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第6章 野営地にて………

040★また、やらかしちゃいました

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 天幕を出でいくミカエルの背を見送ったオスカーは、マクルーファにクルッと向き直って言う。

 「マクルーファ…貸しが…
 また…ひとつ…増えましたね
 覚悟しておきなさい…と…

 団長…中央騎士団への処分者についての
 申し入れ(脅し)はご自分でしますか?」

 オスカーからの問い掛けに、アルファードは一瞬の思考もせずに即答で言う。

 「いや、今回は、マクルーファに任せる
 たまには…お前もやれ」

 「はい」

 オスカーやアルファードに、がんがん言われて、マクルーファはおちこんでしまう。
 メンタルが豆腐という訳ではないのだが、この2人を前にするとすぐにグズグスになってしまうのだ。
 そして、精神的に弱った為に、普段は押さえていた獣人としての特徴がポンッと出てしまった。

 それは、色々と考え込んでいたエリカの理性を、軽ぅ~く吹き飛ばすようなモノだった。
 マクルーファは、ドラゴニアンの血が薄れた為に、いまひとつの獣人属性が強く出た者だった。
 そう、ユキヒョウと呼ばれる獣人の末裔だったのだ。

 目の前に、エリカ憧れのユキヒョウの長くふっといふわふわの尻尾がゆらりっと横切った。
 その瞬間、エリカは、本能的にその目の前で揺れたユキヒョウ(マクルーファ)の尻尾をガッシリと握ってしまう。
 そして、何も考えずに、ただただ嬉しそうににこにこしながら言う。

 「うわぁ~…ユキヒョウだぁぁ~……
 あこがれのユキヒョウのお尻尾だぁ~……

 うふふふ……ふっわふっわで柔らかぁ~い
 あっ……ケモ耳も触ってみたいなぁ~……」

 完全に理性がとんだエリカの行動に、一瞬、その場にいた全員の動きが止まる。
 そう、あまりにも突飛な行動だった為………。

 その中で、即座に正気に戻ったが、エリカに尻尾を掴まれたマクルーファは、別の意味で理性がとんでしまい、その瞳を妖しく輝かせる。
 そして、にっこりと笑ってエリカに言う。

 〔うわぁ~い……求婚だぁ~…求婚だぁ~
 嬉しいぃ~…嬉しいぃ~……〕

 「姫君…俺に…求婚してくれるんですね
 もちろん…お受けします…結婚しましょう

 そして…可愛い子供をガンガン作りましょう
 …愛しています姫君」

 理性が綺麗さっぱりととんでしまい、ただ嬉々としているマクルーファの言葉に、驚き過ぎたエリカは何も言い返せなかった。

 〔へっ? ……えっ? ……キュウコン?
 って…えぇ~…もしかして、求婚ってコト?〕

 その瞬間、オスカーは苦みばしった表情になる。

 〔あっ…つー…理性とんでるな…バカが……
 ここは、俺がシバキ倒さないと不味いっ〕

 代わりに、アルファードが、エリカの手から、マクルーファの尻尾をそっと毟り取りポイッと捨てると、次に、拳をギュッと握る。

 〔なに、とち狂ってんだっ…コイツは
 エリカは、俺のだっ〕

 それを見て不味いと思ったオスカーが、すかさずアルファードがポイしてふわりと舞ったマクルーファの尻尾を掴み、ブンと音がする程の勢いで振り回した。
 ようするに尻尾を掴んで、天幕の出入り口付近に投げ捨てたのだ。

 流石は、獣人、人間と違って《力》があると言えよう。
 投げ捨てられたマクルーファは、尻尾の痛みと上手く受身が取れなかった痛みに正気に戻った。

 〔…へっ…えっ…いっつぅぅ~……って…
 うわぁぁぁ~…不味った…どうしよう……〕

 その途端、顔を青く染めたマクルーファに、かなりイイ具合に黒く染まったオスカーが声をかける。
  
 「馬鹿だ馬鹿だと思っていましたが……
 マクルーファ…君は本当に大馬鹿者ですね

 異界より《召還》された聖女様達には……
 私達の常識が通じないってコトを
 忘れていましたね……情けない……

 君は…慈愛の聖女の直系なのに………
 何も考えないで………

 本能のままに行動しましたね

 この馬鹿…姫君に…驚かせたコトと
 不快にさせたコトを土下座で謝罪しなさい」

 そのオスカーのセリフに、びっくりしていたエリカは………。

 〔えっとぉ~…土下座って…あの土下座よね
 ……じゃなくて……うわぁ~…どうしよう

 もしかして、エリカってば
 思いっきりやらかしちゃった〕

 シュンとうなだれているマクルーファと、その前に仁王立ちのオスカーを見てから、思わずアルファードを見上げて、エリカは後悔した。

 〔うわぁ~……見なきゃ良かったかも……
 お兄ちゃんのイイ顔より怖いかも……
 真っ黒に変身したパパ並み……不味い……
 ごめんね、マクルーファさん……〕

 そんなコトを考えている間に、オスカーの叱責にマクルーファも素直に頷く。
 自分が、理性を失ったことと現状を理解した声は、か細かった。

 「……あっ…うん…」

 マクルーファが返事をしたのに頷き、クルッと振り返ったオスカーは、それでもイイ顔でアルファードに言う。

 「団長、本人が謝罪しますので
 鉄拳制裁は止めて下さいね

 副団長の業務に差しさわりが出ますから……
 イイですね」

 念押しの入ったセリフに、アルファードはうなだれたマクルーファを見てから答える。

 〔ここで、怒りにまかせてマクルーファを
 殴って仕事を増やされるなんて御免だ
 しょうがない……正気になったようだし……〕

 「チッ…殴ったりしない…これでイイか?」

 アルファードから言質を取ったオスカーは、うなだれきっているマクルーファへと向き直って言う。

 「ええ、それでイイです

 さぁ…団長から御許しをもらうためにも
 マクルーファ…さっさと姫君に謝罪しなさい

 ほら…土下座しなさい…」







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