悪役令嬢?当て馬?モブ?

ブラックベリィ

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0080★魔法は可能性に満ちている?

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 「おや、ナナは中にとどまったのかい?」

 ルリの言葉に、セシリアがにっこりしながら頷く。

 「うん…しばらく子ウクダちゃん達とまったりするって……」

 ユナの通訳で聞いたらしいコトを口にするセシリアに、ルリは柔らかく微笑んで頷く。

 「そうかい…なら、ゆっくりと休ませてやった方が良いね…ソレ(姿見)の中が絶対の安全圏だってコトで、安心したのかもねぇ……アタシが子供達を産む時も、そン中で産もうかねぇ……どうしても、出産時は無防備になるからねぇ………」

 そういうルリに、ユナはにこにこしながら頷く。

 「ルリお姉ちゃんの赤ちゃん達が生まれて来るの楽しみぃ~……」

 そんなユナの頭をナデナデしながら、セシリアも頷いて言う。

 「うん…そうして…ルリの子供達は全員…無事に生まれて育って欲しいから……」

 ユナやセシリアの言葉に、ルリは嬉しそうに長く太い尻尾を優雅に振る。
 だいぶ機嫌が良いのが、それで見て取れる。
 現在のルリは、耳と尻尾を残した半獣の人化をしているのだ。

 ルリが最初に人化した時に、耳も尻尾も無い完全人化は出来ないのかな?……と。
 その答えは、完全人化はちょっと疲れるというモノだった。

 なので、人族至上主義が強い国の勢力圏の町や街では、完全人化する。
 半獣姿がわりとポピュラーな獣人族を国民としていてるところでは、通常の人化で獣人を装って入り込んだりしたという話しだった。

 「ふふふふ………まだ、少し先の話しだけどね……出産期に入ったら、姿見の中でおとなしくしているコトにするよ…それまでに、もうちょっとグレンとユナを鍛えないとね」

 ルリの言葉にグレンは肩を竦める。

 「そうだな、奴隷堕ちして身体を入れ替えられたコトで、だいぶ衰弱した身体を鍛えなおして、どんな時にも対応できるようにしたいな…リア達を護れるようになりたいな」

 無意識にコブシを握りしめて本音を零れ落とすグレンに、ルリはフッと笑って言う。

 「なら、まずは身体を治すコトからだね」

 「ああ」

 「ユナも頑張るよ」

 そんなやり取りに、セシリアは内心で、自分もダイエットを成功させて、せめて普通のスタイルになるぞとコブシを握って、内緒の決意をする。

 そんなセシリアの決意を知らないルリは、セシリアに向かって聞く。

 「さて、どうする、出発するかい?」

 「うん…せっかくルリが見付けてくれた洞窟の中に、遺跡があるか確認したいしね」

 「了解、んじゃ馬車に乗ってくれ…ルリも乗ってくだろう」

 「ああ、この姿で走っても良いけど…リアの側に居たいからね…この元小街道をしばらく真っ直ぐ走って…左手側に岩石砂漠っぽくなっている姿が見えるから…そこに到着したら、そこから歩きだから……流石に洞窟近くまでは馬車を寄せられないからね」

 ルリはセシリアとユナに続いて、馬車に乗り込みながらグレンにそう言う。

 「了解…そんじゃ、岩がゴロゴロしだしたら呼ぶわ」

 その言葉を背中で聞きながルリが乗り込み、ドアを閉めたコトを確認して、グレンは馬車を走らせ始める。

 一方、馬車に乗り込んだセシリアは、ご飯の制作をしていた。
 悪戯を確実にするだろうナナと子供達が姿見の中に居るので、安心してパンケーキなどを作っていた。
 勿論、わりと時間を食うミルクアイス等のデザートや、みんな大好き調味料のマヨネーズもどきなどもついでに作れるだけ作っていた。

 その作業をまったりと見ていたルリが、セシリアに問い掛ける。

 「休まなくて良いのかい、リア」

 ルリの問いかけに、魔法を使うコトが楽しいセシリアは、にこにこしながら答える。

 「うん、ぜんぜん平気だよ……こうして、自由に自分の好きなように魔法が使えるのが楽しいの……今まで、ぜんぜん使えなかったから………それに、ルリ達ってば、カラアゲとかソーセージ好きでしょ………それにしても、魔法って便利よねぇ~……」

 と、馬車の中の空間で、なんの苦労もなく魔法で料理をするセシリアの姿に、ルリは内心で溜め息を吐いていた。

 いやいや、リア…魔法で、そんな風に料理する者なんて見たことないよ、アタシは
 まったく、いったいどんな育ち方したら、こんな風になるのかねぇ……はぁ~……
 手足の色や細さと合わない、贅肉を詰めたような身体と、無知さ加減が酷い

 本来なら身に付いているはずの、生きて行くのに必要な知識が、だいぶ欠けているし
 寝ている時の魘され具合と、何かから逃げているらしいコトは見て取れる
 きっと、どこぞの貴族の娘として生まれちまったんだろうねぇ

 娘は家財を増やす為の道具としか思わない貴族なんで、ごまんといるからねぇ
 それでも、リアはアタシ達を連れて、一緒に居た冒険者達と別れて直ぐに旅に出た
 グレンの中に居たアタシは、グレンの瞳を通してリアのコトを観ていたから……

 いや、それにしても不思議な出逢いだったよ……本当に
 胎の中の子供達のコトが心配で、居てもたっても居られなくて暴れていたアタシを
 一目見て、リアはアタシが身体と違うモノだって判ってくれた

 そして、自分にはなんの利益にもならないのに、アタシと入れ替えられたグレンを買い
 アタシと身体を入れ替えられたグレンが入っている、猫型の大型魔獣を買ってくれた
 本当に、僥倖って言葉はあるんだねぇ………

 衰弱しきっているアタシの身体だけを買い取り、檻も鎖も付けなかったんだから
 あの『夢の翼』とかいう冒険者パーティーが、心配していたのが理解出来るよ
 常識が無いから、危険なコトを平気でするからねぇ………心配だよ、本当に

 まぁ…グレンも、リアにかなり傾倒しているから、大丈夫だろうけどねぇ
 リアは、地獄に堕ちた自分を何の代償もなしに、救いあげてくれたんだからね
 あれは絶対に惚れているねぇ……その気持ちは、よぉ~く理解るよ

 リアの側にいると、本当にこころも身体も暖かいんだよ
 春の陽だまりのようで、トロトロしちまうよ
 それにしても、本当に良い匂いだわ………ひとくち欲しい

 回想するルリの前では、セシリアが大量のカラアゲとソーセージを作り上げていた。
 現在のセシリアは、二つ同時に調理するコトを可能にしていた。









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