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0082★嗚呼、前世の生活が恋しい
しおりを挟むユナと共に馬車から降りたセシリアは、馬車を中心にして隠蔽結界をさっさと張る。
そして、馬車の側面を背にして、姿見の台座をテンっと置く。
そして、その台座に設置する為に、アイテムボックスに収納した姿見を取り出して、倒れないように設置するのだった。
それからおもむろに、セシリアは鏡面に手を触れて魔力を流し、中に居るナナや子供達へと呼び掛ける。
セシリアに呼ばれたナナは、自分の子供達とレオとグリを連れて、姿見の中からひょっこりと出て来る。
「ナナ、面倒を見ていてくれてありがとう…さぁお昼ご飯にしましょう」
セシリアの言葉に、ナナは嬉しそうに手をスリスリする。
その仕草から、お乳を搾って欲しいのコールだと気付き、セシリアはクスクスと笑って頷く。
「はいはい、そうね…それじゃささっとお乳を搾っちゃおうか……ちょっと待っていてね」
周囲を見回せば、セシリアがお乳搾りしやすいように、木箱や壷を設置するルリがいる。
その姿を見て、ナナに指さしながらそう言う。
勿論、ナナ達が出て来た姿見は、子供達が全員出て来た後、腕輪型のアイテムボックスにさっさと台座と共に収納したセシリアであった。
「それじゃ、あそこで搾っちゃおうか………あっグレン、子ウクダちゃん達とレオとグリにお昼ご飯よろしく」
「ああ、まかせろ」
そういうグレンの足元には、子ウクダ3頭とレオとグリがもう既に纏わり付いていた。
ユナは、さっさとマジックポーチから内臓などが入った壷を出してグレンへと手渡す。
グレンがそれらを受け取っている間に、ルリは周囲の確認に出ていた。
少し離れたところに、本来の猫型の魔獣に戻ったルリが周囲を警戒しつつ、軽い足取りで離れて行くのが見えた。
どうせ、すぐに見回りして戻って来るでしょう
それまでに、私はナナのお乳搾りを終わらせないとね
っと…あははは……また…盛大に張ってパンパンになっているわぁ
そう思いながら、セシリアは木箱に座り、何時も通りの手順で乳房全体を洗浄し、壷にナナのお乳を搾って溜めて行く。
セシリアは、ナナのお乳をシャコシャコと搾りながら、前世と今世との相違などをついつい考えてしまう。
この世界って、前世と同じモノが結構多いから、楽だわぁ
単位もほぼ十進法みたいだから、計算が簡単に出来るのよねぇ
それに、食べ物もおおむね、前世の世界のモノと変わりないモノが多いようだし
名前も似たような感じのモノが多いみたいだから、本当に助かるわ
ただ、私の生きていた日本での野菜よりも、世界での野菜に近いかもしれないわね
海外から日本に入って来た野菜って、ほとんどのモノが品種改良されているのよね
在来種だって、病害虫に強く美味しくなるように品種改良されているモノが大半だし
日本人の敏感で我が儘な舌が、美味しいって感じるように………
何世代も色々な交配をされたモノが、世間一般に出回っていたのよね
この世界の野菜は、そうなる前の野菜に近いかも知れないわね
品種改良前のえぐみとか渋みとかがあって、甘味が少ないような感じだもの
前世の日本では、だいぶ逆輸入されている野菜や果物があったようだけどね
美味しくなるように改良した新品種をパクッて、生産して日本に売りつける
そのクセ、野菜自体の輸入は色々な理由を付けて、ごく少量しか輸出させない
なんて、コトされているみたいだったし
そう言えば、和牛とか豚なんかもやられているって話し聞いたなぁ………
あの頃に、新聞で有名になったのが、家畜生産しているところから盗む被害だった
ああ…こうして前世を思い返すと……日本って本当に食い物にされていたわねぇ
世界基準とかいうモノを、色々なモノに押し付けられて不利益を被っていたものねぇ
