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0002★その出会いは必然………

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 威知護いちごは走っていた。

 …………うげぇぇぇ~……マジかよぉ~…聞いてねぇ~ぞぉ~…………
 …………あんなおぞましいモン憑いてるヤツラだなんて…………

 一応は、父親の竜治もえる人で、多少の霊ならば強制的にはらえる《霊能力》を持っているので、その素質を受け継いでしまった威知護いちごも出来るのだが、今回はちょっとムリそうなモノだったので、さっととんずをこいたのだ。

 勿論、一緒に居た幼馴染み達の方に行かないように、わざと存在主張して、男達にとりついていたモノを自分に引き付けてからの逃走だったりする。

 …………まいったなぁ~…呼び出し受けてるのに…………
 …………他県のチーマー?だか…暴走族?だか…の場所に…………

 …………こんなモンを引き連れて行けないんだけど…………
 …………まるで、俺の行く場所が判るかのように先回りしやがる…………

 舌打ちしながら、呼び出しの指定の場所へと向かう為に、公共機関を使うコトに決め、威知護いちごは駅へと駆け込んだのだった。
 流石に、悪霊憑きでも、人目の多い駅の中までは追い駆けて来なかったので、ホッとした威知護いちごだった。

 指定の場所に到着すれば、男女取り交ぜて二十数人のグループが待っていた。
 バイクに車で、いくつかのグループなのか、着ているモノはそれぞれだった。

「おっ来たな……こんな時間に、呼び出して悪かったな」

 リーダー格のひとりが威知護いちごに声を掛ければ、別のひとりが眉をひそめて言う。

「キミ、変なモノに憑りつかれてるのに追い駆けられたでしょう
 薄いけど刻印しるしが付いているよ」

 そう言いながら、長身で髪の長い容姿端麗という表現が合う貴公子風の青年が威知護いちごの手を取り、その手首をマジマジとてから、最初に言葉を発したリーダー格の青年に言う。

「シン…彼は狙われているみたいだね……かなりタチが悪いよ、コレ
 ボクの【能力】よりも、シンの【能力】で消した方が良いね」

 威知護いちごはわけがわからないという表情のまま、今日、変な集団に追い駆けまわされた理由を知る。

「オーケー…それじゃ、俺が消してやるよ
 下手にはらうと、刻印しるし付けたヤツに感付かれるからな

 なら、最初から無かったコトにすればイイだけさ
 つーコトで、ちょっと我慢な」

 そう言って、シンと呼ばれた青年は、タバコらしきモノに火を付けて、その煙を吸い込み、威知護いちごの手首に吹き掛けた。
 刻印しるし付けされたソコに、灼けるような痛みが走った直後に、ずっと最近まとわりついていた厭な気配が消えてホッとする。

