163 / 173
0162★乙女ゲームの説明は難しいです
しおりを挟むリアは、小説という名のいくつもの物語りがあるコトを説明する。
そして、それを視覚的に理解しやすいようにした絵で物語りを綴るのがマンガだと説明する。
そして、更にその絵に動きと声まで加えて、まるでその中で生きているように動く動画という名のアニメの説明もする。
ルリとグレンは、目をぱちぱちさせながら、なんとか理解しようとする。
色々な物語りには、ジャンルというモノが存在しているコトもついでに説明する。
いわゆるファンタジーという名の異世界をベースにした物語りがわりと多いコトを話す。
「それで、その異世界の物語りを、視覚的に理解しやすいようにした、マンガやアニメをベースにしたモノを、ゲームにしたモノもあってね……」
「「ゲーム?」」
ルリとグレンが声をハモらせ、シンクロしたように首を傾げる。
「うん…ゲーム………こっちにチェスって言うのはあるのかなぁ? 駒が……キング・クイーン・ビショップ・ナイト・ルーク・ポーン……だったっけかな? ……ボードゲームのようなモノでね……それを、庶民が楽しめるように変換したモノがあってねぇ……『乙女ゲーム』って言うんだけどね」
「「乙女ゲーム?」」
再びハモってシンクロしたように動くルリとグレンに、リアは可笑しくなって思わず笑ってしまう。
やだ…ルリとグレンの言動と仕草がシンクロしてるぅ~………くすくす
じゃなくて、どうやって説明したら、ルリとグレンに理解してもらえるかしら?
ユナは、興味が消えちゃったのかな? 今はライムと戯れているのね……
リアはユナが、せっせとテーブルの上を片付けているコトに気付き、ちょっと苦笑いする。
その視線の先では、ビール缶(3L)を溶かし終えて、ふるふると身体を揺らせていたライムが、ユナに向かって、木皿に残ったソースやタレなどをちょうだいと、小さな三角の両手?を伸ばして、欲しがっていた。
その為、ユナは汚れ(ソースやタレなど)がある木皿をライムに手渡していたりする。
ライムは手渡された木皿をサッと身体で覆って、付着しているモノを吸収しては、ユナに返すというコトをしていたのだった。
そんなユナの献身に、リアはグレンとルリに話しをしつつ、食後のデザートとなるプリンアラモード(リア作)を腕輪型アイテムボックスから出して、綺麗になったテーブルへと置くのだった。
「ユナ、片付けが終わったら、食後のデザートにプリンアラモードね……って、はいはい、ルリもグレンも食べたいのね」
リアからの説明を聞いていたルリとグレンは、ユナ用に用意されたプリンアラモードを物欲しそうに見詰めていた。
それに気付いたリアは、グレンとルリの前にもプリンアラモードを出す。
私は、プリンだけにしておきましょう……せっかく、少しとはいえ減ったんだから
生クリームは…余分3兄弟の長兄(脂肪)と次兄(糖分)が、ニヤニヤ顔でダンスしながら迫ってくるから我慢よ
じゃなくて……はぁ~……タイトル覚えてないのよねぇ…あの『乙女ゲーム』
リアに出してもらったプリンアラモードの生クリームをスプーンですくいながら、ルリが聞く。
う~ん……木のスプーンも良いけど、前世で使っていたスプーンが欲しいわねぇ
舌とかに当たった時にちょっと微妙なのよねぇ……はぁ~……
前世のモノが異世界ネットショッピングで還ると思うと……自重しずらいわ
「それで…その『乙女ゲーム』っていうのは何なんだい?」
嬉し気に太く長いもふもふの尻尾を揺らしながら問い掛けるルリに、リアは題名は忘れてしまったが、この世界や自分の立ち位置が、その公爵令嬢と非常に酷似しているコトを説明する。
勿論、婚約者だったエイダン王太子と、その取り巻き達も同じ名前で、容姿や地位などもまんまだったコトを告げる。
「だから、前世の私達の認識としては、物語りを書いたり描いたりするのは『異世界の何処かを垣間見ているんだろう』って言う定説が、一部では根付いているのよねぇ……今更だけど、私もしみじみとそう思うわねぇ……こんなコトなら、もっとちゃんとやり込んでおくんだったなぁ……はぁ~……」
重い溜め息を吐くリアの意識を別に向けようとしてか?グレンが口を開く。
「ふ~ん……で、リアの立ち位置は? 生贄だって言ってたから……そのヒロインとかいうヤツなのか?」
グレンの言葉に、リアは小首を傾げる。
「それがよく分からないのよねぇ~……王太子の婚約者の公爵令嬢だと、悪役令嬢が定番なんだけど……当て馬は……ちょっと…違うと思うから……無難なモブ希望だったんだけどねぇ……なのに、なぜかヒロイン疑惑があってねぇ~……称号に聖女とか大聖女なんてモンもついちゃっているし………なんとも言えないのよねぇ~………だいたい、私が記憶している物語りだって、かなりブツブツだから……」
「ようするに、リアの立ち位置が不確定だってコトで良いんだね」
ルリの断定的な言葉に、リアは肩を竦めて頷く。
「うん……記憶にないイベントなんかもあったしね……それよりも、私という魂が別の世界の子だったってコトを…時空神様から聞いたのよ……それで、ちょっと微妙に思っていた自分の記憶が、完全に前世のモノだって確定出来たのは良かったわよ……その上で、時空神様の最初の子を、偶然にも助けるコトが出来たからね」
ところどころ端折りまくって、リアは自分が前世の異世界の品物を買えるコトをやっとこさっとこ説明する。
「…まぁ…そう言う理由から、時空神様の恩恵で、前世の異世界の品物を、ネットショッピング出来るのよ……それが出来る魔道具をもらったの……とは言っても、今、私が買い物しているお金は、前世で溜めていた貯金からなのよねぇ……そのまま何も考えずに使ったら、あっという間に終わっちゃうのよねぇ……」
リアの言葉に、ルリとグレンはピクッとする。
なまじキンキンに冷えた美味しいビールと、揚げ物三昧を楽しんだだけに、ルリとグレンは顔を見合わせる。
「えっと…その……こっちの金って、その前世の世界では使えないのか?」
グレンのもっともらしい言葉に、リアは首を振る。
「まだ開いてないけど、『異世界屋(買い取り専門店)』っていうのがあったから、そこで換金できるんじゃないかなぁ…とは思っているのよねぇ……」
「まだ、試していないんだね」
「うん…だって、こっちのお金の価値とか種類が全然わからないから、取り敢えず、ちゃんと種類と価値を確認してからと思っていたのよ」
「なるほどねぇ……だけど、本当に、その『異世界屋(買い取り専門店)』っていうは使えるのかい?」
「たぶん、大丈夫だと思う…前世の知識に、そういうのがあるから……ただ、それを何時やろうかなぁって思ってね……ルリやグレンやユナに、異世界ネットショッピングで買い物が出来るコトを知ってもらえば、私が買い物をするコトを不思議に思わないだろうから、取り敢えず異世界の冷凍食品とビールを飲んでもらって、納得してもらおうと思ったのよ」
リアの言葉に、グレンが頷く。
「ああ、俺は納得したよ……リアが色々な意味で規格外だってコトを………」
「そうだねぇ~……魂と身体を入れ替えられていたアタシ達を平気で買ったり、従魔や奴隷と一緒の食卓で食事をしたり……妙なところで常識が欠けていたり……困っているモノには、何の代償も求めず、迷わず助ける慈愛の人だものねぇ……でも、そんなリアだからこそ、アタシは一緒に居たいんだよねぇ……目を離したら、悪い奴等に酷い目に合わされそうで、気が気じゃないよ」
「うん、ユナもリアお姉ちゃんと一緒が良いぁ……ユナの帰る場所は、リアお姉ちゃんのところだけだもん………だから、早くユナもルリお姉ちゃんみたいに強くなりたい……リアお姉ちゃんを、どんな敵からも護れるぐらいに………」
ユナはプリンアラモードを食べ終わった後、リアに抱き付いてそう言う。
リアはリアで、自分が前世の記憶を持っていて、時空神様の恩恵で前世のモノを購入できるコトを告白したコトで、気分がすっきりしていた。
そして、根本的なコトを忘れるリアだった。
30
お気に入りに追加
696
あなたにおすすめの小説

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる