悪役令嬢?当て馬?モブ?

ブラックベリィ

文字の大きさ
上 下
88 / 173

0087★洞窟の中は?

しおりを挟む


 3時のオヤツと称して、お肉と付け合わせのフライドポテトを楽しんだセシリア達は、当初の予定通りに洞窟へと足を踏み入れていた。
 勿論、洞窟に入る前に、一度軍馬達とナナに子供達も出して、ちゃんと3時のオヤツを食べさせたコトは言うまでもない。

 なにせ、洞窟の奥の方にあるらしい遺跡らしきモノが、古代遺跡で『ダンジョン』化などしていたら、どんなコトになるか分からないからだ。
 何せ、本物の『ダンジョン』だったら、足を踏み入れたが最後、いつ次の食事にあり付けるかわからないという事態にだってなりかねないのだから。

 だから、洞窟に足を踏み入れた時から、セシリアは緊張していた。
 ここに洞窟が存在しているコトが周知されているモノなのかにも寄るが、その可能性は限りなく低いコトを全員りかいしていた。

 何故なら、一番近い小街道が途切れ途切れになっていて、近くの村がスタンピードによって崩壊しているコトを考えれば、その遺跡が『ダンジョン』である可能性が高いのだ。
 問題は、今、セシリア達が居る地域が、どの国に属しているかに寄るのだ。

 本来は、古代遺跡や『ダンジョン』などは、その地域を支配している国が、定期的な討伐などをする義務があるのだ。
 ただし、うまみが無い地域などは、国の支配地域とはならず、国家間の空白地帯となっているコトも多々あるのだ。

 また、その地域を領地としていた国や領主などが滅びて、空白地帯となったままだったりするコトもあるのだ。

 強大な妖魔や魔王などと呼ばれる、人知を超えたモノの逆鱗に触れ、滅亡に追い込まれた場所などは、どの国も手を出さないのがほとんどだったりする。
 そう、其処には、何も無かったコトとしてスルーする傾向にあるのだ。

 誰だって、火中の栗となっている場所に手を出して大火傷などしたくないから。
 そうやって、滅亡後に放置される区域もそこかしこに点在していたりする。

 過去には、そういうモノを無視して、逆鱗に触れて崩壊した地域に眠る財宝に目がくらみ、手を出して連鎖で消滅した王国や属国もあるのだ。
 そう、宗主国の無謀なコトに巻き込まれて、属国まで同じ咎を背負わされて、一蓮托生で滅ぼされた国もあったのだ。

 一応、王太子の代わりが務められるように、そういうモノの処理もさせられていたセシリアは、首を傾げていた。

 ん~……なんか…記憶に引っかかるのよねぇ………はぁ~…困ったわ
 どうして、あの廃村の名前を視た時に、気付かなかったのかしら
 たぶんだけど…あの…ロマリス王国よりもずっと古い時期のモノだわ

 子供の頃に読んだ歴史書に、消えた王国を書いたモノがあったのよね
 今よりも、国の数が多くて、空白地帯になっているところにも国があったのよね
 それを題材にした、古典風の娯楽小説なんかもあって面白かったわねぇ

 その中には、魔王と取り引きして、魔物化したエルフの話しなんかもあったわね
 結局、その原因は人族の王侯貴族で、美しいエルフを捕らえて弄んだコトだし
 妖精や精霊にも、似たようなコトして似たように国が滅んだの多かったな

 洞窟の奥にある遺跡も古代遺跡で、そういう経緯の末路ってコトありそうだし
 だいたい『ダンジョン』が出来る原因て、人族が調和を乱したモノが多いのよねぇ
 一応、みんなに警告しておいた方がいいかしら?

 これから踏み込むのは、古代遺跡の可能性が高いのよねぇ
 その上で、かなぁ~り高い確率で『ダンジョン』化しているかもって
 それにしても、洞窟の中入ってそこそこ時間が経っているのに何も居ないわね

 セシリアが小首を傾げて、不思議がっていると、ルリとグレンがピタッと足を止める。
 それにあわせて、ユナとセシリアも足を止める。

 セシリアは、足を止めたルリとグレンを見て、一応声を潜めて問い掛ける。

 「どうしたの?」

 「しっ……」

 ルリの言葉に、セシリアは問いかけをやめて、周囲に意識を向ける。
 と、少し奥から、何かが這いずっているような音がした。

 え~とぉ……もしかして、這いずりモノがいるの?
 乙女ゲームでの古代遺跡の『ダンジョン』だと……
 このパーティーは女性が多いので、ゴブリン系やオーク系が多かったのよね

 男性は、グレンしか居ないから、ラミア系の魅了持ちじゃないはずなんだけど
 いや、それでも、よく似た世界観なだけあって、これはゲームじゃないのよね
 現実に生きているし、個々にちゃんとした意思を持っているんだから………

 そう思いながら、息を殺して這いずるモノの音にドキドキしながら、音の正体が見えるのを待つ。
 と、さほど立たずに、直立のワニのような生き物が姿を現わす。

 ただし、その尻尾が異様に太く長かった。
 身長の倍ほどの長さの太い尻尾を引き摺りながら、洞窟の方へと足を踏み出し進んで来る。

 セシリアは、その姿を思わずマジマジと見て小首を傾げる。
 と、長い尻尾を持つ、直立ワニのようなモノと視線が合う。

 あら……もの凄く綺麗なエメラルドグリーンねぇ…
 ちょっと蒼みががっていて、深い色合いだコト
 翡翠とはちょっと違って、透き通るような色で……

 なんか、随分と知的な雰囲気ねぇ……ン……
 あらあら……もしかして……会話とかの意思疎通が出来るような気がしますねぇ
 ここは、思い切って、声をかけてみようかしら………

 身を隠せるような物陰の無い洞窟の中で、距離があるとはいえ、ばったりと真正面から相対してしまい、警戒心が最高潮になっている中で、セシリアは交信を試みた。

 「え~とぉ…その…こんにちわ……ここに、住んでいるんですか?」

 セシリアの行動というか、言葉に、緊張しきっていたグレンとルリとユナは、思わず気が抜けてしまう。
 それは相手もそうだったらしく、表情は乏しい…というか、ワニによく似た鱗模様の皮膚の為、読み取りずらいが、ちょっと驚いているようだった。

 「…………コン…ニチ…ワ……」

 少したどたどしいものの、返事が返って来たコトで、セシリアはにこにこしながらルリ達よりも一歩前に出て、もう一度問い掛ける。

 「もしかして、ココに住んでいるんですか? たんなる洞窟だと思って入ってきちゃったんですけど……仲間が…奥で遺跡みたいなモノあったっていうから、探検しにきたんですけど……」

 セシリアの言葉に、直立ワニもどきは、首を傾げてから口を開いた。

 「ココ…スンデル…デモ……タ…ンケン……スルナラ……スレバイイ……タダ…遺跡ハ…キケンダ……周囲ナラバ…観テモ…イイ…奥…ニ…転移……ドコ……跳バサレ…ル」

 セシリアが友好的に挨拶をして、会話したコトで、遺跡の周囲程度なら大丈夫だが、奥に入ると転移でどこかに飛ばされるらしいコトがわかって顔を見合わせる。

 「どうする? 観るだけ観るか?」

 グレンの言葉に、セシリアは瞳をキラキラさせながら頷く。

 「観てみたいっ」

 いや、危険かもとは思うけど、こう…なんかワクワクして……
 ちょっと冒険してもイイよね……ルリだって居るし……
 見た目はちょっと怖いけど、なんか危険な感じもしないし










しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

処理中です...