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0019★もしかして【対】を見付けちゃった?
しおりを挟む威知護が甘い吐息を零れ落としたコトに気を良くした彪牙は、確信を込めて更に言い放つ。
「ぅん?…もしかして……こういうシチュエーションでよぉ~………
ケツに無理やり突っ込まれてぇ~ンなら……そうしてやるぜぇ~……
お前、強い男に、力尽くで無理やり犯られてぇ~んだろう
抵抗もかなわない相手に、無残に組み敷かれたいんだろう
勿論、俺は優しい男だからな、素直に足を開いて、媚びて来る〈女〉を
乱暴に扱ったりしねぇ~ぜぇ~……………クックククク………
お前のお望み通り、優しく抱いてやろうか?……ぅん?
素直に、俺に従うなら、思いっきりイかせてやるぜ
それこそ…声が出なくなるまで、何度でもイかせてやるぜ
……ン……何か言ったらどうなんだ?」
そう言いながら、彪牙は自由を奪った威知護の顎を鷲掴んで、ものは試しというように、ゆっくりといやらしく口付ける。
勿論、最初は唇を触れさせるだけの軽いキスをしてから、抵抗の意思を見せないコトを確認した後、躊躇うことなく威知護の口腔へと舌を滑り込ませる。
ディープキスを仕掛けられた威知護は、それどころではなかった。
…………うわぁぁ~…マジで…この男が俺の【対】なのかぁ?…………
…………確かに、見ただけで判るって言った意味がわかるよ…………
…………まさか、同じ学校に…本当に【対】がいるなんてな…………
…………あの視気観のクズ男とは全然違うぜ…………
…………とは言え、動けないセイで変な誤解されちまった…………
…………口が動けば…少しは状況が変わるかもしれないのに…………
…………いや…確かにさぁ……結局は…最終的には…………
…………そういうコトしなきゃ【対】が確認できないんだけど…………
…………でも、まだこころが追い付いてねぇ~のに…無理…………
…………まぁ…幸いなのは見た限り、かなり格好良いヤツだ…………
…………だけど…やっぱり…男になんて|犯【や】られたくねぇ~…………
…………いっくらハンサムでも、険があるし……野郎は野郎だ…………
…………必要不可欠で…早急に【対】が必要だって理解ってたって…………
…………俺にその手の趣味はねぇ~…いや確かに気持ち良いけど…………
…………でも、やっぱり誤解どころか、認識が高層ビルとかしてる男に…………
…………キスされても気持ちわりぃ~だけで、嬉しくもなんともねぇ~…………
…………だぁ~………うげぇ~………やぁ~めぇ~ろぉ~…………
…………マジで…悪霊に負の霊気を染み込まされた身体には…………
…………この男の〔霊威〕が気持ちイイんだよ…くそぉ~…………
…………男好きって思われるなんて…誤解が高層ビルと化してるのにぃ…………
彪牙の押し付けられた唇の感触と、口腔を我が物顔で蠢く舌をリアルに感じて、威知護は内心で思いっきりため息を吐く。
そう、金縛りは解けても、生体エネルギーを奪われてしまったがゆえに威知護は、身動きする為のエネルギが無かったりする。
そのセイで表情一つ動かす事なく、双眸だけが彪牙を無機質に見返し、諦めたように双眸を閉じてしまう。
…………はぁ~…まいったよなぁ…【対】らしき相手は見付かったけど…………
…………俺を、男好きのその手の人間って認識しちまった…………
…………確かに、本当に【対】ならそういうコトをする関係になるけど…………
…………じゃなくって、何かこう思い出しかけている感じがする…………
記憶に霞みがかかったようなモノを感じながらも、威知護はソレが忘れさせられた記憶であることをはっきりと思い出す。
ソレは、強烈な悪霊に接触し、生体エネルギーをごっそりと奪われ、枯渇状態に陥ったコトで、生命の危機を感じ、父・竜治に施された記憶の【封印】に罅が入り、解けはじめている証拠だった。
だが、まだ、その事実へとはたどりつかない威知護は、ただ自分が似たような強烈な悪霊に首を締められた記憶を思い出しつつあった。
そう、深層に沈んだ記憶を慎重に手繰りだしはじめた。
…………なんで忘れていたんだろう…俺はあの女の姿した悪霊に襲われたコトあるじゃん…………
……………初めて金縛りで、身体が動かなくなった時もこんな感じだったなぁ~…………
…………ああ…そう言えばあの時も…いやらしく首を締められて…………
…………そうだよ…あの悪霊…俺を見失ったって……見付けたって言っていた…………
そこでやっと繋がる記憶から、初めて金縛りなるモノを体験した後に起こった忌まわしい出来事を思い出し、威知護はげんなりする。
…………うげぇぇぇぇ~…そうなるとぉ…ずっと…俺は狙われていたわけだ…………
…………今はこの男の〔霊威〕がはじいて、急場をしのげたけど…………
…………マジで、どうにかあの悪霊を祓わないとな…………
…………このままじゃぁ…あの、ものすごぉ~く執念深い…………
…………おそろしくタチの悪い悪霊に生涯憑いて廻られる…………
…………はぁ~…こんな二進も三進もいかない状態になると判ってたら…………
…………家で使っている、御札のひとつでも持っておけば良かったぜ…………
…………ハクロウが着けてくれた守護のミサンガ…灰ンなって消えちまった…………
…………気休めでも、魔除けの御札を数枚もって来れば良かったなぁ…………
…………嗚呼…今更ながらに…お婆様の言葉が…身に染みてくるぜ……………
威知護の記憶が、桜霞学園に通い始める日、水晶のお婆に言われたコトを思い起こす。
『威知護様…いいえ…ご当主様……今のご当主は半人前です
一日も早く、一対となる者を…【対】となる者をお選びください
さすれば、二度と霊障などに煩わされませんよ
それまでは、魔除けの御札を数枚予備でお持ち下さい
今のご当主は…まだ〔霊能力〕に覚醒められたばかり
邪悪な穢霊からすれば、赤子も同然なのですから……』
切々と水晶のお婆様に訴えられたのに、忙しさにかまかけて、御札ひとつ持たずに居たコトを心底後悔する。
そのセイもあって、危うく無残に穢されて闇堕ちするところだったコトに、ブルッと身体を無意識に震わせた。
…………まぁ~不幸中の幸いなのは…【対】らしい相手を見付けられたコトかな?…………
…………たとえ俺の【対】が、目の前の男だったとしても…認める…………
…………母さんの元婚約者とかいうクズ男・視気観優希…………
…………執事に教えら、その姿を見たけど……ありゃ~…ないわ…………
…………どっからみても、そういう才能なんてねぇ~ちんけな男だ…………
…………確かにあれじゃ~…母さん嫌がるよなぁ~…当然だよ…………
…………いや…逝っちまった爺様も婆様も、紫桜院本家使用人達すら…………
…………あ~んなろくでもない男なんて絶対に認めないわなぁ…………
…………ろくな才能も無いのに、自分は霊格が高いと思い込んでいるようだしな…………
…………しょぼいクセに、最低最悪な俺様男だもんなぁ~…………
…………なんか色々な意味で、ものすごくイビツに歪んでるしな…………
…………親父の方が、よぉ~っぽどイイ男に思えたのも納得できるぜ…………
などと、思考を明後日の方向へと向け、威知護は現実逃避を一心にはかっていた。
だが、それでも現状は変わらない。
自分の口腔を楽しむ男に、威知護は意識を向ける。
…………はぁ~…逃避したって現状は変わらないんだよなぁ~…………
威知護は今の状況を招いてしまった自分の軽率な行動に内心で盛大な溜息を吐く。
…………にしても……はぁ~あ…つくづく…ついてねぇ~よなぁ…………
…………あんな悪霊どころか穢霊に見付かっちまった…………
…………あのまま紫桜院本家に帰ってれば良かった…………
…………つっても、今の俺ってば呼び出す手段もってねぇ~し…………
…………紫桜院本家に到着した時に萌葱に言っとけば良かった…………
…………スマホを黒澤家に置いて来たから、新しいのが欲しいって…………
…………今更だけど、帰宅しないでこんなところに逃げ込むんじゃなかったなぁ…………
…………お陰で、長時間の金縛り食って動けないわ…………
…………超ド級の悪霊…いや穢霊に生体エネルギーを奪われて、縊り殺されそうになるわだもんな…………
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