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第2章 聖女の資格について

007★恵里花が聞きそこねた、神官による聖女候補についてのお話し2

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 淡々と説明するワルターは、一度聖女候補達を見て、少し首を傾げた。

 〔おや? 7人《召還》されたはずなのに
 何時の間にか、6人になっていますね
 後で、確認しなければ…………

 よもや、試練の森に行く前に
 手をつけるような馬鹿者が………

 あっ……もしかして…第1皇子…
 帰還(かえ)っていたのか?
 嗚呼…確認しなければ…………

 でも、相手が第1皇子だったら………

 いや、落ち着け、私
 今は、この6人の聖女候補に
 説明をするのが先だ〕

 内心で困ったワルターは、無自覚にふんわりと微笑(わら)ってみせながら言う。

 「聖女の資格を手に出来ない方は
 滅多にいませんので………

 真面目に修行すれば………
 大丈夫なはずですよ」

 4人目の聖女候補・田中蘭(たなか らん)は、ワルターの説明にちょっと希望を持った。
 彼女は、長い髪を銀○の美少女のように2つのおだんごにしていた。
 が、見た目はかなり、アレなのだが、性格は全然違うので、ぼそっと言う。
 
 「その修行って?」

 ワルターは、その質問に対して、魔法知識が無いのを前提に、簡素に判り易く説明する。

 「まずは、精霊魔法とも呼ばれる
 火と水と風と土の内で

 適正のある属性の魔法を
 中級まで取得していただきます」

 その説明を聞いた瞬間、5番目の聖女候補・南条鈴蘭(なんじょう すずらん)は、内心で呟いた。

 〔どこの無理ゲーよ〕

 そう思いながらも、ゆるふわウェーブの髪を指先に絡めながら、震える声で言う。

 「魔法なんてモノ
 私達の世界に無かったんですけど……」

 その言葉に乗って、6番目の聖女候補・畑中桔梗(はたなか ききょう)が、アップにしたかなりのロングヘアーの一部の後れ毛を大きく揺らして、思っていたコトをはっきりと言う。

 「習ったコトも無い魔法を取得しろって
 何の無理ゲーなの」

 彼女の言葉に、同感と言う風に6人全員が頷く。

 「だいたい、魔法を使う為の《魔力》が
 あるかどうかもわからないのに…無理よ」

 口々にそう言う聖女候補の美少女達に、説明をしていたワルター神官が、確信を持った口調で言う。

 「それは、大丈夫ですよ」

 「「「「「「えっ?」」」」」」

 びっくりして自分を見る聖女候補達に、ワルターは苦笑する。

 「聖女候補の《召還》時には《魔力》を持ち
 《浄化》の《力》を持つ少女という設定を
 魔法陣に書き込んでおりますから……」

 だから《召還》された者は、選ばれた者なんですと言外に含ませる。
 それを聞いた聖女候補は、安心して思い思いに発言する。

 「じゃあ…私達は《魔力》を持っているのね
 なんだぁ~…良かったぁ~………」

 「でも、魔法の修行なんてしたコト無いのよ
 それって…覚えられるかしら………」

 「そうよねぇ~…ゲームだとさぁ~………

 《魔力》が有るかどうかを子供の頃に調べられて
 魔法の基礎や応用を教える魔法学園に入学して
 魔法使いとか魔術師の修行をするって設定よね

 私達だと、遅すぎるんじゃないの?」

 年齢的に…と、内心で6人共に溜め息を吐いていた。

 「うんうん…修行の時間が滅茶苦茶掛かるとか?」

 「えっーそれだと間に合わないとか?」

 再び、口々に言う聖女候補の6人に、ワルター神官はアルカイックスマイルを浮かべて言う。
 一応、説明をしているワルター神官は、それでもお愛想をしているつもりなのだ。

 「修行の時間は
 半年から1年ほどで終わります」

 魔法を習得する期間が、思っていたよりもかなり短かかったので、聖女候補達は驚きの声を上げる。
 
 「「「「「「えっ…ほんとぉ~?」」」」」」

 もっとも、その声音は、嬉しさが溢れていた。






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