悪役令嬢?当て馬?モブ?

ブラックベリィ

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0172★予定外ですが、騎士団の御一行様と一緒です

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 ストロベリーブロンドの騎士は、リアからもたらされた情報に、再び双眸をすがめる。

 「リアさん…そこ、もう少し詳しく」

 その反応に、新しい大街道が通行止めになった理由が当たり(大樹に棲みついたワイバーン)だと感じて頷く。

 「ええ、構いませんよ。今、通行止めで旅人たちの往来がないとは言え、皆さまご無理をされてこちらに来たようですから、ちゃんと休憩の号令をしてあげてはいかがですか?端的に言えば、大樹に巣食っていたワイバーンは、わたくしどもで討伐しましたので、通行止めと騎士様達の目的が、ワイバーンの討伐でしたら急ぐ必要はございませんよ」

 リアの衝撃的な発言に、ストロベリーブロンドの騎士は逡巡したのに言う。

 「その討伐が事実かどうかは確認しないとなんとも言えないが、確かに無理をして来たのは事実だからな。この討伐の為の遠征の総大将に、お伺いを立てて来る。それで、なにか討伐証明のようなモノはあるのか?」

 そうストロベリーブロンドの騎士に問われて、リアは振り返って、自分達をうかがっているルリとグレンとユナに相談する。

 「ねぇ~……討伐証明って、アレ(巨大ワイバーン本体)を出しちゃっても良いかなぁ?」

 リアの言いたいコトを正確に理解したグレンが、首を振る。

 「いや…リア…アレをまんま出すのは衝撃が強すぎると思うぞ」

 グレンの言葉に、リアはケロッと言う。

 「だって、解体してないから、討伐証明の部位だけなんて無理だし……美味しいって聞いたから、食べてみたいけど……解体は、冒険者ギルドに行って、頼まないと………」

 その会話を聞いて、ストロベリーブロンドの騎士は、ちょっと困惑を含んだまなざしで、蒼褪めながら問い掛ける。

 「えぇ~と……もしかして、あの大樹に巣食ったワイバーンを、持っているってコトかな? 何処にも、その存在らしきモノはなさそうだけど………」

 その言葉に、リアはこれまたケロッと言う。

 「ええ……場所は冒険者として、秘匿させていただきますが、ものすごぉ~く容量の大きいマジックバッグを手に入れましたの………かなり大きかったから、お肉がいっぱい採れると思うのよねぇ~……だから、丸ごと持って来ていますわよ」

 しれっとそう言うリアに、言葉の真偽を確かめる気力を失ったストロベリーブロンドの騎士は、背後を振り返って手を振る。
 それは、警戒態勢の解除の合図だった。

 ストロベリーブロンドの騎士の合図で、警戒態勢をとっていた騎士達は、馬から降りて自分の愛馬の世話を始める。
 こういう砂漠地帯では生死を分けるコトなどザラなので、出来るだけ足回りは完璧にしておきたい騎士団の御一行様だった。

 そして、よりガタイが良い、身に付けている鎧なども、色々な意味で手を掛けられている騎士様のひとりが、ゆったりと歩いて来た。

 あらあらあらあら………もしかして、総大将様でしょうか?
 赤味がかった焦げ茶色で長髪のなのねぇ……
 って、多くない赤系の髪の騎士様が?

 いや、確かに大国ゼフィランス帝国の皇統は、赤い髪が主流だけどねぇ
 と、いうことは、ストロベリーブロンドの騎士様もそっち系ってことね
 そして、この赤味がかった焦げ茶色の……たぶん総大将様も…そうだってことね

 うわぁ~……グレンの素性…隠しきれるかしら?
 明確に口にはしていないけど、グレンもそうみたいなコト言っていたしねぇ
 まってングレン本人は、私と居たいって言ってくれているから……ポッ

 ちょっと内心で身もだえつつも、リアはスッと頭を下げて、それは見事なカーテシーをしてみせる。
 それだけで、本来の素性が判ってしまうような、それは見事な仕草だった。

 そして、リアが口上を口にしようとした矢先、総大将様が声をかける。

 「見事なカーテシーだな…さぞ名のある名家の令嬢だったのだろうな……そなたらの会話は聴こえていた。して、討伐したワイバーンを見せてはくれまいか? なんなら、我が騎士達に解体もさせるぞ。わざわざ冒険者ギルドに行かずとも良いぞ」

 リアはその言葉に瞳を輝かせる。

 えぇ~……無料で解体してくれるのぉ~……ここは交渉しなくちゃ
 出来れば、素材なんかも買い取って欲しいのよねぇ~……
 下手なところに売りに行ったら、絶対に絡まれるもの

 「それでは、ものは相談なんですが、ワイバーンの討伐は騎士様達がしたコトにしてはいただけませんか?」

 リアからの申し出に、総大将様は首を傾げる。

 「そんなコトをしたら、莫大な報奨金や名誉がもらえなくなってしまうぞ」

 びっくりはしても、リアに目的があると判断した総大将様は、そう答える。

 「いや…だって…ぜぇ~ったいに、討伐したのがわたくしどもだっと知られたら、絶対にろくなコトになりませんわ。それよりも、お肉が欲しいのです。ワイバーンの討伐の功績など、お肉の前には無意味ですわ。なんなら、素材となるモノも全てお渡しいたしますわ。ですから、お肉を下さいな。わたくしは、とても欲張りですので、お肉の七割欲しいですわ」

 リアの言葉に、総大将様は考える。

 「だが、魔石はどうする? かなり大きなワイバーンだったのだろう」

 総大将様の言葉に、リアは肩を竦めて答える。

 「いりませんわ。食べられるモノじゃありませんし、扱いに困るモノですもの。それよりも、お肉が欲しいのですわ。それで、欲を言わせてもらえれば、大きな大きなウサギも解体して欲しいんですの……ウサギのお肉も美味しいから、食べたいけど解体できていませんのよ」

 と、リアはちょっとした欲を出して言う。
 その背後では、やはり解体をしたくないルリとグレンが微苦笑していた。

 「本当に、それで良いのか? 名誉も褒賞もいらぬのか?」

 「ええ、そういうモノには、必ず義務と責任がついてまわりますもの……もう、赤の他人の為に、命を削るようなコトはしたくないんですの。わたくしは、わたくしを大事に思ってくれる仲間と、ゆったりした生活がしたいだけなのです」

 本音を込めて言えば、総大将様もその言葉に含まれるモノを感じ取り、小さな溜め息と共に頷く。

 「良かろう。それでは、討伐の功績は、我が騎士団がもらい受けるとしよう。肉の七割だったな。それと、大きなウサギの解体も引き受けよう」

 「ありがとうございます、総大将様。それでは、とりあえず、討伐したワイバーンをお見せしますので、馬達が驚いても暴れないように騎士様達へと、注意喚起をお願いします。準備が出来ましたらお声掛けをお願いします」

 リアの言葉と同時に、ストロベリーブロンドの騎士が、走り寄って来た部隊長らしき数人に命令していた。

 あらあら……やっぱり、偉い人だったみたいねぇ~……
 それにしても、あのおっきなウサギの解体まで頼んじゃった、ラッキー
 ワイバーンのお肉、どうやって食べようかなぁ~……うふふふ



 

 
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