幻獣の契約者

ブラックベリィ

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0025★全部忘れたい

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 煌牙の言葉に、陽翔は言われた意味が理解できずに首を傾げる。

〖えーとぉ……それってどういう意味で言っています?
 もしかして、僕の記憶を消せるってコトでしょうか?
 っていうか……なんですか?
 ……そんな哀しそうな顔して?〗

 陽翔の感情が良く出る表情を読み取り、煌牙は言葉を続ける。

「ようするに、今日あったコトを記憶の奥底に封じてやる。
 ただし、次に俺と会うまでの間だけの話しだけどな。
 俺との行為のセイで、日常生活に支障が出たら大変だからな。
 陽翔は、俺の大事な【契約者】だから、会わない間だけだ」

 煌牙の言った意味を理解し、陽翔は確認のように問い返す。

「それって、煌牙と離れている間は思い出さないってこと?
 でもって、次に煌牙と僕が出逢うまでの間って言う、期限付きで意味であってる?」

「ああ…そうだ…俺と出逢ったら記憶は思い出してもらう…俺には、陽翔は堪らなく魅力的な【契約者】だからな。
 これっきりっていうのは、流石に無理だけどな」

 煌牙の言葉から、今回限りではないコトを知り、開放されない絶望を味わいつつも、陽翔は無意識にクッと唇を噛む。

〖確かに、後半はかなり気持ちイイ思いもしたけど。
 怖くて気持ち悪くて…泣き喚いても許されなかったコトなんて、このまま覚えていたくない。
 何よりも、なんかのはずみで思い出して起きるだろうフラッシュバックなんてモンも怖いし〗

 陽翔は、煌牙が気分が変わって激高するかもしれないコトに怯えつつも、言葉にして確認する。

「それって僕が望めば、次に煌牙に出逢うまでは、今日のコトを忘れていられるってコトですよね」

〖どうやら、本当に煌牙にとっての【契約者】と言う僕と言う存在は、大事なんですね。
 だから、そんな哀しそうな顔してるんですね。
 でも、御免ねぇ煌牙……僕は今日のコトを忘れたい〗

 確認する陽翔に、煌牙は明確に頷く。

「ああ、その通りだ、陽翔……お前は、俺の大事な【契約者】だ。
 そして、傍にいるなら手を伸ばす、お前とヤりたいからな。
 記憶を封じたまま、初めての状態でレイプされたくないだろ。
 まぁ~そういうシチュエーションが好きだって言うなら、俺はかまわないがな…どんな陽翔でも楽しめるからな。
 だが、陽翔は、毎回、今回みたいなシチュエーションで俺のモノを味わうのは、流石にイヤだろう?」

 その言葉に、陽翔は一瞬で自分の感情がいっぱいいっぱいになってしまい、思わず本音を零れ落とす。

「ひっく……ひと時でも……忘れられるなら…全部…忘れたいよ。
 っ…こんな……あうぅぅ…ひっく……悪夢なんて…いらない。
 それなら次に会うまでで良いから…全部忘れさせてよ、煌牙」

 怒らせる危険があると理解っていても、ほとばしった激情はとまらず、陽翔は煌牙に泣き付く。
 【契約者】として大事にしたい相手からの残酷な言葉にも、自分のしたコトを自覚している煌牙は、静かに応じる。

「そうだよな……俺にレイプされたコトなんて…忘れてぇ~よな。
 いや陽翔の答えなんて、最初っから判っていたコトだけどな」

 煌牙の平坦な声音での言葉に、陽翔は不味ったと内心思いながら、恐る恐る顔を上げる。

〖えっとぉ……煌牙にされたコトを全部忘れたいから記憶を封じてって言ったのに、もしかしなくても怒ってないの?
 本当に煌牙は怒ってないの?
 それに、なんかさっきより更に哀しいそうに見えるんだけど。
 もしかして、本当に僕自身が欲しかったって思って良いの?
 でも、煌牙と今日までに、出逢ったコトないと思うんだけど〗

 ポーカーフェイスの中に苦いモノを噛んだような感情を隠して、煌牙は陽翔の望んだ答えに頷く。

「良いだろう……それが【契約者】の望みだというなら………」

〖あっ…また……煌牙が…僕を【契約者】って言ってる……それっていったいどういう意味なんだろう? 知りたいけど知りたくない。
 湧き上がった性欲を満たす為に、たまたま一人になった僕が、煌牙の目に付いたんじゃなってコトなのかな? わからないけど。
 それって単なる性欲発散の為じゃなかったってコトなのかな?
 それに、僕とのコトは、今回限りじゃないってコトなんだよね。
 次に、煌牙に会って、記憶を思い出した時に、改めて聞こう。
 今は…もう…なんか…お腹がいっぱいいっぱいで限界です〗






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