 電車での通学中に、突然女の人に抱き付かれて、手首を舐められたソコが刻印しるし付けされた場所と知り、威知護いちごはなんとも言えない顔になる。

「ソコ、変な女の人に突然抱き付かれて、舐められたところだ
 それから、なんかずっとゾクゾクしてて気持ち悪かったんだ」

 威知護いちごの言葉に、シンは首を振る。

威知護いちご、俺達のチームに入れよ
 そしたら、そういうモンからお前を護ってやれるぞ」

 ある意味でありがたい誘いではあるのだが、今、家を離れるつもりの無い威知護いちごは首を振る。

「誘ってくれたのに悪いけど、俺の性格的に無理だわ
 それに、他県にまでそうそう行けないしな
 助けてもらっておいて、断るのは心苦しいが………」

 そんな威知護いちごに、シンは笑って言う。

「今すぐに決めろなんて言わないよ
 ただ、君には異能があるコトは確かだよ

 あんな刻印しるしを付けられて平気で居られたんだから
 よく考えてから答えを出せばイイ

 ただ、忘れるな、君は依代になりやすい体質してそうだ
 下手なカルト集団に捕まったらえらいコトになる」

 シンの言葉に、威知護いちごを黙って観察していた他のメンバーも大きく頷く。

「確かに、依代に選ばれやすいわな」

「うんうん、邪神の器にされやすそうやわ」

「悪魔を呼ぶ為の生け贄にも最適な感じだね」

「下手な宗教関連には寄り付かない方が無難やで………」

 口々に言われて、流石の威知護いちごも鳥肌が立ってしまい、思わず自分の腕を撫でさすってしまう。

 容姿端麗な貴公子風の青年は、ポケットからミサンガを取り出し、威知護いちごの手首へと結びつける。

「取り敢えず、負の霊からはえないようにしたから………
 ただ、強力なの来たら、コレはブチッと切れるからね

 そしたら、なりふり構わず、ダッシュで逃げるんだよ
 よほど穢れていなければ、神社仏閣に逃げ込めばしのげるはずだよ

 あとは、直ぐにボク達の誰でもイイから連絡してね
 そしたら、直ぐに助けてあげるから………

 取り増えず、ボク達の電話番号を上げるからスマホだして………」

 ほぼ初対面の自分に、あまりにも親切なコトで、威知護いちごは首を傾げる。

 眼鏡に三つ編みで、どちらかと言うとクラスの委員長みたいな雰囲気の少女は、威知護いちごの戸惑いに気付いて言う。

「ああ、なんでウチらが親切にするかわからないんで
 戸惑ってるんやな…………答えは簡単やで

 今日、威知護いちごが出会った集団みたいなモンの
 生け贄や巫子にでもされたら、うちらが困るからやで
 巫子っつーのは、巫女さんの男バージョンや

 そうなると、邪神や悪霊や悪魔なんかがえらい強力になるんや
 そりゃ~もう、倒すのにえらい【力】が必要になるんや

 いわば、うちらの敵のブーストにならんように
 こっち側に威知護いちごを留めておきたいんや

 ちなみに、ウチ自身は関西出身やないで
 叔母さんが、こういう口調やったんでうつったんや

 あと、ウチはミサキいうんや、よろしく」

 返答に困る威知護いちごに、シンが言う。

「別に、威知護いちごに何かして欲しいわけじゃない
 ただ、俺達の敵の手に堕ちて欲しくないんだ

 今日は顔合わせと連絡取れるようにってコトで来ただけだ
 後日、改めて時間を取って欲しい」

 シンからの言葉に、威知護いちごは狐につままれたような表情で頷く。

「ああ、時間くれ…何がなんだかちょっと頭ン中がくらくらだ」

「ああそれでイイ、威知護いちご
 とにかく、変な男女に絡まれるなよ

 勿論、いわく付きの場所にも行くな
 今のお前は、もの凄く憑かれやすい

 いくら、ハクロウの守護のミサンガがあっても破られるコトもある
 いいか、ヤバイって思ったら、迷わず連絡しろ」

 そう言って、素直に出したスマホに顔写真と共に直通ナンバーを複数入れられた威知護いちごだった。

「ああ、心配してくれてありがとう
 普通のケンカだったらどうにでもなるけど

 確かに、ああいうタチの悪い霊の類は勘弁だ
 それじゃなくても、ウチは変なのに狙われているようだしな

 充分に気を付けるよ」
 
 威知護いちごと面通しをして、ナンバー交換した後、あっさりと彼らは帰って行った。
 それを見送った威知護いちごは、手首に結ばれたミサンガを見て溜め息を付くのだった。

 …………はぁ~…母さんが襲われた時と状況が似ている…………
 …………カルト集団の生け贄に選ばれて攫われたって…………

 …………ギリギリでけがされる前に救出したって話しだけど………
 …………幼い弟や妹はどこで漏らすかわからないから、内緒だけど…………

 …………世間的には死んだコトになってる母さんは生きている…………
 …………親父の持つ【霊力】でもって、仮死状態で隠されている…………

 …………もしも、俺を狙っている者がそうならば、倒す…………
 …………そうすれば、母さんを覚醒めざめさせるコトが出来る…………

 …………親父は、俺が母さんが生きているコトを知っていると知らない…………
 …………かならず、見付け出して、敵を倒す…………

 …………今は、たいした【力】は無いかもしれないけど…………
 …………俺自身の持つ【能力】を磨いて…いつか…………












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