悪役令嬢?当て馬?モブ?

ブラックベリィ

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0048★美味しかったぁ~………

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 ユナの出した壷の中身を食べ終わる、ウクダと呼ばれる耳の長いラクダもどきが、機嫌良さげに、てててっとセシリアの前に立つ。

 「お乳絞ってって言ってるよ………張って痛いって……」

 ユナの言葉に頷き、セシリアは空の壷に浄化をかけて、チャコチャコと手際よく搾り出す。

 やっていて良かった、牧場のお乳搾り体験
 最初のひと壷は、子供達に飲ませないとね

 まだ、どう見ても必要そうだもの………
 でも、これでアイスとか生クリームとか色々と作れる…うふ

 セシリアがルンルン気分で搾る間に、ひと壷めがいっぱいになったので、ユナに声をかける。

 「ユナ……この壷は子供達用だから、そっちに持って行って飲ませてくれる」

 ふた壷めを搾りながらのセシリアの言葉に、グレンが来てひょいっと持って、ユナのところへと運ぶ。

 「ほら…そいつらにやれ………血と内臓食べたって足りないだろうからな」

 側に置かれた大き目の壷に木のお椀を入れて、洗ったかのように綺麗に舐めきった大きな深皿へとお乳を入れる。
 と、子供のウクダ達は嬉しそうに飲み始める。

 それを見ながら、母ウクダはおとなしくお乳を搾られていた。
 ふた壷めがいっぱいになる頃、母ウクダのお乳があまり出なくなったので、ちょっとアレかなと思いつつ搾りきる。

 ちゃんと搾りきらないと、身体が『あっ…余ってるから…少なくしても良いんだ』と、なるから、ちゃんと搾りきるほうが良いと聞いたコトを思い出していた。

 ヨシッ……いっぱいもらったから、干した果物も上げよう
 あと、お水とかもたっぷり飲みたいだろうからね

 「グレン…この壷はそっちに移動して……生クリームとバター…作るから………」

 「おう……あっちに置いとけば良いんだな」

 「うん…それから、もうひとつ空の壷をちょうだい……このお母さんにお水あげたいから……あと、お皿もちょうだい」

 「はいよ、リア」

 グレンがお乳の入った壷をどかすと、ルリが母親の前に空の壷を置く。
 セシリアは、水の魔法で壷いっぱいの水を入れて、隣りに持って来てもらった皿に干した果物を置いてやる。

 「ありがとうね、お母さん……お水飲んで干し果物食べたら、ゆっくり休んでね」

 首筋を軽くポンポンして、セシリアは母ウクダから離れる。

 ルンルン気分で、壷に搾ったお乳を小ぶりの壷に3つ程わけて、腕輪型のアイテムボックスにしまう。
 そして、壷に残ったモノで、生クリームをささっと魔法で作り、やはりアイテムボックスにしまう。

 生クリームは時間が立つとカサが減るからねぇ………
 ああ、こうなると卵も欲しくなるわね

 などと考えながら、小麦粉とお乳を使ってさっさとシチューに仕立て上げる。
 出来上がったシチューを味見して、おもわず頬を緩める。

 うふふふ……美味しいぃ~………うん…ご飯を美味しく感じる…し・あ・わ・せ
 あとは、デザートも作らないとね

 干した果物で甘味が強いのと……確かハチミツあったのよねぇ………
 なんで、宝箱からハチミツが出るか知らないけど…あるんだし良いよね

 卵に近い長期保存ようの野菜あったし……あら、コレでアイスできないかしら?
 お酢は買ってないから、マヨネーズは作れないのよねぇ……はぁ~……

 鶏卵に似た植物の種をコンコンと割り、小麦粉を混ぜてホットケーキもどき
 うふふふ……それに、ハチミツと泡立てた生クリーム

 よし…これで、できあがりよ
 このデザートも、お供えに追加しましょう

 甘辛照り焼きチキンとカラアゲもどき
 ミルク入りシチューにパンとぶどう酒
 それにバンケーキのハチミツと生クリーム添え

 セシリアは、それを時空神様ようの祭壇がわりのテーブルに、次々と乗せて行く。

 「うん…これで良し」

 そして、セシリアはスチャっと跪き、こころの中で一心にお祈りする。

 時空神様、今日の加護と恩恵を感謝します
 
 甘辛照り焼きチキンとカラアゲもどき
 ミルク入りシチューにパンとぶどう酒

 それに、食後のデザートとして
 バンケーキのハチミツと生クリーム添えです

 半分はお昼に供えたモノと同じですが、喜んでもらえたら幸いです

 できましたら、昨日の続きを観せていただけたらと思います

 こころから、一生懸命にお祈りしたセシリアは、振り返るコトなく、自分達の晩ご飯が並べられているテーブルへと、いそいそと向かうのだった。

 そして、今回も、ちゃぁーんと、お供えを受け取る時空神様だった。
 ちなみに、供えられて直ぐに受け取ったのは、雑食で貪欲な母ウクダが、少し離れたところからジィーと、お供えを見ていたからだった。

 実は、容赦ない母ウクダに、自分に感謝して供えられた、ご飯を盗られたくなかったからだったりする。
 母ウクダは、フッと供え物が消えたのを見て、チッとツバを悔しそうに飛ばしていたのは、時空神様だけが知っている事実だった。

 だが、晩ご飯に意識が向いて、振り返らないセシリアは、そんな小さな攻防など知る由もなかった。

 そして、自分の席に着き、嬉しそうに食事前の挨拶をして、みんなでわき合いあいと晩ご飯を食べるのだった。

 できたてを次々と出しながら、熱々で甘辛照り焼きチキンとカラアゲもどきを食べ、シチューにパンをちぎって浸して食べる。

 その幸せに浸り、たっぷりと食べた後に、とどめのパンケーキにハチミツ生クリームそえまで、食べきったのは言うまでもない。

 ダイエットには、ほど遠い食事をして、食後のデザートまで食べ、口当たりの良いぶどう酒に酔って、セシリアは心地よい眠りに落ちるのだった。

 勿論、今日も、セシリアは時空神様からの恩恵をたまわったのは確かなコトだった。










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