悪役令嬢?当て馬?モブ?

ブラックベリィ

文字の大きさ
上 下
172 / 173

0171★やっぱり新大街道だった

しおりを挟む


 リアの言葉に、下っ端を装って接触して来た騎士は、ひとつ頷いて答える。

 「ええ…その認識で合っていますよ。……ただし、現在、こちらの新大街道は、大国ゼフィランス帝国からの指示により、通行止めとなっております」

 その言葉に、リアはなるほどと頷く。

 「そうなのですか? というか……新大街道ですか?」

 リアは、自分の推測が当たっていたコトを確認しつつ、どうやってけむに巻くかを考える。

 あらあら……やっぱり、嫌がらせと国力を削り取る為に、大街道を作らせたのね
 でも、何時…元の大街道(旧)から、新しい大街道に入ったのかしら?
 どうせだから、その辺も聞いてみてもいいかもね

 そんなリアの反応に、下っ端を装って、赤身を帯びた金色、俗に言うストロベリーブロンドと呼ばれる髪を揺らして、少し考える仕草をしてから答える。

 「はい、そうですよ…この大街道は、大国ゼフィランス帝国からの指示と支援により、モルガン国が作ったのですよ…もしかして、それも知らなかったんですか?」

 「ええ…お恥ずかしながら、知りませんでした。それで、この大街道が新しく作られたモノなら、もとからある旧の大街道もあるということですよね」

 そう言うリアを、ストロベリーブロンドの騎士は、その言葉が本当かどうかを見極めようとする。

 「ええそうですよ。冒険者ギルドから、大街道は通行止めになっているコトを告知されているはずですが、お聞きになりませんでしたか?」

 「はい、一応、わたくし自身、ある理由から身分を失った為、身分証も兼ねて、冒険者登録もしたのですが………そういう、通達は知らされておりませんでした」

 リアの身分を失ったという言葉に、ストロベリーブロンドの騎士はピクリとするが、素知らぬ振りでさいど問い掛ける。

 「失礼ですが、お名前をうかがってもよろしいですが? あと、冒険者登録されたと言うことは、冒険者ギルドのタグを見せていただけませんか?」

 ストロベリーブロンドの騎士は、ちょっと優し気な口調でそうリアに言う。
 どうやら、身分の確認をしたいらしい。
 そこで、リアもハッとする。

 「……ああ…自己紹介が遅れてすみません騎士様。わたくし、名をリアと申します。そして、これがわたくしの冒険者ギルドのタグです。どうぞ、おあらためください」

 そう言って、リアはロマリス王国の冒険者ギルドで作ったタグを首から外して、ストロベリーブロンドの騎士へと手渡す。

 「拝見させていただきます」

 存外丁寧な対応で、ストロベリーブロンドの騎士は、リアの冒険者タグを受け取り、その内容を確認する。
 そしてストロベリーブロンドの騎士は、とても不可解そうな表情で、リアに問い掛ける。

 「あのぉ……貴女の物腰や口調を考えますと……その家名無しというのは、どうにも解せないのですが?」

 そんなストロベリーブロンドの騎士に、リアは苦笑いを浮かべて答える。

 「はい、実はわたくし…その婚約破棄されまして…やってもいない冤罪で、母国より身分を剥奪された上、国外追放された身なのです。ですから、現在は平民なので、家名はありません」

 ここは、ほんの少しの嘘に、本当のコトを大半混ぜるわよ
 だって、婚約破棄も身分剥奪も、国外追放も、全部本当のコトだもの

 リアの物腰や雰囲気から、高位貴族の令嬢とふんでいたストロベリーブロンドの騎士は、無意識に眉をひそめる。

 「ほら…シルーク王国でもございましたでしょ……あれを真似て、浮気をしていた婚約者とその取り巻きに、やってもいない冤罪をまくしたてられて、わたくし、ほぼ身ひとつで、砂漠の真ん中に放り出されましたの……」

 「えっ…砂漠の真ん中ですか?」

 「ええ……追放と言っても…わたくしに死んで欲しかったのでしょうねぇ……ご両親が帰宅すれば、そんなコトなかったコトにされて、わたくしと婚姻させられるからだと思いますの……だって、あの方が選んだ方は、身分がかなり平民よりでしたので……」

 と、それらしくうつむいて見せるリアに、ストロベリーブロンドの騎士は呆れたように首を振る。

 「それは……家同士の決めごとを破った、元婚約者殿は……人でなしですねぇ……」

 「ええ……でも、それで良かったと思いますわ…嫌がらせで、ゴテゴテギラギラの香辛料塗れの食事を出されていましたから……あちらのお母様は、別の令嬢を嫁にしたかったようなので……」

 と、いまだにふくよかどころか見事な体型の自分を、うまく擁護するようにリアは言う。

 「それでも、砂漠の真ん中に置き去りはないでしょう」

 「あちらのお父様は、わたくしの血筋が欲しかったのですよ。わたくし、これでも魔法量が多くて、いくつもの属性魔法が使えるので、自分の孫にそれを取り入れたかったようですの」

 よくあるパターンの話しをすれば、ストロベリーブロンドの騎士は顔を歪める。
 
 あははは……ポーカーフェイスが出来ていませんよ、騎士様
 きっと、身近な方に、そういう運命を背負った方が居るのでしょうねぇ
 だって、ものすごぉ~く同情的な視線をもらっちゃいましたもの

 「それでも、神様はちゃんと見ていてくださるのですわ……だって、通りかかった冒険者さん達が、呆然としていたわたくしを発見し、拾ってくださいまして……こうして、冒険者になりましたもの……」

 「そうですか…それで、登録がロマリス王国の冒険者なんですね」

 「はい、最寄りの国が…ロマリス王国だったので……ただちょっと微妙なんです……あそこの受付嬢、なんか問題ある方達しか居ないようでしたから……」

 「受付嬢達が、問題なのですか?」

 「ええ、なんでも仮の登録させて、問題ある安い依頼をいくつもこなさないと、本登録ささせてくれないらしいですわ」

 「確かに、それは問題でしょうねぇ……ギルドマスターやサブマスターは知っているんでしょうかねぇ?」

 「さぁ~…それはわかりませんわ……わたくしも、とりあえずの身分証として、登録しただけなので……ただ、たまたま私を担当した受付嬢は、そういう方ではなかったようですけどね。拾ってくれた冒険者さん達が、良かったねぇって言ってましたもの」

 「そうですか」

 「ええ……ただ、そういう受付嬢さんだったので、冒険者の心得みたいなモノとか必要な装備とかの説明も、まるでありませんでしたわ……だから、その通行止めのお話しも聞いて無くて……お陰で、途中で…ものすごぉ~く大きなワイバーンに襲われて苦慮しましたわ……そのセイで、魔力枯渇を味わうハメになりましたもの」

 と、さりげなく、通行止めとなっただろう経緯と思われるワイバーンの話しをする。

 たぶんに、この騎士団の御一行様が出動した原因は、あのワイバーンでしょうね
 通りかかったモノを、見境なく獲物としていたみただったし
 討伐に向かうなら、もう居ないから、このまま大樹に向かったら徒労になるものね

 ここは、情報を与えて、様子見するしかないわよねぇ……
 いや、力尽くで振り切るってコトも出来るけどねぇ
 流石に、大国ゼフィランス帝国の騎士団を敵に回すのは得策じゃないものね
 








しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

処理中です...