悪役令嬢?当て馬?モブ?

ブラックベリィ

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0150★時空神様と私

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 そして、気付いたら、時空神様の目の前に座っている自分に気付く。

 「あっ 気が付いた?」

 まるで近所のお兄さんのように、気軽に声を掛けられ、リアはビックリする。

 えっとぉ~……もしかしなくても、時空神様だわ
 それにしても、もの凄い美声なんですけど…っていうか…やっぱりイッケメンねぇ……
 グレンもイッケメンだとは思ったけど、ちゃんとグレンは人族の範疇だってわかるわ

 時空神様って…ほんとぉ~に…超越しちゃっているわねぇ…容姿も声も……
 目が潰れたり耳がきこえなくなったりしないのが不思議なくらいだわ

 などと、ちょつと失礼なコトを思ったリアに、時空神様がにっこりと笑って言う。

 「うん 顔と声を褒めてくれて ありがとう」

 その明るく軽い口調での言葉に、リアはラノベあるあるを思い出す。

 あっ…これ…思考が読み取られるってヤツね…うわぁ~…本当にあるんだぁ~………
 ちょっとどころじゃなく、感動なんですけど…嗚呼…コレが尊いってヤツね
 時空神様を前にして、やっと妹や交流のあった同僚達の言った意味が理解出来たわ

 じゃなくて、なんで私は時空神様の前にいるのかしら?

 などと、リアが思えば、時空神様がにこにこと上機嫌で言う。

 「ここに 貴女を リアを呼んだのは お礼が言いたくてね
  ボクの最初の子を 神龍を おぞましい【呪詛じゅそ】で穢された
  世界樹の呪根じゅこんの楔と檻の呪縛から 解放してくれてありがとうね

  その上で ズタズタにされた あの子の魂魄を抱擁し 癒し続けている
  あの子は 貴女の身の内で揺蕩たゆたい 微睡まどろみ続ける
  リアに必要とされた時 神龍は覚醒めざめるだろう 

  本当なら ボク自身で助けてあげられたら 良かったんだけどねぇ
  流石に色々な制約があって 救いたくても 手が出せなかったんだ
  ただただ 我が子が 神龍が苦しんでいるのを 見守るコトだけしか出来なかった

  ボクの持つ《ちから》は 創造した世界には もの凄い猛毒になるんだ
  それに いくつもの世界を管理しているから 下手に介入も出来ない
  不用意に 自分が創造した世界に降り立てば 天変地異を起こすからね

  気がかりだった神龍を救ってくれたリアに 何かお礼をしたくてね
  リアが追放された後の アゼリア王国を観せてあげたついでに ここに呼んだんだ
  なんと言っても リアはボクがいる空間に呼べるほど 魂魄の純度が綺麗だからねぇ

  それに リアはボクの存在を忘れずに 毎日感謝と共に捧げ物をしてくれたから
  世界に歪みが出ない程度のだけど リアの望みを叶えて上げたくてね」
 
 強大な《ちから》を内包しているコトで、自分の最初の子すら助けるコトが出来なかったと聞いて、リアはそのもの凄く広い優しさと愛情に感動する。

 そっか…全てを創造したから…全て自分の子ってことなんだ
 最初の子である神龍にあんなコトをしたのも、また、自分の子って思うんだね
 だから、兄弟姉妹の争いごとに口を挟まない親という立ち位置を堅持したのね

 つらかったでしょうに…悔しかったでしょうに…それでも見守り続けて居たのね
 平等の愛情なんてものは、ずっと絵空事だと思った
 前世の両親は、妹をやたらと贔屓していたから………

 まっ…それを言ったら、私もついつい妹に甘くしちゃってたからねぇ
 じゃなくて…流石、創造主でもある時空神様、救えない哀しみを耐えてらしたのね
 そして、あえて介入しないコトで、その存在が消えるなら消えるままにしたわけね

 それぞれ男神信仰と女神信仰はあるけど、創造主たる時空神様の存在は語られるコトが無かったのは、そういうコトなのね

 リアのこころを読んだ時空神は、にっこりと言わぬが花という微笑みを浮かべる。

 お願いねぇ……お願いって言うか…理不尽を正して欲しいとは思うけどねぇ……
 もう過ぎ去った過去かも知れないけど……元凶達はやりたい放題で逃げ切り
 その積み重なった罰を、子孫が受けるのが…もの凄く理不尽って思うのよねぇ………

 と、リアが思えば、時空神様はにっこりと笑って言う。

 「ふふふふ………リアは本当に優しいねぇ…… それじゃ ひとつ種明かしね
  今のアゼリア王国の貴族達は 全て代々悪行を行った魂達の転生体ばかりだよ

  その時の記憶は ちゃんと洗い流して真っ新にしているはずなんだけどねぇ……
  どうしてか 記憶も無いはずなのに何度転生させても 悪行を重ねるんだよねぇ」
 
 だったら、ガウェイ王とか大神官長様だけでも、他に転生させてくれたら良いのに……

 リアがそう思うと、時空神様は苦笑いを浮かべて言う。

 「本当ならねぇ 他の争いごとのない王家とかに 生まれ変わらせたいんだけどねぇ
  今の王と大神官長とその側近達ってね 建国の時の魂達でね
  他の豊かで穏やかな場所に生れるようにしても 還ってきちゃうんだよね

  だから リアに感謝しているんだよ あの大陸の大地を延々と穢し続けて居た
  穢された世界樹の呪根じゅこんと エネルギー源にされた神龍を解放したからね
  今回のガウェイ王と大神官達による 貴族全てに 浄化を義務化したコトで
  ようやく 大地を穢す【呪詛じゅそ】の根源が消えるからね
  それによって ガウェイ王と大神官長達は ようやく解放されるからね

  彼等も 次の転生はアゼリア王国に生まれ変わるコトにこだわらないだろう
  そう リアは神龍だけじゃなく 建国のいしずえとなった者達も救ったんだよ
  だから リアの望むコトを叶えてあげたいんだ 何か欲しいモノとかあるかな?」

 そう言われたリアは、ラノベあるあるを脳内検索する。

 う~ん…色々とあるけど…魔力はタップリあるし…グレン(恋人にしたい男)は居るし
 信頼できる姐さん風のルリに、妹というより娘に近いユナがいるし……
 モフモフは、レオにグリにナナにクインやアクアを含む、シャドウハウンド達もいるしねぇ

 異世界でのラノベあるあるが通用するなら、前世の貯金分だけでもイイから物が欲しい
 ほら…アレ……そう…異世界通販とかいうヤツ……どうしても前世の甘味とかがねぇ
 香辛料だって、無いモノが多いから………そういうのお願いとか出来るのかなぁ?

 と、前世を思い出して考えて、フッと時空神様へと視線を向ければ、にっこりと笑って答える。

 「勿論 ボクにだって 異世界通販とやらは出来るよ
  リアという前世の記憶をしっかりと持った 媒体があるからね」

 「本当ですか?」

 思わず嬉しくてそう聞くと、時空神様は悪戯っ子のように瞳をきらめかせて言う。

 「うん 大丈夫できるよ ただし ボクにもお供えをよろしくね
  あと 貯金が終わっちゃったら 毛皮とかを入れれば 自動で等価交換してくれるよ
  ただし 貨幣は入らないから どれが交換対象になるかは自分で試行錯誤してね」

 そう楽しそうに言いながら、時空神様は空中で複雑な紋様を描き、前世で言うところのタブレット端末のようなモノを作り上げる。
 ただし、それは手につかめるようなモノではなかった。

 あっ…あれ…自分だけが画面が見えるタブレット端末のようなモノ?
 うわぁ~……もしかしなくても…マジで…ラノベあるあるのネットショッピング媒体

 「ふふふふ……そうだよぉ~ん 使い方は理解わかるよねぇ~
  それじゃコレをあげるね この世界を楽しんで 浄化をよろしく 大聖女様」

 と、おちゃめっぽく言われたと同時に、リアは再びスゥーと意識が閉じるのを感じるのだった。
 







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