幻獣の契約者

ブラックベリィ

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0010★血と肉を介在した【契約】を

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 腕の中に捕らえた少年が、自分という幻獣の【契約者】になりうる者かを調べる為に、そのまま身体的な反応を視る。

 少年の身体に照射した【魔力】は、煌牙の望み通りにスゥーっとなにごともなく浸透する。
 【魔力】がその身体を通り抜けて拡散せずに、ちゃんと吸い込まれたコトを確認し、煌牙はホッとする。

〔ラッキー………マジ当たりだせ〕

 腕の中に捕らえた少年が、日本という大地に煌牙が根刺す為の【契約者】として最適な者と認識した次の瞬間。
 煌牙は、その衣服を引き剥がしにかかっていた。

 なぜなら【理】によって強制的に、本来ある場所へと帰還される刻限が刻々と迫っていたからである。

〔急いで、この腕の中の少年と血と肉を介在した【契約】を結ばなければならない。
 思っていたよりも、残された時間は短いみたいだ。
 幸いなのは、最初にこの腕に捕らえたこの少年が俺の【契約者】としての資格を持っていることだな。
 可哀想なのは、同性で受け入れる身体を持って無いコトかな〕

 この世界からはじき出され、強制帰還させられる時間が差し迫っている煌牙に、異性を選びなおす時間など残っていなかった。

 それでも、この世界の日本人の少年・御剣煌牙の全てを吸収したがゆえに、界を越えて侵入した途端にはじき出されるというコトはまぬがれたが、新しい世界との繋がりは脆く儚く弱かった。

 孵化したばかりで御剣煌牙となった自分を、この世界の日本という大地に繋ぎ留めてくれる【楔】となる【契約者】が必要なのだ。

 御剣煌牙の鮮血に触れた瞬間、全てを吸収してしまった為、取り敢えずこの世界と繋がることはできたが、その絆となるモノは、残酷なほどに脆く儚いモノだった。

 それゆえに、煌牙にはこの世界に繋ぎ留めてくれる【楔】となる【契約者】が切実に必要だったのだ。

 本来の御剣煌牙も【契約者】となりうる者だったが、接触時には息を引き取る寸前だった為、その全て吸収してしまった。

 その結果が現状だった。

 その為に、この世界に自分を繋ぎ留める【楔】となる【契約者】が存在しない状態となってしまったのだ。

 何度も言うが、幻獣の煌牙がこの世界の【理】に反するモノとして、はじき出されるのは、もはや時間の問題だった。

 そんな焦燥感に蝕まれる中で見いだした【契約】できる適合者を見逃すだけの時間は無かった。

 同じ雄の個体だとは判っていても、それを考慮して見逃すという選択は無かった。

 だから、煌牙は【契約者】となる者が同性であることも厭わなかった。

 また、御剣煌牙の全てを吸収したことで、人間としての性知識も技術もちゃんと得ていた。

 だから幻獣の煌牙は、よどみなく陽翔の衣服を剥ぎ取り始める。
 捕らえた者を逃がさない為に、逃亡手段を奪うのは急務だった。

 捕縛した感応力のある適合者を、自分をこの世界に留める為の【楔】となる【契約者】にする為。

 それでも、あとは力尽くで血と肉を介在とする【契約】をすれば良いだけの状態へともっていけたコトで、少し強制する相手を気遣う余裕が生まれる。

 煌牙は適合者と判ったので、手荷物としてもっていたカバンの中から、お気に入りのハーフブランケットを取り出し、駐車場の路面へとパッと綺麗に敷く。

 勿論、そこには無意識にちょっとだけ【魔法】も使っていたりするのは確かな事実だった。

 ほぼ身包み全てを剥ぎ取られ、生まれたままの姿にした陽翔を抱き上げ、ハーフブランケットの上に降ろす。

 その段階になって、猫ダマ状態に陥っていた陽翔は、やっと今の自分の状況に気付いて、煌牙へと視線を向けて、慌てて訴える。

「……っ……あっ……えっと……ぼ…僕……ほら……男ですから…クゥッ…。
 そういうのは……ひぃっ…ちょっ…と…やめてくださいっ……。
 僕には、そんな趣味はありませんっ………いやですってば」

 ハッとして、そう言いながら、組み伏せ状態から逃れようと足掻くが、圧倒的な力と、体格の差によって難なく抑え込まれてしまう。
 そして、陽翔を観察しながら、強い口調で命令する。

「おとなしくしろ…………乱暴に扱われたいか?」

 脅しの入った言葉に、陽翔は恐怖で身体がカタカタと震えるのを止めるコトができなかった。

〖嗚呼…どうしてこんなコトになってしまったのだろう。
 いったい、僕の何が悪かったんでしょうか?
 ふふふふ………どんなに嘆いても…今更遅いですよねぇ〗




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