7 / 450
第2章 聖女の資格について
007★恵里花が聞きそこねた、神官による聖女候補についてのお話し2
しおりを挟む淡々と説明するワルターは、一度聖女候補達を見て、少し首を傾げた。
〔おや? 7人《召還》されたはずなのに
何時の間にか、6人になっていますね
後で、確認しなければ…………
よもや、試練の森に行く前に
手をつけるような馬鹿者が………
あっ……もしかして…第1皇子…
帰還(かえ)っていたのか?
嗚呼…確認しなければ…………
でも、相手が第1皇子だったら………
いや、落ち着け、私
今は、この6人の聖女候補に
説明をするのが先だ〕
内心で困ったワルターは、無自覚にふんわりと微笑(わら)ってみせながら言う。
「聖女の資格を手に出来ない方は
滅多にいませんので………
真面目に修行すれば………
大丈夫なはずですよ」
4人目の聖女候補・田中蘭(たなか らん)は、ワルターの説明にちょっと希望を持った。
彼女は、長い髪を銀○の美少女のように2つのおだんごにしていた。
が、見た目はかなり、アレなのだが、性格は全然違うので、ぼそっと言う。
「その修行って?」
ワルターは、その質問に対して、魔法知識が無いのを前提に、簡素に判り易く説明する。
「まずは、精霊魔法とも呼ばれる
火と水と風と土の内で
適正のある属性の魔法を
中級まで取得していただきます」
その説明を聞いた瞬間、5番目の聖女候補・南条鈴蘭(なんじょう すずらん)は、内心で呟いた。
〔どこの無理ゲーよ〕
そう思いながらも、ゆるふわウェーブの髪を指先に絡めながら、震える声で言う。
「魔法なんてモノ
私達の世界に無かったんですけど……」
その言葉に乗って、6番目の聖女候補・畑中桔梗(はたなか ききょう)が、アップにしたかなりのロングヘアーの一部の後れ毛を大きく揺らして、思っていたコトをはっきりと言う。
「習ったコトも無い魔法を取得しろって
何の無理ゲーなの」
彼女の言葉に、同感と言う風に6人全員が頷く。
「だいたい、魔法を使う為の《魔力》が
あるかどうかもわからないのに…無理よ」
口々にそう言う聖女候補の美少女達に、説明をしていたワルター神官が、確信を持った口調で言う。
「それは、大丈夫ですよ」
「「「「「「えっ?」」」」」」
びっくりして自分を見る聖女候補達に、ワルターは苦笑する。
「聖女候補の《召還》時には《魔力》を持ち
《浄化》の《力》を持つ少女という設定を
魔法陣に書き込んでおりますから……」
だから《召還》された者は、選ばれた者なんですと言外に含ませる。
それを聞いた聖女候補は、安心して思い思いに発言する。
「じゃあ…私達は《魔力》を持っているのね
なんだぁ~…良かったぁ~………」
「でも、魔法の修行なんてしたコト無いのよ
それって…覚えられるかしら………」
「そうよねぇ~…ゲームだとさぁ~………
《魔力》が有るかどうかを子供の頃に調べられて
魔法の基礎や応用を教える魔法学園に入学して
魔法使いとか魔術師の修行をするって設定よね
私達だと、遅すぎるんじゃないの?」
年齢的に…と、内心で6人共に溜め息を吐いていた。
「うんうん…修行の時間が滅茶苦茶掛かるとか?」
「えっーそれだと間に合わないとか?」
再び、口々に言う聖女候補の6人に、ワルター神官はアルカイックスマイルを浮かべて言う。
一応、説明をしているワルター神官は、それでもお愛想をしているつもりなのだ。
「修行の時間は
半年から1年ほどで終わります」
魔法を習得する期間が、思っていたよりもかなり短かかったので、聖女候補達は驚きの声を上げる。
「「「「「「えっ…ほんとぉ~?」」」」」」
もっとも、その声音は、嬉しさが溢れていた。
11
お気に入りに追加
2,241
あなたにおすすめの小説
その聖女、娼婦につき ~何もかもが遅すぎた~
ノ木瀬 優
恋愛
卒業パーティーにて、ライル王太子は、レイチェルに婚約破棄を突き付ける。それを受けたレイチェルは……。
「――あー、はい。もう、そういうのいいです。もうどうしようもないので」
あっけらかんとそう言い放った。実は、この国の聖女システムには、ある秘密が隠されていたのだ。
思い付きで書いてみました。全2話、本日中に完結予定です。
設定ガバガバなところもありますが、気楽に楽しんで頂けたら幸いです。
R15は保険ですので、安心してお楽しみ下さい。
異世界召喚に巻き込まれました
ブラックベリィ
恋愛
気分転換として、巻き込まれモノも書いてみようかと………。
でも、通常の巻き込まれは、基本ぼっちが多いようなので、王子様(笑)を付けてみました。
なんか、どんどん話しがよれて、恋愛の方に傾いたので、こっちに変更ます。
【完結】魅了が解けたあと。
乙
恋愛
国を魔物から救った英雄。
元平民だった彼は、聖女の王女とその仲間と共に国を、民を守った。
その後、苦楽を共にした英雄と聖女は共に惹かれあい真実の愛を紡ぐ。
あれから何十年___。
仲睦まじくおしどり夫婦と言われていたが、
とうとう聖女が病で倒れてしまう。
そんな彼女をいつまも隣で支え最後まで手を握り続けた英雄。
彼女が永遠の眠りへとついた時、彼は叫声と共に表情を無くした。
それは彼女を亡くした虚しさからだったのか、それとも・・・・・
※すべての物語が都合よく魅了が暴かれるとは限らない。そんなお話。
______________________
少し回りくどいかも。
でも私には必要な回りくどさなので最後までお付き合い頂けると嬉しいです。
番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる