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024★少年を探そう ◆side隣国の冒険者達

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 盗賊職で、そういうコト専門のフランがダンジョントラップの落とし穴ギミックがあったと思われる場所を探す間に、俺達はヘルファングの落とした魔石とドロップを回収する。

「ふむ、俺の方は魔石だけだったが、スルトとジュードが組んで討伐したヤツは、毛皮を1枚ドロップしたみたいだな」

 サラキの言葉に、俺はちょっとホッとする。

「それは助かるな。どうやら、このダンジョンはドロップが渋そうだ。ただ、フランが肉を持って来たコトを考えると、食える肉の方にドロップの比重が重いのかもしれないな」

 俺の言葉に、ディオがぽつりと言う。

「そりゃー……あんなのが、宿屋の食事になるくらいだ。普通に、肉なんてあまり食べられないからじゃないか?」

「だな、確かダンジョンは知恵あるモノの欲望に反応するって言う話しもあるからな」

 ジュードが頷きながら、フランを見て首を振る。

「アレは、しばらくかかりそうだな。斥候として行って帰って来て、俺達と進んだ時に、ダンジョントラップの場所が変わっていたようだから、時間で変化するのかもしれないな」

「そうだな」

「しかし、階層を移動する階段にまで魔物が出現するタイプは厄介だよなぁ」

「本当になぁ………はぁ~……」

 果たして、あの少年は無事だろうか?

 全員が同じコトを考えて、ヘルファングと対峙していた時の少年を思い浮かべる。
 長剣を構えているさまは、そこそこだったし、何より冷静沈着なようすだった。

 そう言う意味では、ひとりになったコトに慌てなければ、意外と無事でいるかもしれない。
 くしくも、全員が同じ結論に到った頃、フランは首を振る。

「残念だけど、時間で変化するようで、今は落とし穴のトラップのギミックが隠れちまっている」

 それを聞いて、サラキが当然のように言う。

「となると、このまま階段を降りて魔物討伐しながら、あの少年を探した方が良いかもしれないな。落下したのだから、下の階層に居る可能性のほうが高いからな」

「確かに、その方が良いかもしれないな」

「ああ、それにドロップ品か宝箱の取得物が、最低人数分は必要だからな」

 まず最優先が、自分達が帰国する為に必要なダンジョンの取得物だという共通認識に、俺は頷く。

「そうだな……まして、あの少年を連れ帰るには、それ相応の理由が必要かもしれないしな」

「それな。まず間違いなく、あの少年は身分証なんてモン持ってないだろう」

「まぁ…確実に、身分証に相当するモノも持って無いだろうなぁ」

「だな、ガルドル王国の兵士達が、流れの冒険者パーティーである俺達に、理由を付けてていよく押し付けるくらいだからな」

「……はぁ~……本当に、ガルドル王国ってさぁ……最低だよなぁ………」

 少年を押し付けられた時のコトを思い出し、俺は溜め息をひとつ吐いて、肩を竦めて言う。

「それもこれも、落とし穴トラップに墜ちたあの少年が無事で、俺達が見付けられたらの話しだろう」

「なら、此処でグズグスしないで、さっさと下に降りて魔物討伐しながら、少年の捜索をしよう」

「だな……んじゃ…まずは、魔物討伐して魔石とドロップ品のゲットだな」

「ついでに、宝箱を探そう」

 まだそこまで探索されていないらしいコトを聞いていたので、宝箱がある可能性もあるので、俺達は四階層へと降りた。
 斥候として先行で確認したフランがゲットしたドロップ品と同じ、ワイルドボアとカラーターキーの肉を手に入れるコトが出来た。

 他にも、ホーンディアなどが居て、鹿肉もゲットするコトが出来た。
 が、階段を駆け上がって来たヘルファングは一度も見かけるコトなく、俺達は五階層へと降りた。

 四階層を確認してみたが、少年の気配は微塵も感じられなかったので、更に階下へと降りたのだ。
 あの落とし穴の行先が何階層か判らないので、取り敢えず探索しつつ下へと向かう。

 勿論、便利な地図など無いので、簡易的なモノを作っている。
 この地図も、ある意味で取得物と同等の価値があるので、めぼしいモノが得られなかった時の為に、提出する予定だ。

 どうせ、再びこのダンジョンを訪れるコトは無いからだ。
 少年の身柄と言うモノは確保できなかったが、異世界人の召喚があったという事実は判明している。

 だから、冒険者ギルドに提出する取得物か手に入ったら、このガルドル王国を出て、2度と踏み込む予定は無い。
 とは言え、まだ充分な取得物は無いし、あの少年も見付かっていないので、もう少し探索する予定だが………。

 と、思っていると、先行していたフランが戻って来た。

「リーダー…この先の見た目が草原の部分、結構なトラップがあった」

 その口調から、トラップの場所だけ確認して、急いで戻って来たようだ。

「そうか……で、何をそんなに慌てている」

 俺の問いかけに、フランはちょっと微妙な表情になる。

「気配だけだけど、あの少年のモノを感知した………けど、薄いんだよなぁ~……」

 その言葉に、俺は思わず走りだそうとして、サラキに肩を抑えられる。

「落ち着け、クロード。フランはダンジョントラップがあると言ったろう」

 サラキに続いて、ジュードが頷いて言う。

「そうだよ、リーダー…こういう時こそ、慎重にだよ。気配があるってコトは、まだ生きているって証拠だ」

「怪我をしているようなら、俺とジュードで治療すれば良いだけだ。幸い、あっち(マティアス皇国)のポーションも持って来ているからな」

 その言葉に、俺はちょっと落ち着く。
 そう、ポーションすらも、あっち(マティアス皇国)とこっち(ガルドル王国)では、質がだいぶ違うのだ。

 勿論、祖国のポーションの方が断然質が良いのは確かな事実だ。
 どうもガルドル王国のポーションは、妙なモノが混ざっているような感じで、購入していない。

 こういうカンは大事なので、俺達は極力ガルドル王国の商品の購入は控えていた。
 そして、それは正解だったと思った。

 たまたま使用しているところを目撃したが、ほんの一瞬だが、蛇の鱗のようなモノが浮かんだのを見てしまったのだ。
 ちなみに使っていたのは、ガルドル王国の兵士だ。

 そう、あの少年を俺達に押し付けた、あいつらだ。

 その時に思ったのは、なんだアレ?
 ガルドル王国のポーションって、そんなの浮かぶのか?

 だったコトは言うまでもない。
 
 






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