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0083★ルリは災害級の猫型魔獣だそうです

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 ちょっと遅い昼食を楽しみ終わったセシリア達は、ほっこりと食後のお茶をしてから、冒険を始めるコトにした。
 まだルリが見付けた洞窟まで少し距離はあったが、既に岩と呼べるような大きな石ころがゴロゴロとそこかしこに転がって居るので、歩くコトにしたのだ。

 勿論、姿見の中に軍馬達にナナと子供達を入れて、中でおとなしくしているように言い聞かせてしまったコトは言うまでもない。
 特に軍馬達はこれからも大事な移動手段であり、戦闘能力があまり高くないので、危険に晒すコトは出来ない。

 ナナと子供達も戦闘能力という意味では、足手まといになる可能性が有ったので、ちゃんと言い聞かせたコトは確かなコトだった。
 そして、問題はユナだった。

 ただ、本人の希望もあって、今回の探検も一緒にするコトになった。
 ルリとグレンにすれば、自分達が居れば、リアとユナを護っての探検もさほど危険は無いと判断してのことだった。

 だから、4人で岩がゴロゴロと転がる岩石砂漠と化しているソコを探検しながら歩いていた。

 「あっ…リアお姉ちゃん…珍しいよぉ……ヒヨスだよぉ……毒草だけど」

 と、動物に食べられるコトもなく青々とした葉を鳥の羽根を拡げたようなひざ丈ほどの草を指さす。

 「へぇ~……ヒヨスっていう毒草なのね」

 そう言いながら、セシリアはピアス型魔道具の鑑定を起動させて視る。

 ピロ~ン………ピッピッピッ………

 灯夜守〔ひよす〕(夜になると仄かに光る)
 毒草・花は薄い黄色
 食べると死亡するほどの強毒
 使い方によっては、薬へと変換さらるコトも出来る
 麻酔薬などの調合素材のひとつ

 へぇ~……確かに、毒草だけど、調合素材のひとつになるんだ
 調合次第で使える薬になるなら、一応、採取しておこうかな?
 もしかしたら、採取依頼とか冒険者ギルドの掲示板に貼ってあるかもだし

 「ふむ…取り敢えず、採取してしまっておきましょうか? 全草が良いかしら? 葉っぱだけが良いのかしら?」

 そう思いながら、周囲をグルリと見回す。
 
 ピロ~ン………ピッピッピッ………

 吉藻蟻〔よもぎ〕(砂漠蟻が好んで食べる・生えている場所には蟻塚がまず在る)
 薬草・食べても意外と美味しい
 色々と使用用途が豊富な薬草
 炎症止め、止血、下痢止めなどにも使える
 葉はおひたしなどにして食べても美味しい

 え~とぉ……コレは、前世のヨモギと似たようなモノかな?
 確か、前世のヨモギって地下茎でも繁殖したはず
 ここは、ザクッと切っちゃうのが良いわね

 というか、蟻ってあの蟻よね…それが好んで食べるってコト?
 そう言えば、蟻からは色々な素材が取れるのよね
 もしかして、ここって危険な場所なのかしら?

 セシリアは、吉藻蟻〔よもぎ〕を地上から出ている部分だけ採取するコトにした。
 また生えてくるようにと、地下茎は放置する。

 やはり多用途に使える方を優先して採取するセシリアだった。
 勿論、灯夜守〔ひよす〕も使える毒草というコトで採取していた。

 そこここで生えている草を確認しつつ、セシリアは採取しながら歩く。
 そんなセシリアに危険がおよばないように、ルリとグレンは周囲を警戒しつつ、洞窟に向かって誘導する。

 既に、採取が楽しくなって、洞窟の中にある遺跡らしいモノの存在を忘れ去っているセシリアに、ルリとグレンは顔を見合わせてクスッと笑う。
 生き生きとして、楽しそうなセシリアの様子に、こころがほっこりしているのだ。

 ユナはというと、セシリアと共に、大きな岩の影などに生えている草を探していた。

 「あっ…こっちには、砂漠鹿尾菜〔さばくひじき〕と砂漠桑〔さばくそう〕があったよぉ」

 ユナの言葉と指先を見て、セシリアは嬉しそうに採取していく。
 有用そうな薬草や毒草をそこそこ採取してから、セシリアはグレンとルリに言う。

 「ねぇ…グレン、ルリ、今採取した中に吉藻蟻〔よもぎ〕っていうの採取したんだけど……その、近くに蟻塚が在るみたいなんだけど……その…大丈夫かなぁ………」

 セシリアの言葉に、グレンはちょっと舌打ちする。

 「蟻塚かぁ……大きさによるなぁ………キングアントだと不味いな……」

 グレンの言葉に、ルリは首を傾げる。

 「ああ、それは大丈夫じゃないかい…アタシが、周辺確認の為にちょこちょことうろついたからね…蟻共が巣穴から出でくるコトないと思うよ……その為に、隠さないで確認して歩いたからね……少しでも、リアの危険は削っておきたいからね」

 そう、ルリは大型肉食の猫型魔獣なので、その存在の威圧を感知した魔虫や小動物系の魔獣などは姿を消していたりする。
 物陰どころか、潜行能力のある生き物は、全部岩石砂漠の中へと潜り込んでいるのだ。

 また、そういう能力の無いモノは、大きな岩の下や亀裂の奥深くに潜って息を潜めているのだ。
 だから、死の砂漠かと思われるほど、生き物の気配が無かったのは確かな事実だった。

 また、本来は危険な魔物化したコトで知能を得た狡猾な植物も、危険を感じて逃げられるモノは移動し、砂に潜れるモノは潜行していたりする。
 が、そういうコトに気が回らないセシリアは、なるほどという表情をするだけだった。

 「ああ…だから、警戒していたのに何にも出なかったのか………はぁ~……ルリが一般的には、災害級の魔獣だってコト、すっかりと忘れてわ」

 グレンは納得という表情で嘆息して、肩から力を抜く。

 あらあら…どうやら、トカゲさんの一匹も見当たらなかったのはルリのお陰なんだ
 砂漠の生き物のイメージと言ったら、毒蛇やサソリやトカゲとかだったから………
 なんで、岩とかに走ってないのかしらと思ったのよねぇ………

 そうなると、ルリは獲物を取る時は、気配から何から隠しきって、獲物を逃げないようにして、獲っていたのね
 完全な隠蔽をしない、丸出しだとぜぇ~んぶ逃げちゃうってことか……なるほど

 いや…だから…ルリって災害級の魔獣なのね
 それは知らなかったわ

 たぶん、中身(=精神?魂?)の入れ替えされて衰弱していたから………
 ほぼ確定で、売り手はルリがとんでもない魔獣って知らなかったんでしょうね

 まぁ…確かに、ガリガリだわヨロヨロしていたわ、生気が無くて無気力だったものね
 まして、中身がグレンだったから、生餌すら興味も無い、死ぬ寸前の姿だったから

 そうじゃなきゃ、いくらなんでもあんなに簡単に買えなかったでしょうねぇ
 あっという間に艶々になったルリの本体の魔獣の毛皮なんて、モロに貴族が好みそうだし

 パサパサのボサボサの色艶無しの毛皮には、そういう魅力を感じなかったから無事だったのね

 そんなコトを考えながら、セシリアは自分の足元に転がる、どう観ても卵らしいモノを見下ろして悩むのだった。
 

 

 
 

 


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