125 / 173
0124★サンドウルフは美味しくないらしい
しおりを挟む「無傷ってわけには行かなかったねぇ………取り敢えず、アタシが気付いた子達は、結界内になんとか入れたけど……取り囲まれて、かなり傷だらけになった子が何頭か居たね……いかに体格が良くても、数の暴力の前にはしょうがないコトだけどね………まぁ結界内に入れれば、リアが治せるから拾ってきたけどね」
その言葉を聞いたリアは、覗き穴から結界内に居るシャドウハウンド達の様子と数を慌てて数え始める。
うぅ~……二……三……四………五………こっちから見えるのは五頭ね……
結構血塗れになっている子が多いけど、立てない子は居なそうね
取り敢えず…『ヒール』………うん…大丈夫そうね
まずは右側の確認をしたリアは、反対の左側にある覗き穴からシャドウハウンド達の数を数える。
あれ……四頭しか居ない? 取り敢えずあの子達にも『ヒール』…よし
無事に動き回るのを確認し、リアは後ろにある覗き穴から覗くと、血塗れの一頭が見えて、頬をヒクッとさせた後、冷静に冷静にと口中で唱えながら、癒しの魔法を使う。
あの子は『ヒール』じゃ足りない……『エクストラヒール』……ホッ…大丈夫ね
これで十頭……そうすると……あとの二頭は前かしら……
確認しないとね……見たところ…リーダーの子は居なかったし
リアは御者台のところの扉を開いて、グレンに声を掛ける。
「グレン…前に二頭いるかしら?」
リアの言葉に、振り返ったグレンが頷く。
「ああ…ただ……二頭とも…かなりヤバイ……結界内になんとか入れたけど……」
そういうグレンも、あちこちに齧られた痕跡が有り、全身が血塗れだった。
リアが哀しむだろうと、無理矢理二頭を救い出して結界内に入ったコトは見て判った。
『エクストラヒール』『エクストラヒール』『エクストラヒール』……よし
っていうか……エクストラヒールって…欠損も治るのねぇ……
それとも、私が使う魔法がみんなと違うのかしら?
ラノベなんかだと、部位欠損は治らない設定とかあったけど
想像力がモノをいう世界だから、抉り取られたところとかも治ったのかな?
そうなると、怪我を癒す為に身体を構成するものを使うから、お腹空いているよねぇ
とは言え、ここでご飯なんてゆっくりと食べていられる状態じゃないしね
ここはやっぱり、姿見の中に回収しちゃうのがベストでしょ
取り敢えず、シャドウハウンド達の回収ね
リアはルリを振り返る。
ルリはリアの考えを読み取り、しょうがないねぇ…という表情で、馬車側面のドアをがっぱりと広く開ける。
その間にリアは腕輪型アイテムボックスに収納した姿見を取り出していた。
「みんな…姿見にハウスッ………」
一度姿見の中へと収納されたコトのあるシャドウハウンド達は、リアの意思をちゃんと読み取り、タタタタタッと広く開けられた馬車の中へと入り、そのまま姿見の中へと入って行く。
「良い子ねぇ~…ここを切り抜けたら、ご飯にしょうねぇ~……それまで、中で休んでいてね」
リアの言葉に、嬉しそうに尻尾を振りながら、十二頭全部が入った頃には、ルリは馬車のドアを閉めていた。
「この馬車は色々と細工があるから便利だねぇ……その代わり、拡張はあまり掛けられてないようだね………せいぜいが本来の二倍くらいだからね」
魔道具などにも見識が有るらしいルリの言葉に、リアは小首を傾げて言う。
「うん…そうなのかも……右も左もわからないような私が困らないように、色々と『夢の翼』のみんなが用意してくれたんだ……一応、保存食らしいモノも入ってたけど…なんか美味しそうじゃなかったから…ユナのマジックポーチに入れてそのままになっているかな……たぶん、あまり料理とかしないんだと思う……香辛料とかあまり入ってなかったから………それでも、旅の必需品の塩とかはちゃんと入ってたけどね」
そう言いながら、姿見を手首の腕輪型アイテムボックスに収納し、リアはグレンに声を掛ける。
勿論、外を見て、魔法を打ち込んで直ぐに、討伐されたサンドウルフはちゃんと収納しているリアである。
「グレン…用意は出来たかな? ちびっこはユナと一緒に姿見の中に居るよ…シャドウハウンド達も、全員姿見の中に回収したよ…勿論、ナナも回収したから、軍馬達を思い切り走らせてオーケーだよ………用意が出来ているなら、前にガンガンにファイア系の打ち込むよ……そのまま突っ込んでも、結界が効いているから行けるよ」
リアの言葉に、グレンは力強く頷く。
「ああ…大丈夫だ…何時でも行ける」
グレンの言葉を聞いて、リアは頷いて言う。
「なら……躊躇いなく行くからねぇ………」
そう言い放った瞬間に、リアは攻撃魔法を使いまくる。
