上 下
275 / 450
第15章 まずは小姑を片付けないと………

269★団長が姫君を抱きしめたら、黒子に徹します

しおりを挟む


 エリカ達がアルファードの待つ執務室前に、あと少しという距離で、何時ものように扉が開く。
 エリカを待ちきれないアルファードが、獣人(=退化しているけどドラゴニアン)の鋭い聴覚を使って愛するエリカの足音を聞きつけて、扉の前に走り開けるのだ。
 扉を開けて自分を待っているアルファードを見たエリカは、何時ものように嬉しいとい表情で言う。

 「アル、待っていてくれたの?」

 「ああ、エリカが
  俺のところに来るのを
  見ると嬉しくなるから

  つい落ち着き無く扉を
  開けてしまうんだ」

 「うふふせっかちなアルね‥‥‥
  でも、大好き」

 「愛しているよ、俺のエリカ」

 周りの生温るい視線を、羞恥心から見ない振りをする、エリカ。
 そんな心情に気付かないし、周りの視線なんかまるで気にならないアルファードは、しっかりとエリカを抱きしめて、嬉しそうに軽いキスをする。
 その間は、守護騎士達もワゴンを押していた従者も、気配を消して立ち止まって、待つのがお約束だったりする。

 廊下を行きかう騎士達や従者達も、黙って気配を消して黒子に徹するのだ。
 ここで、下手に気配を出して歩き、エリカの羞恥心をあおったりすると‥‥‥大変なコトになるとみんな知っているからだ。

 そう、以前から何度も目撃されているのだが‥‥‥抱き合っているときに視線を感じると、エリカは羞恥心を取り戻してしまうのだ。
 そうするとエリカは真っ赤になり、アルファードの腕の中から無理矢理抜け出て、見られた恥ずかしさで勢い良く駆け出して、部屋に戻ってしまうから‥‥‥。

 ちなみに、無属性の身体強化を無意識で発動している為、その時のエリカは呆れる程早かったりする。
 その後を必死に駆け、なんとかエリカの護衛としての位置に辿り着く騎士達の姿が見れるコトになるのだ。

 そして、後に残るのは、愛しいエリカに置いていかれ、呆然としたアルファードと、ワゴンを掴んでいる従者達と、その原因を作った者達だったりする。

 過去には、原因になった者達は‥‥‥。

 駆け去るエリカは、羞恥心に苛まれているので、アルファードが部屋に戻っても会ってくれない。
 そして、愛するエリカに相手にされなくなった原因に、当然のように八つ当たりするというパターンになる。

 とばっちりは、誰もがイヤなので、犯人?の騎士達は、オスカー達に拘束される。
 そこに戻って来たアルファードが、漆黒のオーラをまとい、獰猛な微笑みを浮かべて言う。

 「さぁ~魔物討伐用の
  特別訓練をしようか?」

 「そうですねぇ~‥‥‥
  このところ、戦いが
  温い気がしますから‥‥‥」

 「たまには、全開もイイよな」

 団長アルファードだけでも持て余すのに、副団長のオスカーとマクルーファまで、参戦する訓練って‥‥‥死亡フラグしかない。
 こうして、エリカの意識が正常に戻るまで、地獄の特訓が終わらないというコトになるのだ。

 魔法騎士団の訓練場は、エリカ達が住んでいる魔法騎士団本部からちょっと離れている。
 魔法騎士団本部にあるのは、騎士団の財務、政務などを執る執務室などや食料や武器、備品(野営用品など)が、倉庫内に用意されている。
 ただし、それぞれがインベントリ機能のついた《魔倉庫》の中に入れてある。

 ちなみに、それは一見するとただの頑丈な箱に見える。
 その箱に、まとめて入れてあるので、かなりの量を狭い空間に収めるために、代々そうなっているのである。

 騎士や従者、騎士見習いや従者見習い、それに下働きの者に、武器などを作る職人も本部内に住んでいる。
 一応、住める資格は、独身者であることである。

 ただ、幹部になると、結婚していても、休暇以外は本部に住み着いている。
 この辺りは、何処の騎士団でも一緒である。
 最上階に、団長や副団長の個人的な部屋と、各種執務室がある。

 次階に、隊長達の個人的な部屋と各種執務室がある。
 その下にというように、階級によって住む階が違っているのだ。
 なお、食堂は上位騎士達と、下位騎士達と、従者達や下働きと別れている。

 従者達などの下働きは、外にある別棟の食堂で食べる。
 見習いの騎士達は、生家の階級によって、上位騎士用(伯爵家以上)の食堂か、下位騎士用(子爵家以下)の食堂で食べるか‥‥‥が決まる。

 だから、エリカを走らせた原因の騎士達は、上位騎士達なのだ。
 それなのに、気配を消すという配慮を怠った=腑抜けていると、判断される部分もあるのだ。

 こうして、不心得者の騎士達は、泣く泣く訓練場に行き特訓を受けるコトになる。
 勿論、所属している隊の騎士達が全員同じ立場になる。
 ついでに、研修を受けている騎士見習いも‥‥‥。

 当然のように従者も従者見習いも特訓を受ける。
 ここで言う、従者は、騎乗しない兵士を言う。
 だから、戦う能力を有している。

 実家にお金が無い‥‥‥要するに貧乏な家なので、魔法学園の騎士課に進学できなかった者達である。
 なお、現役の従者の推薦状が無いと成れないのは、騎士と一緒です。

 ただ、魔法騎士団で従者として規定の年数を務めるて、辺境騎士団に、騎士それも下位士官として就職できます。
 ですから、能力のある者達のみで構成されています。

 ついでに、容姿も判断基準に入りますので、エリカ達のここには美形の男しかいないのか?という感想は当然なんです。
 閑話休題。











しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

その聖女、娼婦につき ~何もかもが遅すぎた~

ノ木瀬 優
恋愛
 卒業パーティーにて、ライル王太子は、レイチェルに婚約破棄を突き付ける。それを受けたレイチェルは……。 「――あー、はい。もう、そういうのいいです。もうどうしようもないので」  あっけらかんとそう言い放った。実は、この国の聖女システムには、ある秘密が隠されていたのだ。  思い付きで書いてみました。全2話、本日中に完結予定です。  設定ガバガバなところもありますが、気楽に楽しんで頂けたら幸いです。    R15は保険ですので、安心してお楽しみ下さい。

【完結】魅了が解けたあと。

恋愛
国を魔物から救った英雄。 元平民だった彼は、聖女の王女とその仲間と共に国を、民を守った。 その後、苦楽を共にした英雄と聖女は共に惹かれあい真実の愛を紡ぐ。 あれから何十年___。 仲睦まじくおしどり夫婦と言われていたが、 とうとう聖女が病で倒れてしまう。 そんな彼女をいつまも隣で支え最後まで手を握り続けた英雄。 彼女が永遠の眠りへとついた時、彼は叫声と共に表情を無くした。 それは彼女を亡くした虚しさからだったのか、それとも・・・・・ ※すべての物語が都合よく魅了が暴かれるとは限らない。そんなお話。 ______________________ 少し回りくどいかも。 でも私には必要な回りくどさなので最後までお付き合い頂けると嬉しいです。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

【完結】聖女を害した公爵令嬢の私は国外追放をされ宿屋で住み込み女中をしております。え、偽聖女だった? ごめんなさい知りません。

藍生蕗
恋愛
 かれこれ五年ほど前、公爵令嬢だった私───オリランダは、王太子の婚約者と実家の娘の立場の両方を聖女であるメイルティン様に奪われた事を許せずに、彼女を害してしまいました。しかしそれが王太子と実家から不興を買い、私は国外追放をされてしまいます。  そうして私は自らの罪と向き合い、平民となり宿屋で住み込み女中として過ごしていたのですが……  偽聖女だった? 更にどうして偽聖女の償いを今更私がしなければならないのでしょうか? とりあえず今幸せなので帰って下さい。 ※ 設定は甘めです ※ 他のサイトにも投稿しています

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

異世界召喚に巻き込まれました

ブラックベリィ
恋愛
気分転換として、巻き込まれモノも書いてみようかと………。 でも、通常の巻き込まれは、基本ぼっちが多いようなので、王子様(笑)を付けてみました。 なんか、どんどん話しがよれて、恋愛の方に傾いたので、こっちに変更ます。

王命を忘れた恋

須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

処理中です...