私みたいなコミュ障の社畜予備軍みたいな干物女でさえ、そういうコトを知っていたわ
売国奴が蔓延った、敗戦国の哀しさよねぇ………はぁ~………
あげく、戦勝国でも何でもない寄生虫が、戦勝国ヅラして言いがかり放題だったし
被害者ぶって、タカリたい放題していたっていうのに………
当の戦勝国は、日本が再び力を付けられると困るからって知らんぷりだったし
そういうのって、ほんとぉ~に何処にでもいるのよねぇ………はぁ~……
今世だって、みんな私の境遇を知って居る癖に………
役立たずのお花畑のエイダン王太子に迎合するか、知らないふりしてくれたものね
嗚呼……色々な意味で豊かで、平和と水がタダの日本……懐かしいわぁ
前世では、海外の人達の認識よりも、よっぽど良い国だったもの
なによりも、ちゃんと女性の権利が保全されていた
女性ひとりで、お一人様生活なんていう自活が許されていたもの
いまだに、前世の海外じゃ、男は人間女性は水牛なんて国も有れば
婚姻は売買婚なんていう、嫁は買うモノってところが大半だし
家長(男)の命令は絶対で、年の差があるジジイに売られるなんてザラだし
その点は、今世の王侯貴族も一般市民も、変わりないみたいよねぇ
つまるところ、剣と魔法の中世の海外に転生した感じかしらね、今の私って
それを考えると、ほんとぉ~に良い国だったわぁ~…前世の日本って
ただ、ちょっと政治家が傀儡やら、なんちゃって日本人が居るのが問題だったけどね
それでも、言葉狩りみたいなモノも言論統制もほとんど無いのほほんとした国だったわ
ああ、懐かしい………けど、たぶん私は、亡くなったんでしょうねぇ………
まさか、妹が楽しんでいた乙女ゲームらしきモノに転生するとは思わなかったけどね
はぁ~こんなコトだったら、もう少し妹の話しや攻略対象に対処法を聞いとくんだった
と、前世でのわりとお気楽な生活と比べて、現在進行形の心配事のオンパレード生活を比べて、セシリアは内心で重い溜め息を吐く。
それでも、何度もナナのお乳搾りをしていたコトで、手は自動的に動き、3壷目を搾り切り、4壷目の半分ちょっとで搾り終わった。
「わぁ~…ナナ…とっても良く出たわねぇ~……ふふふふ……コレは、ご褒美にパンケーキも付けてあげないとかしらねぇ………」
そう言うセシリアの側で、子ウクダ3頭とレオとグリが楽しそうに遊んでいたりする。
最初の壷は、とうに子ウクダ3頭に分け与えられ、飲み干されて居たりする。
「グレン……この4壷目の半分入ったの……子供達に分けちゃって良いわ」
そう言って、セシリアは木箱から立ち上がりる。
「了解……そら、こっち来い…この壷の中身を分けてやるぞぉ……」
半分より少し多くお乳が入った壷を抱えながらそう言って子供達を呼び、大きなタライを置いて、そこにお乳を入れる。
普段は、3頭の子ウクダ達だけが飲む、ナナのお乳のお相伴に預かれたレオとグリは、とても嬉しそうに一緒になってひとつのタライから飲むのだった。
そんな様子を微笑ましく観て、セシリアは焼いた後に腕輪型のアイテムボックスに収納しておいたパンケーキを取り出し、蜂蜜を零れない程度かけてナナへと差し出す。
「ふふふふ……内緒よ、ナナ………お疲れ様」
そう言って、セシリアは美味しそうに蜂蜜掛けしてもらったパンケーキを、口から落とさないように少し上を向いてモゴモゴするナナの首筋を軽く撫でて昼食の準備に取り掛かった。
とは言っても、馬車の中でだいぶ作ったので、やるコトはほとんどなかったので、ルリが用意してくれた祭壇に、時空神様用に用意したモノを供え、お祈りして消えたのを確認し、自分達用の昼食を用意するセシリアだった。
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