幻獣の契約者

ブラックベリィ

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0008★覚醒めと共にタイムリミットを自覚する

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 微睡み揺蕩う空間から、バチッという音が聴こえそうな程、明確に目覚めた幻獣の[コウガ]は、軽く首を振る。
 自分と言うモノがどういう存在だったかを思い出して、今の現象の原因を理解する。

〔この世界というか、日本という大地から明確な拒絶感を感じる。
 それでも、今の俺がはじき出されていない理由なんて、この日本出身の御剣煌牙を、まるごと全て吸収したからだろうな。
 だが、それだけでは、この地に根付くには足りないらしい〕

 幻獣としての意識が完全に覚醒した煌牙は、接触した時にその全てを吸収した元の身体が保有していた記憶を総動員する。

 そして、現在の状況を安定させるには、どう対処すれば良いかの答えを探す。

〔この日本と呼ばれる国は、目に見えない大きな【守護の力】で守られているようだな。
 なるほど…この地の人々は、自然現象を神々として、崇め奉るコトによって神格化までさせたんだな。
 だから、この地の人々に神格化された多くのモノが、外敵から【守護】する為のの障壁を作っているんだな。
 そして、この大地に深く根刺している日本人と呼ばれる人々を愛し守っている〕

 煌牙は、そこから推察し、その障壁となっている神意ともいえるモノが、古来からそうやって異質なモノを排除して来たと本能的に読み取る。

 そうして、その場合、どうすればいいかを、幻獣の中に内包する膨大な知識が、教えてくれる。
 勿論、誕生前にアカシックレコードに触れたコトで余分な知識も有ったりする。

 幻獣としての[コウガ]が、吸収した御剣煌牙として、日本という大地に受け入れてもらうには、この世界のこの地で生まれ育った【楔】となる【契約者】が必要だと教える。

〔チッ…流石に、拒絶の力がめちゃくちゃ強いっ………まるごと吸収した俺でも、そう時間は残されていないな。
 神意が、異世界産の幻獣である俺をはじき還そうとしている〕

「俺の【楔】となれる【契約者】を探さないとないけないな。
 それも早急に………俺に残されている時間は短い」

〔一刻も早く、日本という国で生まれ育った者を見付けなければ。
 それも、生粋の日本人で…感応力のある者を見付けなければならない。
 どんなコトをしても【楔】なれる者と【契約】を結ばなければ。
 下手をしなくても、このままでは、秩序が崩壊した幻獣世界へと否応なしに、はじき還されちまう〕

 【楔】となれる【契約】を時間内に得られなかったら、強制的に元居た世界に還されるという事実に行きついた幻獣の煌牙は、無意識に低く唸りながら首を振る。

〔そんな事態になるのは御免だっ…俺はまだ生きたい。
 その為に、母上は危険を侵してまで、危険なあの地に入り、俺を…この安全な異世界の地に、送りだしてくれたのだから……〕

「まいったな……まだ、到着したばかりだぞ」

 無意識に、煌牙として呟き、幻獣の本能を開放するが、幼体の為にそこまで大きな【力】を使うコトはできなかった

〔クソッ…誕生して間もない俺には、まだろくな【力】がない。
 たとえ帝王の素養・資格・絶大な【魔力】が揃っていようと、今の俺は無力だ〕

 勝手が違う世界で、手探りで自分をこの大地に根刺す【楔】となれる者を求めて、意識を広く薄く拡散させて探る。

〔はぁ~………異境の地で、この日本という大地で生まれ育った者をまるごと全てを吸収していても、異物として反発される。
 卵から誕生し、少年ひとりを吸収して間もない、幼体の俺にはこの世界の【理】を、力尽くで捩じ伏せることはできない。
 今のままで、この地に居座り続けるのは無理だ〕

「ぅん? あっちか? 何かに呼ばれているように感じる」

 本能の導きのまま、煌牙はふらふらと歩き出す。

〔幸いなのは、俺が卵の状態で界を渡り、この世界に降り立った時、この世界の日本と呼ばれる大地の者と接触できたコトだな。
 それも、真名と同じ音を持つ個体の元にたどり着いた。
 残念なのは、生命が途切れる寸前だったコトだな。
 お陰で【楔】の【契約】ができなかった。
 まぁその代わりに、その存在全てを吸収しちまったんだけどな。
 だから、今すぐはじき出されるコトはない。
 けど、それももう時間の問題だ〕

「俺の【楔】となる【契約者】はどこだ?」

 ポツリと呟きながら、人気の無い方へと煌牙は迷わず向かう。

〔このさい、老若男女問わない、それこそ誰でも良い。
 幻獣の[コウガ]の感応者として適合する、この地で生まれ育った生粋の個体を見付けなければならない。
 そう、俺をこの地へと根付かせる為の【楔】となる【契約者】を早急に見付けなければならない。
 どうにかして、俺と【契約】を結べる適合者を手に入れるんだ。
 もう、残された時間が少ないって感じる〕




      *****



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