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第5章 魔の森にて……

032★最初のひと言って………

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 アルファード団長は、魔の森の奥に辿り着いた。
 そこで愛馬ウェンドールから降りると何の恐れ気も無くスタスタと歩き、何故か一緒に居るキメラとサラマンダーをサクッと倒した。

 彼は、珍しい祖先帰りなので、ドラゴニアンとしての膂力を持っていたのだ。
 その上に、【身体強化魔法】をかけると、純粋な飛竜と同等以上の《力》をふるうことが出来るのだった。

 その莫大な《パワー》と《スピード》で、魔剣と呼ばれる愛剣【雷帝剣】を振るい、どちらの首も一撃で切り落としたのだ。

 キメラとサラマンダーから《魔石》を取り出した後、アルファード団長は、お約束の袋を取り出す。

 そう【空間魔法】と【時空魔法】のかかっているマジックアイテムの袋に、キメラとサラマンダーをひょいひょいと入れたのだった。

 辺りを見回して、もう他に魔物が居ないことを視覚と感覚で確認(極稀に、存在を隠すような魔物もいるので)して、自分に頷く。

 〔オスカー副団長に言われた討伐は終わった
 本体と《魔石》の回収もした………

 見えるところに魔物は居ないし
 感覚に引っ掛かるモノも無い……良し〕

 討伐が終わったアルファード団長は、ウェンドールのもとへ戻りさっと騎乗し、一目惚れしたエリカのもとへと駆けて行くのだった。
 
 一方のオスカーは、気絶?しているエリカを腕に考えていた。
 エリカの体調を思いやるなら、さっさと甲冑を脱がせるべきなのだが……。

 が、アルファード団長の思い(恋愛感情?と執着?)を思うと、自分がエリカの甲冑を脱がせるのは、かなりのリスク(アルファード団長に嫉妬されるとか、怨まれるとか怒られるなどの負の感情を向けられる)ではないか?と…………。

 なまじ有能な男なので、色々な事態を想像して悩んでしまったのだった。
 それでも、根っこのところが優しい男なので、エリカが少しでも楽になれるようにとの思いから、兜だけを脱がせることにしたのだった。

 色々と悩んで行動したオスカー副団長だったりする。
 オスカー副団長が、心の折り合いをつけてエリカの兜を脱がせた、その頃。
 聞きなれた、馬の足音が聞こえてきた。

 その音を拾ってしまう自分の耳の良さに、ちょっと切なくなってしまう。
 勿論、オスカー副団長の側に居た騎士達は、全員その音を聞いていた。

 そう、S級の魔物、それも2匹同時に、倒してきたとしか思えないほどの時間しか経っていなかったから…………。

 誰だって上司(それも有能で、やたらめったら強い)が居ない方が…なんとなく幸せだと思うものなのだから………。


 が、そんな部下の心情を、情状酌量する気が無い俺様なアルファード団長は、愛しのエリカが目覚めた時に、自分を目にして欲しいと思い、素早く魔物2匹を討伐してきたのだった。

 アルファード団長としとは、何が何でもエリカの目覚める時に、1番最初に瞳に映りたいという欲望に忠実だっだけなのだか…………。

 そんな彼に、チクチクと厭味いやいや親切な言葉の数々を教育的指導とも言いえる色々なコトを、延々と言い聞かせる予定のオスカー副団長がいた。
 が、エリカを気遣う優しい彼は、先に甲冑を脱がせるコトを優先させた。

 「お帰りなさい、団長
 討伐、お疲れ様でした

 と、いうことで、本当に
 ちょうど良いところに来てくれましたね

 私が支えますから
 さっさと姫君の甲冑を脱がせましょう
 このままでは身体余計な負担が生じます」

 淡々と何でも無いことのように言うオスカー副隊長と、その腕に抱えられたエリカを見て、うっすらと頬を染める。 

 〔良かったぁ…間に合った…
 まだ目覚めていないようだな

 でも、まだ甲冑も脱がされてない
 って…俺が外すのか…うっ…良いのか?
 いや、やましい気持ちは無いけど…けど……〕

 「あっ…うっ…うん」

 アルファード団長のちょっとした躊躇(ためら)いを、オスカー副隊長はシレッとした表情でからかう。

 「何、頬を染めているんですか?
 …50男なのに……姫君は…
 貴方の騎士服を着ていますよ

 何、今更お子様みたいに
 恥ずかしがっているんです」

 オスカー副団長のからかいに、つい無意識で頬を膨らませたアルファード団長はむっとした顔で言い返す。

 「おっお前なぁ~俺は、まだ、48才だ
 102才のお前に言われたくないぞ

 それに、俺達に年齢は
 あんまり意味ないだろう」

 普段の何事にも冷静沈着なアルファード団長が、年齢相応(一応、長命種なので)の少年らしい反応をするのを見て、オスカー副団長は苦笑する。

 「はいはい、姫君に対して
 美少年で通すおつもりなんですね

 わかりました
 貴方の予定に添いましょう

 って、コトで脱がせましょう」

 亀の甲より年の功という言葉が似合いそうな程、オスカー副団長は、難なくアルファード団長を丸め込む。

 それが薄々わかっていても、有効な手を見出せない哀れなアルファード団長だった。

 その姿に同情しながらも、何故か知ってる格言[触らぬ神に祟りなし]とか[藪を突いて蛇を出す]を頭に浮かべ、心情的に遠くで頑張れと声援しているだけの騎士達だった。

 「あっうん」

 「あぁ……言い忘れましたが……
 姫君は、貴方好みの抱き心地のよさそうな
 身体をしていますので………

 不必要に触らないように…………
 自制して下さいね」

 オスカー副団長は、何かと仕事を押し付けて、魔物討伐にいそしむアルファード団長に含むところがたぁ~っぷり有った。

 だから、オスカー副団長は、年上の経験豊富な男から、未熟な?初恋すら未経験な?少年へのアドバイス?教育的指導?追及?という色々な何かが入っている言葉を送る。

 それに対して無駄な抵抗をするアルファード団長だった。

 「おっお前…俺を何だと思っているんだ?
 お前の上司で…皇族なんだぞ

 俺が、エリカに無体なまねするわけ
 無いだろう………って、判れよ」

 「初恋も未経験で…………」

 その時間つぶしのお陰で、エリカの目覚めに間に合ったアルファード団長だったのでした。

 エリカと視線があったアルファード団長は、すかさずその綺麗な顔を使って誑し込めと唆されていたので、彼に出来る限界まで優しい表情でにっこりと笑った。

 オスカー副団長を始めとする騎士達に、教育的指導を受けたから…………。
 なんと言ってもアルファード団長は、有能で苛烈で強烈な男として有名だった。

 普段の笑顔は、相手にプレッシャーを与える為の冷たい笑顔、馬鹿にした笑顔、怒りを滲ませた笑顔、嫌みったらしい笑顔などという代物だったので………。

 また、大抵の騎士達と同じように、女嫌いだったから……。
 それでも、一目惚れしたエリカの為に、彼は頑張って(ちょっとひきつりながら)優しい笑顔でエリカを見詰めた。

 「エリカ、大丈夫か?」

 それに対してのエリカの第一声は、ちょっといやかなり惨かった。

 「うっわぁ~お兄ちゃんより
 美少年って初めて見たわぁ~………」






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