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0084★なんの卵でしょうか?
しおりを挟む足元に転がる大きな卵に、セシリアは思わずマジマジと見てしまう。
と、まだピアス型魔道具の鑑定機能が切れていなかったらしく、鑑定内容が浮かぶ。
ピロ~ン………ピッピッピッ………
ジャンボモアの卵(新鮮産みたての有精卵)
珍味で食べると力がパワーアップする
孵化させれば雛が孵る
親は大きな飛べない鳥の一種
う~ん…どうしよう…念願の本物と卵なんですけど
絶滅危惧種とかじゃないなら、食べたいというのが本音です
確か、前世のニューギニア島でしたっけか?
同じような名前のおっきな飛べない鳥が居たと思うんですけど
ダチョウと同じで翼が退化していて、食べられちゃったって話しでしたけど
航海している人が、原住民に要求したって書いてあったような気が………
その地域の固有種で、絶滅危惧種だったら……って、ここは聞いみましょう
前世の世界と、今の現世の世界は違いますからね
まして、剣と魔法の世界ですからね
「ルリ、グレン、ユナ、コレってジャンボモアの卵で、産みたて新鮮の有精卵って出たんだけど……食べちゃっても良いモノかしら?」
小首を傾げてそう問い掛けるセシリアに、ルリが嬉しそうに言う。
「おや、この辺にジャンボモアが居るのかい……なら、洞窟に入る前にひと狩りしてこようかねぇ………肉が美味しいんだよ……あいつらは、集団でいるから良さそうなの2匹か3匹狩って、ちょっと処理して腕輪の中に入れておかないか、リア」
嬉々とするルリに、グレンも賛成する。
「そうだな、居るなら狩って肉のストックにしたいな……あいつらの羽根も役に立つしな……繁殖力が強いから……間引きもしておいた方が良いだろう」
あらあら……もしかして、ぜんぜん大丈夫だったりするの?
前世で絶滅したのって、繁殖力が弱かったって書かれて居た気がするんだけど
こっちのは、繁殖力が強くて、間引きしないとダメなのね
「うん、きっと蟻を食べていたんだろうねぇ………見回したら、蟻塚っぽいの結構あるから……だから、この辺には薬草や毒草があるんだね」
ユナの言葉に、セシリアはなるほどと頷く。
「それじゃ、この卵は回収して食べちゃおうか? それとも、次に入った街ででも売る?」
食べたい気持ち隠して、セシリアは首を傾げて問い掛ける。
「「「いやいや、ここは食べる一択で」」」
と、全員の声がハモる。
「了解……それじゃ、この卵で、美味しいデザートを作ってあげるね……本物の新鮮な卵が手に入ったから、ここはプリンでも作ろうかなぁ~……」
うふふふ………何人前作れるかしらねぇ?
勿論、時空神様への捧げ物ひとつにしても良いものねぇ
アイスだって、なんちゃってのタマゴもどきの実より美味しいはず
「ふふふふ……楽しみにしているよ、リア……それじゃ、アタシはちょっとひと狩りして来るから、その間、ちゃんとリアを護るんだよ、グレン」
と言い放った瞬間に、シュッと人化から猫型の魔獣、それもフルサイズに変化して走り去って行く後ろ姿に呆れる。
「ジャンボモアって肉がめちゃくちゃ美味しいんだよ……焼いて塩をパラッてかけただけで、ご馳走なんだよなぁ……足がもの凄く早いんで、捕獲が難しいんだ……それも、しとめるのに時間を掛けちまうと、肉質がガクンッて落ちるから……まっルリならそんな失敗しないだろうけどな」
グレンの説明に、セシリアはへぇ~と思うコトしか出来なかった。
ふむ………そうすると、やっぱりダチョウと似たり寄ったりなのかな?
確か、ダチョウの処理ももの凄く大変だって聞いたコトあるし
ちゃんと血抜きができないと、肉が不味くなるって話しだったから……
じゃなくて、ルリが居なくなったんなら、何か出て来るかな?
ジャンボモアを獲る為に、気配から何から、スッと消していったみたいだし
それとも、あやしんで出てこないかな?
「取り敢えず、もうちょっとその辺を探検して洞窟が見えるくらいまで移動しようよ」
と、ユナが建設的な提案をしたので、セシリア達はなんとなく散歩感覚で歩き始める。
ルリという強大で圧倒的な存在が消えたコトで、本能に忠実な小さいトカゲやクモのような昆虫が物陰から這い出て、餌を漁りだす。
「ルリが消えたら…トカゲみたいなモノが、岩陰から出て来たわね……アレは食べられる生き物なのかしら?」
蠢くモノへと視線を向けても、ピアス型魔道具の鑑定は起動しない。
どうやら、込めた魔力が切れたようだった。
再び起動しようと、指先をピアスへと持って行こうとすると、サッとグレンに手を取られる。
「リア、言おうと思っていたけど…機会が掴めなくて注意しなかったけど……鑑定の魔道具っていうのは、希少だ……そういうモノは、使用回数の制限があったりする……出来るだけ使用を控えて、ここぞって時に使用した方が良い」
うわぁぁ~……ムリムリぃぃ~……手…グレン…に…握られちゃったぁぁ~……
イッケメンのグレンに…耳元で注意されて…手を握られるなんて……あぁぁぁ~…
こころの中で悶絶しながら、セシリアは手が震えないようにするのが精一杯だった。
「ちなみに、今リアが鑑定しようとしたのは、砂漠なら何処にでもいるように砂漠トカゲの一種だ………味は、微妙だが、一応食べられるヤツだったな」
という間に、トカゲはチョロチョロっと大きな岩の亀裂の中へと姿を隠してしまう。
遠目に歩いていたクモも、カサカサと別の岩の亀裂の中へと潜り込んでしまう。
「うわぁ~…何処に隠れていたのかなぁ~…飛びウサギいたから捕まえたよぉ~……ほらぁ~……」
と、心底嬉しそうに、何時の間にか側を離れたユナが、自分の身長の半分ほどもある大きくて丸まるとしたウサギを抱えていた。
勿論、もうキュッと絞めてあるらしく、クタッとしていたのは事実だった。
「おっ…凄いな、ユナ……んじゃ、そこの岩陰で血抜きしちまおうか」
「うん」
勢い良く頷くユナからウサギを受け取り、岩陰に入ってグレンは飛びウサギの両足を掴んで逆さまにする。
と、その下にはユナがマジックポーチから、空の壷を出してスタンバイしていた。
「はい…もう良いよ」
ユナの言葉に頷き、グレンが飛びウサギの首を掻き切る。
すると、まだ温かい鮮血が流れ出す。
ただし、既に絞めてあるので、勢い良く飛び出すコトは無かった。
グレンは魔法で上手に血抜きをして、飛びウサギの身体を冷やして行く。
「どうするリア? 直ぐに調理するか? それとも、取り敢えずこのままストックしておくか?」
その言葉に、ハッとしたセシリアは、ここはそういう世界なのだと、こころに言い聞かせて、にっこりと笑って言う。
「当然、直ぐに調理するわ…ついでだから、内臓も抜いちゃってちょうだい……レオやグリの夕飯のひとつになるでしょ」
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