飛ばされて、討伐した個体は、すかさず腕輪型アイテムボックスに収納しているので、大街道の上に横たわって、道を妨げるモノは居なかった。
そんな中、まるで威嚇でもするようにひと際低い咆哮が響き渡るが、リアが軍馬達に身体強化などを何重にも掛けたので、居竦むことなく走り始める。
最初は並足ていども無かった速さだが、リアが次々と障害になるサンドウルフ達を討伐して回収するので、もう安全と認識してじょじょにスピードを上げて行く。
馬車が動き出したコトで、サンドウルフ達の後方から高みの見物をしていたひと際大きなサンドウルフがのっそりと身体を起こして、進路を邪魔しようとする。
が、そんなモンに構う気が無いリアは、ファイアオールをサンドウルフのリーダーの進行方向に放ち、軍馬達の前に来れないようにする。
「あのリーダーや群れの討伐は、そのうち誰かがするでしょう……流石に、あんなモノを相手するのは無理だわ……いや、ルリも居るし、シャドウハウンド達もいるけどね……はっきり言って面倒なのよね……だって、サンドウルフは魔獣で魔石も取れないし…毛皮なんてそんなにいらないし……肉だって食べられるものじゃないだろうしね……シャドウハウンド達だって、きっと飽きちゃうだろうしね」
リアの言葉に、ルリはハフッと溜め息を吐きながら言う。
「確かにね……昔…空腹すぎて…喰ったコトあるけどねぇ…サンドウルフは美味しいって思えなかったねぇ……腹が減って無ければ、食べたいモンじゃないね」
ルリがちょっと遠い瞳で言う。
あははは……やっぱり…美味しくなかったんだね
ってか……ルリでもサンドウルフ食べるようなコトになったコトあるのね
たぶん、子供の頃か親離れした頃のことかな? いや、聞かないけどね
「でしょ……討伐した分は、一応回収したけどね……全部じゃないから、拾い損ねは共食いするんじゃないかしらね………ああいうのって、死ねば物体だし……だいぶお腹を空かせていたみたいだからね……って…しつこいっ……やだ、あのサンドウルフのリーダー…馬車を追い駆けて来てる」
獲物だと思ったモノに逃げられたコトで怒ったらしいサンドウルフのリーダーは、馬車に追い縋る。
が、相手にする気が無いリアは、軍馬達に更なる身体強化を掛け、馬車には重量軽減に風圧などの軽減をかけていく。
グレンはそれに気付き、軍馬達に向かって思い切り走って良いという指示を出す。
ご機嫌になった軍馬達はブルルっと小さくいなないた次の瞬間、更なる加速に入った。
サンドウルフ達をあっという間に振り切り、リーダーも追撃を諦めたようで、強大な気配(リーダー)は遠くなる。
「なんとかなったみたいね………それと…ありがとう…グレン……あの二頭を助けてくれて……」
血塗れになってまで二頭を回収してきてくれたコトに、リアは改めてグレンにお礼を言う。
「ああ……だって、あいつ等も、俺達の家族だろ……リアが大事なモノは…俺も大事だからさ…その…ご褒美にエールよろしく……」
ちょっと素っ気なくいうグレンは、耳を赤くしながら、誤魔化すようにご褒美をねだるのだった。
「勿論、期待してねグレン……今日は次の休憩できそうな場所にたどり付いたら、そこで野営しましょうね………結界も強化するから、みんなでゆっくりと休みましょう」
「了解……んじゃ………張り切って、どこか良さそうなところを探すとするかな……その間、リアも休んでろよ……何発も魔法攻撃したんだからさ」
「うん……それじゃ、後ろで休んでいるね」
30
お気に入りに追加
696
あなたにおすすめの小説

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?
ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」
バシッ!!
わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。
目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの?
最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故?
ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない……
前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた……
前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。
転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる