緩める気が無いエリカは、アルファードの顔をじっと見詰める。
その視線に、アルファードは、答えようとする。
が、それを許すオスカーではない。
「団長、皇族は、当事者の子孫なので
客観的な話しが出来ないから
説明をするなと言われていますよね
わかっていますよね、アルファード様」
オスカーは、アルファードに言葉と視線でダメ押しをすると、視線をエリカに向けて優しく言う。
「姫君、団長は、皇族です
寵愛の聖女という呼び名の意味を
想像して下さい
判ったのなら、団長に聞くコトを
止めて下さいね
可哀想でしょう…色々と………」
オスカーのセリフに、エリカは首を傾げて考える。
〔寵愛って…ただの貴族に嫁いだのなら…
絶対に付かない言葉だわ……ソレって……
皇子様とか皇帝様とか王様とかの妻
妃とか側室に付く言葉よね
寵妃…ってこと…皇族の妃
それじゃあ…アルは………
確かに当事者の子孫だわ
公平で冷静な説明は、確かに無理ね〕
エリカがオスカーの言葉で追求を諦めたのを見て取り、アルベルトはサラリとその続きを話し始めた。
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