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0001★異世界で幻獣の卵は泡沫の夢を見る
しおりを挟む個が誕生したばかりの幼い幻獣は、泡沫のような微睡みに揺られながら、ひとつの世界の創世記からの夢を観ていた。
まるで、時間の早送りしているような速度で、それらは流れ続ける。
〔ああまた……この夢かぁ……。
母上が生まれ育った世界の数多の過去世の出来事。
たぶん、今観ているこれは…世に言う………世界記憶〈アカシックレコード〉……とか呼ばれているモノなのだろう。
接触した理由は不明だけど…ソレに何故か触れているらしい。
それは夢現で…観ている…ただ観ているコトしかできないモノだけど〕
ユラユラとした空間で、まだ幻獣の幼体とも呼べない生命の核が誕生した瞬間から、幻獣世界の創世記から延々と続く壮大な物語りを観ていた。
*****
それは地球と呼ばれる惑星の上に、幾重にも重なる泡沫の空間のひとつの世界。
そこに住むモノをより進化させる為に、ある変革の時が人知れずおとずれていた。
その世界は、精神文明が極限まで高度に発達した世界だった。
ある意味ではバランスの取れた平穏な世界だか、その為に進化というモノからは見放された世界でもあった。
平和だからそこ進化から見放された世界は、世に言う幻獣と呼ばれるような生き物が多種多様に繁栄する世界だった。
ちなみに幻獣とは言っても、その姿形には大小様々で、個体ごとに保有する【能力】も様々だった。
そして、不思議なことに、普段はどんな種族の幻獣でも人型を形成した姿で生活していたのだ。
勿論、それなりに高度な文明文化を築き、秩序のある穏やかで豊かな世界を構成していたことは言うまでもない。
幻獣達が本来の姿を見せるのは、ごく限られた時だけだった。
恋の季節 争奪戦 子作りの交尾 出産 臨終
そんな限られた時だけ、獣身化する以外は二足歩行の人間と呼ばれる姿で生活していた。
理由は不明だが、獣身化したままで生活するのは恥ずかしい行為という認識が一般的だった。
勿論、その他にも数多の普通の動物も存在していた。
ヒエラルキー構造の中間層には、ちゃんと人族と呼ばれるモノも存在していた。
ただ、人族は残念なコトに、幻獣世界にあっても【魔力】というモノを内包していなかった。
正確には、魔力器官や魔力袋と呼ばれるモノを持って誕生できる個体がほとんど居なかったのだ。
それでも、本当に極々稀に、その魔力器官や魔力袋と呼ばれるモノを体内に持って誕生し、行使できる者もチラホラとは存在していた。
だが、残念なことに人族がもつ魔力袋は小さく、魔力器官も脆弱器な為に、小さな【魔力】を扱うのが精一杯だった。
そんな世界の生物上の頂点が、幻獣という種族だった。
日常的に獣身と人身を使い分け、程度の差はあれ、ほぼ全ての幻獣達は【魔力】を行使する魔力器官と魔力袋を生まれながら内包していた。
そんな生物上の頂点たる幻獣達は、精神文明を発達させた末に、世に言うと【魔力】と呼ばれる生体エネルギーを扱う術を身に付けたのだ。
また、その【魔力】を基礎とし、自然界にあるエネルギーを混ぜて行使する【魔法】と言うモノを身に付けた。
その【魔力】を基礎とする【魔法】を使って、あらゆる事象を操る、高度な技術を習得し、思いのままに操れることが、幻獣としての常識だった。
精神文明が極限まで成熟した人型をとる幻獣達は、その強大な【魔力】を制御する為に、常に冷静沈着で極端に争いを好まない穏やかな性質へと変化していた。
その過程では、当然のこととして、気性の激しい者は自然淘汰されていたのは確かな事実だった。
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