70 / 173
0069★どうやら、上手にソーセージが出来たようです
しおりを挟む祈ると同時に、祭壇に置かれた数々の料理が消え、時空神様が受け取ったのを確認し、セシリアはニコニコしながら言う。
「さぁ…私達もお夕飯を食べようねぇ…ソーセージも作ったから、食べてみて感想を聞かせてねぇ~……」
セシリアの言葉に、全員で食卓へと移動し、着席して『いただきます』をして、早速食べ始める。
全員が、まずソーセージに手を伸ばしたので、セシリアはそれぞれの特徴を説明する。
ドードー鳥の肉を混ぜて、やや淡泊めに作り上げたモノ。
サイガと名前不明の魔獣の肉をミックスさせたジューシーさを重視したモノ。
ピリ辛を狙って入れた砂漠鹿尾菜〔さばくひじき〕を混ぜ込んだモノ。
など、種類があるコトを皆に教える。
説明を受け、ソーセージをひと口食べたグレンは、お酒が欲しいと思わず口にしたほど、口にあったらしい。
「内臓を使った料理がこんなに美味いモンに化けるなんて思ってもみなかったよ。マジで美味いわ………エールが欲しくなるなぁ~………」
グレンの言葉、たまに人化して人の城下町に紛れ込んでいたルリも大きく頷く。
「たしかに、こんなに美味しいモンになるとは思わなかったよ。エール…呑みたいねぇ~……」
「エールは無いけど、ぶどう酒はあるから、飲んだら……どうせ、隠蔽結界が張られているんだから………今日は、もう移動するつもりないんだから………」
セシリアの言葉に、ルリは瞳をキラーンとさせて、いそいそとユナの側に移動してねだりにかかる。
そういう類いは、全部ユナのマジックポーチに収納されているので、勝手にくすねて呑むというコトはできないのだ。
ユナはセシリアに視線を向ける。
その視線を感じて、セシリアは許可の意味で頷く。
「もう…しょうがないねぇ…ルリお姉ちゃんは、はいどうぞ……グレンお兄ちゃんもね……ただし、2杯までだからね……飲みすぎはダメだよ」
そう言って、ユナはテーブルの上にぶどう酒の入った未開封の小壷をテンと置くのだった。
嬉しそうに封を外し、ルリはユナが差し出した柄杓でカップにぶどう酒を入れる。
ついでに、グレンの分もカップに注いでから、セシリアを振り返る。
「リアはどうする? ユナも飲むかい?」
セシリアは、ぶどう酒を呑みたいような気分じゃなかったので首を振る。
「私は良いわ……酸味〔さんみ〕の果汁に蜂蜜入れたのお湯割りして飲むから」
「リアお姉ちゃん、ユナもぶどう酒よりソレを飲んでみたい」
狐の獣人とはいえ、まだまだお子様なユナは、お酒よりも好奇心の方を優先させる。
「そう…なら、今作っちゃうね」
そう言って、セシリアは魔法でお湯をちょいちょいと作り、酸味〔さんみ〕の果汁に蜂蜜入れた、ホットレモネードもどきを作って、カップに入れる。
勿論、多めに作ったので、陶器の入れ物へと注いで、テーブルの上にテンと置く。
「ルリもグレンも興味あるなら飲んでみてね」
そう言いながら、セシリアはソーセージにかぶりつく。
うん……まぁ~こんなモンかなぁ……
この世界で最初に作ったモノとしては上出来かな?
そのうち、何処かに落ち着いて拠点とか持つようになれたら良いなぁ
そしたら、料理のスキルが高い奴隷を買って、料理を作ってもらおう
前世での私の料理の知識を教えて、試行錯誤してもらいたいなぁ~…
こうやって、自分で作るのも良いけど、結構面倒なのよねぇ
前世の私って、女子力ってヤツ…だいぶ低かったから………
いや、炊事洗濯とかはそこそこだったけどね
買って済ませる余裕のある時は買い食いもしてたし
はぁ~…私って、前世…どうして死んだのかなぁ?
まぁ…たとえどうやって死んだかを知っても、変わりはないけどね
私みたいに、前世の知識を持った人って他にいるのかなぁ?
そんなコトを考えつつ、セシリアは二種類のコロッケを食べ比べてみる。
う~ん……肉じゃがコロッケは、やっぱり甘めだね
ポテトサラダの方は……うん…まぁこういう味になるよね
はぁ~…中農ソースが欲しいわぁ~……
マヨネーズもどきはわりと簡単に作れたけどねぇ
ソース系は手間暇かかるからねぇ……
一応、作る為の知識はあるけどねぇ~……はぁ~……
なまじ、前世で食べていたモノを思い出しただけにつらいわ
サラダのドレッシングだって豊富だったしねぇ
ああ、コンビニのサラダパックが懐かしいわ
ちょっと野菜不足を補うために、ツナ入りとかコーン入り良く買ったなぁ~…
海藻サラダなんかも……ただ、時間が悪いと無いコトも結構あったけど
残業で遅くなると…お弁当もお惣菜も綺麗に無くて、泣いたっけ
トリカラや甘辛の照り焼きチキンなども口に運びながら、セシリアは前世に思いをはせては、こころの中だけで溜め息を吐く。
あぁ~…メーカーモノのウインナーとか食べたいなぁ~
いや、まぁ…これはこれで、たしかに美味しいんだけどねぇ
う~ん……今度は、チーズ入りも作ってみようかなぁ
プリッとしたソーセージを味わいつつ、セシリアは改良の余地ありと思う。
そんなセシリアの気持ちを知らないルリとグレンは、エール片手にソーセージを食べ比べて嬉々としていた。
あぁ~…なんか眠くなって来たかも……食べたら眠くなったわ
流石に、あの姿見の中に転がり入ったのは精神的に疲れたみたいねぇ
って、あとで検証しないとねぇ………って、ああ、ダメだわ
まだ、楽しそうに食べているルリとグレンとユナに、セシリアは声をかける。
「ごちそうさまぁ~……っ……ごめん…なんかもの凄く眠いから……先に馬車に入っているねぇ~………」
といって、フラリッと椅子から立ち上がり、セシリアは馬車の中へとはいる為に歩き出す。
「「リア?」」
「リアお姉ちゃん……」
ルリとグレンの声が重なり、ユナも心配そうに声をかけるが、セシリアは手を振って言う。
「あぁ~…平気…たんに眠いだけだから……お腹いっぱいまで食べてぇ~……お休みぃ~……」
と言って、危なげない足取りで馬車の中に入るのだった。
あははは………ちびっこ達も寝ているのねぇ~…可愛いわぁ~……
もふもふがコロコロと転がって……お腹丸出しで……ふぁ~…ダメぇ~……
もう…意識が途切れそう……なんでこんなに急に眠気が来るのぉ………
眠気と戦いながら、編み上げブーツを何とか脱ぎ捨てて、楽な服へと着替えてレオ達を起こさないように、ラグの上へと滑り込むセシリアだった。
53
お気に入りに追加
696
あなたにおすすめの小説

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる