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第6章 野営地にて………

042★エリカは、過去の聖女と性女(娼婦)の話しが聞きたい

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 エリカの言葉に頷いたオスカーは、天幕の片隅(怖くてここまでさがった)に控えている騎士に声をかける。

 「そうですか…では…ジャスティー」

 「はい」

 「アルベルト殿とオーギュスト殿を
 呼んできなさい」

 「はい」

 オスカーの命令にコレ幸いと思い、ジャスティーは騎士の礼をとると、素早く天幕を後にした。
 その姿を見送ったエリカは、ふと思う彼はどんな獣人なのかな?と何となく思う。

 そして、エリカは改めて自分の回りに居る騎士達を見詰める。
 自分にプロポーズされたと思って、オスカーに投げられたユキヒョウの獣人で白髪と紫の瞳のマクルーファを………。

 次に、未だに自分を抱き締めている銀髪に紫紺の瞳のアルファードを……。
 そして、白金に水色の瞳の何時も優しいオスカーを……。
 双子のような赤髪に緑の瞳のギデオンとレギオンを……。

 そして、影のように気配を消して立っている、日本人には有り得ない瞳と頭髪の色をまとう騎士達を……。

 エリカは、日本人に有り得ない大柄な体躯とまとう色に、本当の意味で気が付いたのだ。
 そう、やっと現実に意識がそこで追い付いて来たのだ。

 自分が、異世界に《召還》された聖女候補のひとりだというコトを、自覚する。
 そして、異世界に《転移》した自分が、もう、2度と日本に帰れないというコトも、同時に自覚した。

 魔物が居て、身体を蝕む瘴気がある世界は、《力》も《知識》も《常識》も持っていないエリカには、住み辛い世界いや命の危険しか無い世界だと………。
 その自覚によって、自分の回りにいる騎士達の姿をはっきりと自覚したのだ。

 が、しかし、所詮は危機感の無い日本人なので、騎士達を見て乙ゲーを思い出してしまうのは仕方の無いコトだった。
 そんなエリカに、アルファードが声をかける。

 「エリカ、どうしたんだ?

 なんか…初めて…俺達を見たような顔を
 しているぞ

 そんなに…俺達の会話が怖かったか?」

 自分を気遣うアルファードに、エリカは首を振って言う。

 「ううん…マクルーファさんの尻尾を見て
 異世界に居るって思ったの………

 それと…今…気が付いたけど………
 アルって…皇子様なの?」

 そうエリカに問い掛けられ、アルファードはオスカーの顔色を窺がう。
 ほんの少し前に、マクルーファが投げ捨てられたのを見ていたので、自分の答えしだいで、ペッとエリカから引き剥がされて捨てられると思ったのだ。
 だから、恐る恐るオスカーにお伺いを立てたのだ。

 「オスカー…答えても…良いか?」

 アルファードのセリフに、オスカーはちょっと考える素振りをしてから、エリカに言う。

 〔どちらも、衝撃が強そうなんですよねぇ
 でも、まだ、団長の立場の方がマシかな?

 いや、選択肢を奪うのは良くないですね
 とりあえず、姫君の為にも答えないと……〕

 「姫君、聖女様の話しを先にしますか?
 それとも、団長の話しを先にしますか?

 どちらもかなり長い話しになると思うので
 どちらかひとつですよ」

 オスカーの優しい笑顔(妹認定のエリカ限定)での言葉に、エリカは小首を傾げながら聞く。

 「選ばないとダメですか?」

 エリカの問い掛けに、オスカーは困ったような表情で言う。

 「ひとつだけの方が良いと思いますよ
 内容が…ちょっと…アレなモノですから……

 私としては…団長の話しの方が
 まだ…マシなので……できれば
 そちらにして欲しいぐらいですよ」

 オスカーの言葉から、エリカは即座に言う。

 〔もしかして、この機会のがしたら………
 聖女様のお話し…なかなか聞けないかも……〕

 「聖女様の話しが知りたいんです
 私も、聖女候補ですから………」

 エリカとオスカーが、会話している間に、神官のアルベルトと魔法使いのオーギュストがそっと天幕に入って来ていた。
 そして、エリカの聖女について知りたいという強い意思に従うことにした。

 本来ならまだ話すべきでは無い内容を、アルベルトは話すコトにしたのだった。
 アルベルトは、静かにエリカに話し掛ける。

 「姫君、聖女様の話しを聞きますか?」

 〔流石に、性女(娼婦)にはなりたくない
 だったら、頑張って聖女目指すもん………

 聖女と性女(娼婦)の話しを聞けば
 きちんと聖女になる方法が聞けるはず〕

 心で握りこぶしをしながら、アルベルトに聞きたいと言う。

 「はい…聞きたいです………その……
 特に、性女(娼婦)と薔薇の館について……」

 エリカの心情をなんとなく読み取ったアルベルトは、優しい微笑みを浮かべて頷く。

 「わかりました…では………
 とても長い話しになりますが……」







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